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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第一章 あやしい影に転生しました

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第10話 あやしい実験


――冒険者ギルドの朝は早い。


 ブレッシェル村への調査、魔物大暴動に備えての警備依頼に周辺調査、商人の護衛や指定された魔物を狩る、簡単なものだとヒールリーフの採取等、難易度と報酬のバランスの合わない美味しい依頼は朝に落ちている――鼻の穴のお姉さんの知識より。


 しまったな、人が多すぎだよ。


 なんで冒険者ギルドに来たのか?


 それは、もちろん可愛い受付嬢に出会うために決まっている。


 異世界といえば冒険者、そして美人の受付嬢。


 これは切っても切れないハッピーなセットだろ。


 残念ながら、エルフのいる森は近くにはなさそうだし、美少女冒険者やケモ耳奴隷っ子を探して無作為にうろつくよりも確実だ。


 さあ、シモン君――そろそろ受付に到着だ。


 役所の事務員さん風の格好か、長袖の白いオフィスシャツで第一ボタンまでしっかりと留めて私はかたい女です。


 そんな雰囲気を醸し出している。


 シモン君の背丈だと見上げる形になるからな。


 そもそも、足下とか斜め下の角度から見ても美人に見える人っているんだろうか。


 おっぱいもウエストラインもシモン君目線だと受付台のせいでよく見えない。


 シモン君、なにやってんの! もうちょっと人が少なけりゃ影糸を伸ばすんだけどね。


 よし、このおっさんの次だね。


「――はい、ではこちらの依頼をお願いします。はい、では次の方……ひっ!」


 お姉さん、どうして引いてるのかな?


「ぁ"あう?」


「あっその、すみません。私の見間違いでなければ……少しだけ目の位置が」


 うおお、シモン君っ、目玉! 目玉が取れかけてるよ! さっき泣いたときに出ちゃったんじゃないの――幻妖でも無いものを有るようには見せられないのか!


 お姉さん目線だと、きらっとした目の玉が片方だけぶらぶらしている状態のようだ。シモン君、すぐはめて!


『ばぃ』


 おっけ、目玉がはまったらお姉さんに顔を向けて大丈夫だよ、と君のスマイルで安心させなさい。


「だ、だじょぶっ! いだぐなぁい」


「えっ! 手づかみではめ……ばけ――」


 お姉さんが後ろに倒れたようですごい音がした。


 隣で受付窓口やってたおっさんがびっくりしてる。


「おい! ローラ、大丈夫か!? お前が何かやったのか?」


「ぢ、ぢがっぶ、ちがあぁぁ――」


 おっさんの剣幕に、首を横に振って慌てて否定するシモン君。


 そんなに振ったら――ごとり、ほら落ちた。


「はあっ?」


「うそ!」


「うわ!」


 混雑してるはずなのに、落ちて転がるシモン君の生首に当たらないようにみんなが場所を空けていく。


「うえぇっあ?」 


 シモン君! 今はお静かに! ってもう遅い……か。


「なっ! 落ちた生首がしゃべった!?」


「ぞ、ゾンビだ!」


「なんでギルドに!?」


「おい、この中に祈る者はいないか? 聖魔法かけろ!!」


 ちょ! 問答無用で召そうとしてるんですけど!?


 ゾンビに人権はないのかよお前ら! うん、知ってた!!


「主よ、現世にとどまる哀れな魂の救済を【浄化の光】――」


 僧侶風の男の手から魔素が飛び出し、シモン君の生首と胴体を包み始めた。


 ヤバい! 【影移動】と【影収納】――


「床に消えた? おかしいですね、浄化の光を行うと光とともに天に昇るはずなのですが……」


 こてんと首を捻っても可愛くないぞ、そこのメガネ僧侶。


 うちのシモン君になんてことを!!


「そんなことより、なんでギルドにゾンビが出るんだよ!」


「どうなってんだ一体!?」


「あー、静まれ。とりあえずゾンビを浄化してくれて感謝する。手続きしておくから後で手数料を受け取ってくれ。それから、みんなっ! 今のゾンビはブレッシェル村の異変に関係しているのかもしれん。この場所にゾンビが発生した経緯は俺たちで調査する。みんなはなるべくブレッシェル村の調査依頼を受けてくれると助かる」


 この受付のおっさん、有能だな。


 早口だけど安心感のある声で、一気に場の空気を掴みやがった。


 冒険者達もそれに合わせて落ち着きを取り戻したな。


――実力者が多いのか、戦う者、祈る者……か。


 シモン君はシャドスペで生首と胴体がくっつくまで待機ね!


