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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第一章 あやしい影に転生しました

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第20話 あやしい盗難事件


 コマリコさんが小走りで訓練場に戻ってきた。


 まだ戦っていると思って見に来たらしい。


「はい? マッスゥさん、もう試験は終わったんですか?」


「がははっ、コマリコか。さっき終わったところだ。すげえぞ、この姉ちゃんの腕はBランク間違いなしだ。しかもこれからもっと伸びるぞ。それで筆記の結果はどうだった? 脳筋バカにBランクはやれねぇよ。頭と腕っぷしが揃ってこそのBランクだからな! がははっ」


 熊男は見るからに、脳筋なんだが……。


「はい、ソニアさんの筆記の結果もすごいです! ――満点でした!!」


 結果をソニアと熊男に向けられた用紙には、赤ペンで丸のマークが乱れ咲いていた。


「まじかよ、がははっ! こりゃすげぇぞ! ベルトン以上の逸材じゃねぇかよ。」


 ベルトン? 男っぽい名前なのでスルーしよう。


『すごいな、ソニアおめでとう!!』


『『『『ぐぼぉおあぁう!!』』』』


 うん、ゾンビーズも喜んでるぞ。


『――やりました。ありがとうございます』


 心なしか頬が赤いな、口元が緩んでて可愛い。


「はい、ではソニアさん、まずはCランク昇格おめでとうございます!! 身分証明書を作成しますので、少々お待ちください」


「がははっ、とんでもないルーキーが来たもんだなぁ」


『あれ? 実力と筆記で満点ならBランクじゃないの?』


 俺の疑問は、コマリコさんの次の話で解消された。


「はい、それからソニアさんには、当ギルドから“王都本部”でBランク昇格試験を受けるための推薦状をお渡し致します。といっても、現在この支部のギルドマスターがムーン支部再建の手伝いに向かっておりまして……、推薦状をお渡し出来るのはもう少し先になります」


 本部への推薦状……?


『Bランク以上の昇格は、本部が管理しています』


 なるほど、熊男の実力がどれぐらいなのかわからないけど、支部のさじ加減で高ランクを量産しないようにしてんのかな。


 まあ、どうせ王都には行くことになるし問題はない。


「はい、ではこちらが身分証明書になります。お店に提示していただければ割引サービスや武器のメンテナンス等をしてくれますよ」


「わかりました、それでは今日は失礼します」


 わりと時間食ってしまった。


 ちなみに、身分証明書の紛失や盗難をしたときのペナルティは重たくて、Eランクからの再スタートと身分証明書を悪用された場合の損害賠償義務が課せられるそうだ。


『割引があるなら大鎌は後で貰えば良かったかな?』


『……マスターの場合、お金を払わないので割引はされないかと思います』


 ごもっとも!




◇◇◇




『あーあ、危ない水着って売ってないのな』


 今、俺たちは町中の商店や防具専門店を回っている。


 ないのだ、あの伝説の水着が! あの表面積でどんだけの防御力があるのか……、知りたかったぁ。


 ついでに普通の水着らしきものも見かけなかった。


『危ない、というぐらいですから奥に保管されているのかもしれませんね』


 そうだな、伝説の水着屋の奥にある宝物殿とかに厳重に封印されているかもしれない。


――あるとき、邪な心を持った若者の手により封印が解かれるのだ。


 そして、封印を解いた若者は、復活した魔神パイオツカイデーに体を乗っ取られてしまうんだ。


 強大な力を持つ魔神パイオツカイデーは、瞬く間に女はAVビキニ、男はふんどしだけしか着用できないように世界を変えていく……。


 走ると水着からこぼれるポロリんおっぱい――いいね。


 だが――


『女はいいけど、男の”ふんどしスタイル“はどうなのだろうか? 俺はお稲荷様がポロリんしてるのは見たくないぞ』


『マスター? どうされました? 急に何を――』


 いや、パイオツカイデーの事だ、男たちを女体化させるスキルぐらい持っているだろう。


『……くくっ、やるじゃないか“魔神パイオツカイデー”よ。だが、貴様、女体化したあとのケアは出来るのだろうな?』


『魔神パイオ……何ですか? 何の話ですか? マスター!?』


 おそらく女体化の影響で巨乳美少女が大量生産される。


 そして、その他大勢の美少女がモブとなり、日陰でひっそり過ごしていたぶ細工さんたちに光が当たるのだ。


――美醜逆転(ファイナル)世界(ファンタジー)の完成だ。


『はっ! 結局、何も変わらないっ! (主人公)あるところに(モブ)ありだ』


『あのー、マスター? ……ちょっと失礼しますね。はっ!』


 はごっ! 美少女(モブ)から()を叩かれた!


『あだっ! 何をするんだモブ!!』


『私はソニアです、モブではありません。マスター、そろそろ戻って来てください』


 ん? 俺はずっと一緒にいたはずだが?


 そうだ、ソニアは誰もが魅了されるその道の美少女じゃないか。


 幻妖でいちいちモブ化させておかないと、町を歩くだけで変な虫が寄ってくる。


 それが面倒だから収納して町をうろついてたんだよな。


 そんな美少女をモブ扱いするなんて!


『すまない、俺が間違っていた』


 ノーマルスキル【影絵・土下座】――


『いえ、戻ってきていただけたのなら問題ありません。私も叩いてしまって申し訳ありませんでした』


 そう、叩かれた。


 だが、俺はツッコミには寛容だ、許そう。


 さっきまでの俺は異世界にトリップしてたんだ――


『待て、なんで女体化すると巨乳美少女って決まってるんだよ。男顔のおっぱいホルダーが溢れる世界とか誰得なの?』


 俺は、何を真面目に考察していたんだろうか……。


 どうしてこうなった?


