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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第一章 あやしい影に転生しました

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第13話 あやしい息子のやさしさ


「お父様、お帰りなさいませ」


 おっ、頭の良さげなお坊っちゃんが出迎えてくれた。


 この子がムンラス君かな?


「ムンラスか、今戻った。どうしたんだ? 心配そうな顔をして」


「いえ、お父様のお顔がすぐれないように見えたので……、少しお疲れなのではないかと」


「そうか、子どもにそんな心配をかけていては町民たちの不安を煽るようなものだな。ムンラス、教えてくれてありがとう。少し休むとしよう」


 ムンラスの頭に優しく手を置いて撫でながら、堂々とサボり宣言か。


 でも、いいと思うよ。


 トップがずっとテンション高いと下も辛いからね。


 へぇ、この執務室は異世界あるあるの中世ヨーロッパ風だろ?


『マスター、中世ヨーロッパ風とは?』


 いや、俺もよくわからんが剣と魔法の冒険ファンタジーなこの世界から、魔法を抜いた文化レベルの時代が、俺のいた世界にもあってだな。


『魔法がないのは不便ですね。まあ、私も使えませんが……』


 そうなの?


『魔法は魔力――魔素を消費しますので、魔物で使えるものは少ないのです』


 え? メイジゴブゴブってレアだったの? あいつの核をどうしたっけ?


 持ってないってことは拾ってないか、毒矢で破壊しちゃったのか。


 魔力ね、ソニアは魔素と言い直してたけど、人にも魔素があるのか?


『はい、核というほど凝縮されたものはございませんが、血液と同じように体内を循環しています』


 へー、あとで誰か吸ってみよう。


「――はぁ、まさかゴンドール様の墓所がダンジョン化していたとは……」


 冒険者の報告書を読みながら、眉間に皺を寄せるダンディなおっさん。


 結局、仕事してんじゃん!


 仕方ないな。【影傀儡】――


「うっ! な、体の自由が……。」


 ほれほれ、ソファーに座れー! こら、抵抗するな!


 よし、やっと座ったか。


 頑張ってるおっさんに、俺からスペシャルプレゼントだ。【睡眠】【夢操作】――


「ふう、うっ……」


――すうすうと、寝息が聞こえる。


 おっさんの寝息なんて聞きたくないし、さっさと部屋を移動するか。


『マスター、町長にはどんな夢を見せているのですか?』


『ん? 男が見たい夢といえば一つだけだ。すっごいえっちぃ夢を見せてるぞ。さあ、おっさんの変な声が出る前に移動しよう』【影移動】――


『…………』


『ん? ソニアどうした?』


『い、いえ、何でもありません』


 顔が赤いぞ、興味のあるお年頃かね?


『そうか? よし、謝礼として物色していくぞ。ソニアが着たい服とか見つけたら回収するから教えてくれ』


『……はい』


――だいたい見たな、メイドスカートの中を。


 お試しで、二階を掃除していたメイドっ子の魔素を吸ってみたけど、味わう前に干からびちゃった。


 しわしわメイドは可哀想だな。


 よし、復活させてやろう。


 ドクロ石に魔素を注入する。


『んんーっ!』


 ドクロ石の中に核が出来たらソニアの中から核を取り出す。


 どうやって? 影収納で真っ二つ――ソニアが不死で良かったよ。


 一瞬だからそんなに血も飛んでない。


『ふっ! んはっ!!』


――取り出した核を干からびたメイドっ子に埋め込む。


 すると、どこからともなく包帯が飛んできて、メイドっ子にぐるぐると巻きつく不思議現象が起きて、あっという間にメイドなミイラの出来上がり。


 メイドミイラにはこれからも町長に尽くすように言っておいた。


 こくんと頷いていたし大丈夫だろう。


 ソニア? はぁはぁと変な声を出しながら痙攣中。


 ソニアが返事しないので、どんな服を貰えばいいのかわからないだろ。


 まったくもう!


