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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第二章 あやしい知り合いが増えました

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第24話 あやしい海の思い出


 俺たちは、ソニアが行ったビッグシザース大量惨殺事件の証拠品を持って、再び冒険者ギルドにやってきている。


『マスターもカザンさんたちの腕にハサミを付けて「がぁにがぁー(カニカニー)」とかやらせて遊んでました――』


『そんな子どもじみた事はしてないガニ! ごほん! ……ほら、コマリコさんに証拠品を提出しなさい!』――なんですか、大量惨殺ってその言い方……。


 はい、ぶつぶつ言わないよ! きびきび動いて!


「はい、ビッグシザースの甲殻とハサミ……え? こんなにっ!? もしかして、昨日の魔王騒ぎから今まで休まずに狩り続けたのですか? もう夕方ですけど……、ソニアさんってソロですよね? あ、ごめんなさい、余計な詮索でした。報酬ですが、……えっと金貨一枚と大銀貨三枚になります」


 ビッグシザースは大人が三人がかりでやっと倒せる危険な魔物で、甲殻は少し加工するだけで固い盾になる素材のため、需要は高めだ。


 ハサミは一応、武器として使えるがビッグシザースのように【切断】スキルがないと切れ味は微妙だそうだ。


 初めて貰った金貨は一枚、百万円相当。


 ちなみに、この上に大金貨があって一枚一千万円相当と、ソニアが教えてくれた。


 今回の報酬は、日本円にして合計百三十万円也――といっても、食事も休みも趣味レベルのソニアと魔素だけあれば問題なしの俺には、お金の必要性を大して感じなかったりする。


『異世界転生ものってお金に困らないんだな。実際に送られるとわかることだわ』


『マスターの場合、装備も勝手に取りますし、払ったお金も後で取り返すしめちゃくちゃです』


 自重してもしょうがないし、お金も装備もいっぱいあった方がいいじゃないか。


『話は変わるけど、ソニアの異常な働きっぷりにビビってるコマリコさんって隠()巨乳なんだぞ。全然わからないよな!?』


『……そうですね、きつめの事務服でわからないようにされていますけど、それが何か?』


 それが何か? じゃないだろ、おっぱいを押さえつけて隠しているのだ。


 非常にけしからん、宝の持ち腐れだよな。


 俺は、現在、おっぱい解放軍の兵士を募るため、コマリコさんの秘密を町中に広めている。


 そのせいか、今日はギルド内を無駄にうろついている男どもでいっぱいだ。


 男どもの下衆な視線を気にしてなのか、昨日よりもコマリコさんのおっぱいガードは固い。


 苦しくないのかな?


『そんなに圧迫したら、おっぱいが可哀想だよ!』


『マスター、それセクハラです』


「はいっ?」


 コマリコさんに精神干渉で訴えかけてみた。


 ばっと胸を隠してからの困り顔が素敵。


「……コマリコさん、大丈夫ですか? 報酬、確かに受け取りました」


 なぜかソニアが申し訳なさそうな顔をしている。


「は、はい、誰かに今、話しかけ……いえ、気のせいだと思います。それから、ソニアさんのおかげで海岸の魔物たちがかなり討伐されました。ありがとうございました」


 頭を下げても、揺れないおっぱい。


『もう! おっぱいを自由にしてあげて!』


「はい? ごほん! 失礼しました。……ところで、先ほど王都からAランクの冒険者たちが到着しました。彼らは明後日の朝に“海のダンジョン”の攻略に向かいます。それで……、もし良ろしければソニアさんもシータウンの推薦枠で参加してもらえませんか?」


『面白そう! ソニア、参加しようぜ!』


「……、わかりました。私で良ければ参加いたします」


 今の間は、ソロのほうが気楽に狩れるとか思ったんだろうな。


 何事も経験だよ、ソニア君。


 女冒険者が待っているんだよ!!


『いやー、王都の女冒険者か、どんな子なんだろうなぁ。Aランクだけど、Fかなぁ? でも、俺的にはソニアぐらいのCがちょうどいいんだよな。ジャミラ級はたまに拝めればいいよな!』


『マスター、女冒険者かどうかわかりませんよ? マスター? ああ、また聞いてない――』――はあ、女冒険者がいたら、またセクハラするんだろうな……。


 ソニアが何か呟いているけど、どんな可愛い子が来るかが楽しみで聞こえない!


「はい、依頼を受けてもらえて助かりました。明後日の朝、五時にギルド前に集合してください。詳細はこちらの資料をどうぞ」



 海のダンジョンに出現する魔物


 ピュアスライムさん……十秒チャージ、ゼリーうまし。ギリアムが核を欲しがっていた。


 シーゴースト……魔力を吸収してくる物理無効の霊体、魔影系だな。


 半魚人……上半身が魚類、下半身に足かきのついた人。


 シーサーペント……大海蛇、体に巻きついてきて噛まれると猛毒注入。


 ビッグシザース……蟹、うまい。


 海坊主……山のように盛り上がった波に、光る大きな目玉がある。津波を引き起こし、引き波と一緒に丸飲みする。


 どうやら、海坊主は階層のボスらしい。


 ダンジョンは、沖の方に向かって伸びる長い下り坂で、一定距離に設置されているボス部屋だったり魔物部屋(モンスターハウス)だったりが階層の一区切りとして扱われ、十階層まであるんだとか。


『前回は九階層のボス“海坊主”の津波攻撃のせいで攻略に失敗したそうです』


 溺死者多数、道中の死傷者も数えきれないらしい。


 ギルドとしては、この海坊主の引き起こす津波が原因で海が大荒れしていると考えているようだ。


 明後日、攻略に向かう冒険者たちは、王都からAランク一名、Bランク四名、残りは全員Cランクで、シータウンや南部方面の支部からのヘルプで二十五名も集まったそうだ。


 総勢三十名、ダンジョンに一度に入れる最大数らしい。


『それ以上の数は、ダンジョンが受け入れないそうですね』


『ふーん、やっぱりダンジョンは生き物なのかもしれないな』


『そうですね、海のダンジョン……、どんなところなんでしょうか?』


 そりゃ、下り坂で海底を目指す感じだし、海の中を進んでいく感じだろうし――


『ちょっと待て、ソニアって泳げるのか?』


 この子、森に囲まれた村で生まれてた!