『マスター、危ない水着探しが難航しすぎて疲れてしまったのではないですか?』


 そう、危ない水着が見つからなくて、ため息とともに出た言葉をソニアが拾って――


『あっ! そうだ、違う、ソニアが変な流れにしたんだろ! 危ない水着ってのは水着の表面積が少ないセクシーな水着のことだろうが! なんだよ、魔神パイオツカイデーって!! もういい、宿に帰るぞ!!』


『とても理不尽です……』


 そこっ! 口を尖らせない!


 ソニアって結構、顔に出やすい気がする。


 っ!


 本能も久しぶりに出てきて、じと目信号を送るのをやめろっ!


 なんだ、じと目信号って!!


 ……結局、宿に着くまでソニアは話しかけても口をきいてくれなかった。




◇◇◇




 ソニアが宿に入ると、支配人らしきおじさんが汗をかきかきやってきた。


 男はいらんっ!


『若女将を呼べぇっ!』


『…………』


 うわ、スルーされた。


「お帰りなさいませ、お客様。……それでお戻りになられてすぐで大変申し訳ございません。実は――」


 どうやら親善大使の部屋に泥棒が入ったらしい。


 盗まれた物は大使が身につけていた宝石類。


 寝る前に宝石類は枕元に置いていたが、朝起きたら無くなっていたそうだ。


『ソニア、事件だな』


 ベッドが変わったことに気づいてないぞ。


 そんなヤツが親善大使やってるとか事件じゃね?


『…………』


 おーい、ソニアさーん。


 ちぇっ、もういいや支配人の話の続きを聞こう。


「――それで、お客様のお部屋以外はすべて立ち入り検査を終えておりまして、大変申し訳ございませんがお部屋の中を拝見してもよろしいですか?」


 おいおい、レディの部屋を見せてくれなんて、暗黒時代を過ごしてきた俺が許さん! なあ、ソニア?


「別に構いませんよ」


 おいいぃぃっ!!


『ここで断れば私たちが盗んだと疑われます』


 ……確かに、だが疑われるのは不本意だな。


『ここは、見た目はその道のプロ、頭脳は子どもの名探偵ソニアがずばっと解決するしかないぞ』


『犯人はマスターです』


 ぐう、ずばっと来たな。


『ほ、ほら、支配人を案内しなさい、ねっ?』


『…………』


 二階に上がると、ちっちゃいおっさんが待ち構えてたぞ。


 誰だっけー?


「はーん? 支配人、やっと捕まえたのかぁ? そこの胡散臭い女の部屋が最後だろぉ? 女、いい事を教えてやろう。この宿に泊まってる客なんだがぁ、お前以外はわしら“砂漠の民アイリス”の者なんだよなぁ。わかるかぁ? お前以外は全員がわしの身内、それもこの天候のおかげで何泊も泊まってるんだよぉ」


 うぜぇー! あ、ウザイン親善大使じゃないか。


 ソニアがこの宿を使いだしたのは、盗難事件が起きる前日。


 何泊も一緒に過ごしている身内を疑うより、ソニアを疑う方が自然な流れ。


『はーん? ソニアが疑われて当然だなぁ』


『そうですね、犯人はマスターですけど……』


「つまり、盗難事件は私以外がやるはずもなく、私がここに泊まった事で起きた。犯人は私だとおっしゃりたいのですね?」


「はーん? 察しがいいねぇ。身内がわしを裏切るわけねぇからなぁ。だが万に一つの冤罪ってのもあるだろぉ? だから、部屋を確認させてくれってぇ話だぁ」


 ゲスいにやけ顔にワンパン入れてやれぇ、ソニアぁ!


 あれ? いつの間にかウザインの話し方がうつってた。


「えぇ、先ほども支配人さんには申しましたが、確認していただいて構いませんよ」


『ソニアとしては痛くもない腹を触られる……、それはセクハラだっ!!』


『マスター、痛くもない腹を探られていますので、そろそろ静かにしてもらっていいですか?』


 あっ、はい。


「はーん? 自信があるってかぁ? ……ふん、見てくれは普通だなぁ、体つきは……まあまあかぁ、もしも宝石類が見つかったときは裸にひんむいて町中を連れ歩いてやろうなぁ」


 こいつ、ソニアをじろじろと値踏みしやがって!


『――ところでソニア、演技できるか?』


『あの……、私、嘘はあまり好きではありません』


 うん、そんな気がしてた。


 演技が出来ればごまかすなり、騙すなり出来たんだけどな。


 ソニアは、極める者補正で、俺が持ってる知識やゾンビーズから教えて貰った事を超スピードで学んでいく。


 だから、敬語を使ったり、大人っぽく振る舞えるんだけど、人生経験が足りないというか、大人のずる賢さがないというか……。うん――


『ソニアはピュアだな。ソニア、そのままでいいんだよ』


 うんうん、温かい目で見守ってやろう。


 どうだい? 俺の温かい目は?


『なんでしょう、とても不快な気分です』


 ねえ、ちょっと失礼すぎない?


 まあ、いいや。


 どうせ宝石類はシャドスペ内に入れっぱなしだ。


 好きなだけ調べさせれば諦めるだろ。


『安心しろ、俺に任せておけ』


『はい、“豪華客船タイタニック号”に乗った気持ちでいます……』


 おい、その船は座礁して沈んでしまう運命だろっ!


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