『しゅ、しゅみません、んっ! ましゅたぁ』


 おい、言語力がゾンビレベルまで退化してるぞ。


 おっ! ソニア、この部屋にある服や下着、少し古そうだけど丁寧に保存してあるぞ。


 鏡台とかタンスに机、椅子とか収納しておくから適当に使ってくれ。


『ふぁい、ありがとうごじゃいましゅ。んっ』


 こいつ大丈夫か? あとはベッドだけど、おっさん使用済みは嫌だし、ムンラス君のベッドもなかなかの大きさ。


 これでいいか。


 ソニア、ベッドを入れたからそこで寝てろ。


『…………』


 返事はないけど、ベッドの中になんとか入ったな。


 少し貰いすぎたか。


 そうだ! ベッドの代わりと言っちゃなんだけど、武器専門店で没収した剣を置いておこう。


 剣に宝石が埋まってて見た目が良いから、部屋に飾ってくれたら俺も嬉しい。


 武器専門店の店員もきっと喜ぶはず。


 あとで、ハンス? にも教えてやろう。


 あとは、少し早いかもしれないけど、ご婦人たちのパンティも何点かプレゼントだ!


 うん、奪うだけじゃなくて与えるってのも、自発的にやると悪くないな。


 よし、一通り、町長の館も物色したし、次に行くぞー!!


 おっと、ムンラス君、顔色悪いけどどうした? 【影読み】――


――お父様が教会から戻られたけど、かなり顔色が悪かった。


 僕にも何かお手伝いできることはないだろうか……。


 よし、お父様に声をかけてみよう――


 僕は、執務室の扉をゆっくりノックして声をかける。


「お父様、お身体の具合はどうですか?」


 返事がない。いや、何か苦しそうな声が!? お父様っ! 失礼します。


「んああっ! そんなとこ……っ! ううあっ!」


 ぎっしぎっしと揺れるソファー。


「――っ!! し、失礼しました!!」


 お父様がソファーに腰を……。ばかっ! 今、見たことは忘れろっ!


 お母様が僕を産んで……、すぐに亡くなってからもう十年か……。


 きっと僕に気を使ってくれたんだろうな。


 そういえばミーシャがこっそり教えてくれた。


 男の人は大人になるとすごく溜まるって――


 やっと意味がわかった。


「お坊ちゃま、どうなされました? 旦那様のご様子はいかがですか?」


「ひぃあっ! セバスっ! びっくりした。え、えっとね、お父様はソファーで仮眠中だったから、しばらく部屋に立ち寄らないように皆に伝えて! いいね!?」


 そうだ、あんな姿は誰にも見せてはいけない。


「そうですか、では、あとでミーシャに毛布を持って来させましょう。おや、そういえばミーシャの姿がないですね。二階を掃除していたはずなんですが……」


 確かに春先でまだ冷えるから、セバスが正しい。


 だが、今はダメだ!


 というか、ミーシャが行くのはセバスが行くよりダメな気がする。


 ミーシャは僕より少し年上のお姉さんだ、そ、そのすごく綺麗だし、もしお父様と何かあったら……、うん、僕が行こう!!


「ダメっ! あ、いや、ぼ、僕が持って行く。だから、誰も近づけないで。いいね?」


「ふふふ、お坊ちゃまはお父様孝行をなさりたいのですね。かしこまりました、ではセバスと一緒に毛布を取りに参りましょう」


 そういってセバスはブランケット置き場についてきてくれた。


 このままお父様の部屋までついてきそうなセバスをどうやって撒こうかなぁ。


 はあ、またあの姿を見ないといけないのか……。


 お父様が目覚めたら、新しいお母様が欲しいとお願いしてみよう。


――そうだ、僕が大人になればいいだけだ。お父様、もう我慢されなくて良いのです。


 あちゃー! お父様の悶々を見ちゃったかぁ。


 町長からしたら最初の目撃者が身内で良かったかもね。


 もしメイドさんだったら、そのままお手付きしてた可能性あるし。


 お父さん思いのムンラス君。


 あの剣、気に入ってくれるといいんだけど。


 よし、いい時間になってきた。


 酒場に女性客は来てるかなぁ。




◇◇◇




 俺たちは酒場に来ている。


 町長の館を出てからは、宿屋を物色したり、体を拭いている女を覗いたり、高齢化社会にならないように高齢者の魔素を吸ったり、公衆浴場を覗いたりとあっちこっちをぶらついていたら深夜になっていた。


 残念なことに、仕事終わりの冒険者(ほとんど野郎)たちが酒場で騒いでいるだけだった。


 可愛い女冒険者がいない……。


 ソニアは変わらずぐったりタイム。


「ねえ! おかわりっ! お酒ちょうだいよぉっ!!」


 大声でマスターにおかわりを求めているのが、この酒場唯一の女性客。


 どうやら鼻の穴の大きなお姉さんが、ブレッシェル村から帰ってきていたようだ。


 壁視点からお姉さんを見ると、まあまあ綺麗な顔立ちをしていたが、第一印象が鼻の穴だったせいでエロい目で見れない。


 ずいぶん飲んでるけど、やけ酒かな?