――確か、あの小川の水位って、大人のくるぶしよりも少し上ぐらいしかなかったよな?


『……泳げません、マスター、どうしましょう?』


 おい、コマリコさんを超える困り顔だよ、無駄に可愛いなっ!


『まじか! まあ、まだ時間もあるし今から海岸で練習しようぜ。ソニアには極める者補正があるし、ゾンビーズの誰か一人くらい泳げる奴がいるだろうからコツを教えてもらえ』


 ソニアに関しては、正直心配していない。


 最悪、泳げなくても不死の特性を生かして海底散歩が出来るのではなかろうか。


 そうだ――


『ソニア、ダンジョンに持ち込む武器なんだけど、“トライデント”にしようぜ?』


『えっと? 私、まだ泳げるかもわからないのに、また違う武器になるんですか?』


 せっかく大鎌に慣れてきたのにって、すごくご不満なお顔だな。

 

『おう、だってトライデントの方が海! って感じするだろ』


『あの、もう少し理論的に……、いえ、わかりました槍術を応用しますのでトライデントで結構です』


 ひゅー! やる気だねえ!


 それじゃ、武器屋でトライデントと防具屋で防水装備を貰って、あ、道具屋でカモフラージュ用のバッグも貰わないと。


 マジックバッグの噂に信憑性を持たせる必要もないからな。


 まあ、コマリコさんのおっぱいが注目されている中で、ビッグシザースの素材をあれだけ手ぶらで持ち込んでしまったから手遅れ感は否めないけど。


 ほら――


「――あれが登録したてのBランク候補か?」


「――お、おい、あいつ手ぶらだよな?なのに、どこからあんなに甲殻を出せるんだ?」


「――そもそもソロで、どうやって大量に蟹を狩れるんだよ」


「それにしても華がないな……」


「なんか地味だよな」


「「「体つきはいいのに……」」」


――あのは華の素顔を僕たちはまだ知らない。

 

 ……さて、海に行こう。




◇◇◇




――ざざぁ、ざざぁ


 月明かりに照らされた静かな海岸に波音が一定のリズムを刻む。


 時々、ぶくぶくと泡の弾ける音が海中から聞こえてくると――


「ぷはっ! はあぁ、すうっ!!」


 じゃぼんっと、ソニアが顔を出しては、また息を吸って海に潜る。


 不死だし呼吸とか要らないのでは? という疑問はあるが、本人からすると呼吸をしないと苦しくなるらしい。


 極める者補正は相変わらずチートなお仕事ぶりを発揮して、ソニアは泳ぎはもちろんだが、海中での戦闘もかなり上達したようだ。


 サメ避けの白色で統一された、磯頭巾、磯メガネ、磯シャツ、短パンのセット装備に、手足には手袋と足袋をつけて右手にトライデント、左手にシーサーペントの死骸を持ちつつ、海を自由に泳ぐ女――


『いや、海女さんかいっ!! しかも昭和初期かよ!』


『これしか売ってなかったんですから仕方ないじゃないですか』


 極細影糸を通してソニアから不満気な声が返ってきた。


 今回、服装の購入はソニアに任せたのだが、商店を回った結果、海女さんセットしか売ってなかったらしい。


 あ、ソニアが海から戻ってきた。


『おかえりー』


「ふう、マスター、“シーサーペント”と“シーゴースト”の核を拾ってきました。どうぞ」


 満足そうな笑みと一緒に、ソニアが俺に核を取ってきてくれた。


 シーサーペント 【巻きつき】【猛毒】【酸】


 シーゴースト 【魔素吸収】【分解】


『おっ! サンキュー。酸と分解か、ん? ――これに手持ちの変質を合わせて……来たっ! 天啓が! 圧倒的ひらめき!!』


「マスター、もしかして上位職が解放されましたか?」


『いや! 上位職なんかより重要なスキルが作れそうだ』


「そうですか……――またろくでもないスキルなんでしょうか―― えっと、泳ぐのって気持ちいいですね」


 ん? 何か言ってなかったか? 泳ぎ……か、そうだな。


『泳ぐのは俺も自信あるぞ。まあ、鵜飼いゲームはもう勘弁だけどな』


「……鵜飼いゲームですか?」


 母親が俺の首に――俺は、ソニアに鵜飼いゲームのやり方を説明した。


『いつも腹が減っててさ、ついついそのまま飲んでしまうんだよな。でも、最初は失敗ばっかりだったけど、最後の方は結構成功してたんだぜ』


 大物(ミンチボール)が投げられるときは、わざと失敗したこともあったな。


 家族(ははおや)とアイツと海に行ったときの数少ない思い出の一つだな。


 今でもアイツらの笑い声が聞こえてくる気がする。


 俺って運がいいよな、ここまで来れて……。


『……マスター、おっぱい触りますか?』


 いや、どんな慰め方よっ!?


 せっかくのソニアの申し出、有り難くふにゅふにゅさせてもらった。


――俺って運がいいよなっ!


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