 彼氏に振られたのかもしれない。


 じゃないと男だらけの酒場に一人で来るとか考えにくい。


 まあ、それなりに実力はありそうだから襲われることはないと思うけど。


「――おい、カレン、少し飲みすぎだ。これで最後にしておけ」


 二階に住んでた兄ちゃんが、この店のマスターだったか。


 鼻穴大姉さんは、マスターから酒を奪うように取って、一気に飲んだ。


「ぶはっ、――うるっさいわね! あたしだって飲みたくはないのよ。でも、飲んでないとあの光景を思い出すのよ! うぅ……」


 鼻穴大姉さんはぶるっと震えて両手で自分を抱きしめた。


 俺が実体化できたら、重なるように抱きしめたのに。


 そして、場面は変わり、ろくろを回すのだ――ニューヨークはまぼろしぃー。


 そろそろ怒られそう。


「何があったかは俺も聞いている。飲まないと不安なのもわかる。だけど、今日はそれぐらいにしておけ」


「……わかったわよ、いくら?」


「ちっ、いつもならツケろって言うくせに。調子が狂うぜ! もういい、今日は俺のおごりだ。帰って寝ろ」


 ちょっと格好良くないこの人? 優しい、惚れちゃう! 多分ソニアが。


『…………』


 これがじと目か! ナイスじと目だよ、ソニアっ!


「――そう、ありがと。……また来るわ、おやすみ」


 違うぞ、鼻穴大姉さん、ここはその大きな鼻の穴でマスターを吸い込むんだ!


 新彼ゲットのチャンスだよ!


 マスターのほっぺにチューぐらいしとけば、恋が芽生えるかもしれないぞ! ほらほら、手伝ってやるから! 【影傀儡】――


「っ! え? 何?」


「おい、大丈夫か? いきなり、ふんぞりかえられても困るんだが……。 お前、鼻が……あ、すまん! っておい、やめろ! 俺には嫁さんがいるんだよ! 口を近づけるな」


「ちょ! 違っ! 体が……勝手に」


 あれ? あ、思い出した!


 そういえばさっき見たときは、マスターの隣で爆乳ちゃんが寝てたんだったわ。


 まじうらやま。


 それじゃ、逆に鼻穴大姉さんに吸い込まれるのは迷惑だよな。


 影傀儡は解除っと。


「うっ! ご、ごめんなさい。少し飲みすぎたみたい、本当にごめんなさい。あたし、もう行くわ」


 顔が真っ赤になった鼻穴大姉さんはふらふらと逃げるようにお店から出ていった――暗い夜道、お気をつけて!


「おいおい、大丈夫かよ?」


「へぇ、ずいぶんさっきの女に優しいわね? おいおい、大丈夫かよ? ……か、ふーん、自分の心配はしなくていいのかしら。――ねぇ?」


 マスター! 後ろっ! 後ろっ!


「――あ?」


 マスターがゆっくり振り向くと、ごごごごご、と聞こえてきそうな雰囲気の女性が腕組みをして仁王立ちしてたー!!

 

 おお、暗がりでもわかるぞ、マスターの顔が青ざめていくのが……。


「今日はおしまいっ! あんたたち、さっさと帰んなっ!」


「「「『「「「「はいっ!!」」」」』」」」


 マスターも一緒に出ようとしてたけど、がしっと首根っこ掴まれて逃げられないみたいだ。


 飲んで騒いでた冒険者たちは、そそくさと一列になってお店を出ていった。


 俺も一緒に出ることにした。


――マスター、お前が死んだら、俺がゾンビにしてやるから安心してくれよ?


 こうして、ムーンの町の怒涛の初日が終わった――


――腕組みしてた時のおっぱいの盛り上がり、すげぇな。



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