『ばぁい』


 八才の男の子がしょんぼりしてるのはあんまり見たくないな。


 やっぱ捨てるか?


 いや、まだ保留だ。


 ぶふっ!


 生首を探す胴体が、距離感を間違えて生首を蹴ってるところがツボった。


 さて、ギルド内の見学ツアーへゴー!!




◇◇◇




 ツアー、これといって見所がなかった。


 男多いし。


 偉そうなヒゲのおっさんは、俺が部屋に入った途端に警戒し始めたからヤバかったけど、他の職員は忙しそうに働いてるせいか気づかれなかった。


 床よりも天井の方が見やすいな。


 訓練所では鬼教官が新米冒険者をしごいてた。


 女の子なし。


 資料室を見つけたので、この辺の地図と町の詳細がわかる資料、それと魔物図鑑はしばらく借りることにした――本当は持ち出し禁止だよ。


「おはようございますっ」


 むっ! 可愛い声!


「おはよう、ミンシア。あんた朝番で良かったわね。さっきまで大変だったんだから……」


 ミンシアというのか、ふわりとした髪の毛を後ろで束ね、くりくりの瞳、愛嬌の良い顔に、控えめな胸。


 これからに期待だけど、顔は小動物系で可愛いな。


「ジーナさん、おはようございます。大変だったって……、何かあったんですか?」


 いいね! 美少女が首を傾げる様は! ああ、やっと異世界の実感が湧いたよ。


「それがね、ローラが受付で――」


 だんだんと顔が青ざめていくミンシアちゃん。


 そうだよね、朝からホラーだもんね。


――いいね、ミンシアちゃん。


 冒険者のお姉さんはまだ寝てるのかな?


 セクシー担当が欲しいけど、これはってのがいない。


 よし、ギルド見学ツアーを再開しよう。


 といっても、あとは裏庭の倉庫ぐらいか?


 価値の高そうな剣や鎧……はない。


 ぼろぼろの武器と防具は新米冒険者に貸し出すのかな?


 お金は小銭を誰かが落としてるのを拾っただけ。


 あとは、魔物の皮とか爪とか。


 臭いゴブリンの耳とかあんなに集めてどうするんだ?


 嫌がらせで誰かに投げつけるとか。


 おっ! 魔物の核を発見!!


 魔素が残ってるのもあるじゃん――いっただきー!


 ほとんどがスライムさんとゴブリン。


 あとはこの辺に多い魔物で保有スキルと一緒にご紹介。


 ブリーズバット 【吸血】【飛翔】【超音波】


 サイレントビー 【巣作り】【毒針】


 オオダンゴムシ 【丸まり】【押し潰し】【硬化】


 夜行性のブリーズバットは集団で襲ってくるらしくて、夜中に少人数で外を出歩くのはおすすめしないらしい。


 サイレントビーとオオダンゴムシはこの辺の森に生息していて、サイレントビーの巣から取れる蜂蜜は絶品、ダンゴムシは鎧の素材として大人気。


 ダンジョン以来の新核ゲットで、お待たせしました!


――ポーン 条件が揃いましたので、新たに上位職が解放されました。

 

【ディーヴァント】……必要なスキル 【呪い】【不死】【吸血】【分裂】【透過】【健康】

解放スキル【スキル付与】……対象にスキルを付与できる

     【変質】……対象を変質させる


 必要スキルの多いこと!


 シモン君で実験してみる。


 【呪い】【不死】【吸血】【分裂】【透過】【健康】を【スキル付与】――


『う"ぁああぁぁあっ!!』


 なんかすごい苦しんでる!


 どうしよ、シモン君にディーヴァントに必要なスキル付与したらどうなるかって軽い気持ちでやっただけなのに。


 どうして? あ、じゃあこれは【変質】――


『ぐあぁあぁっ! がかごがはっ!』


 …………。


 ……倒れて動かなくなっちゃった。


――そういえば、ゴム人間が海賊の王様を目指して大活躍するあのマンガでも、二つ以上の能力をつけるにはリスクがあるって言ってたっけ。


 あ! 解決案が下りてきた!


 よし、シモン君の核を取り出して、ドクロ石にはめこんで、また体に埋める。


 これで俺の魔素を入れてみよう。


 ご都合主義が俺に出来ると言っている――魔素注入しちゃう。


 よし、シモン君の処置は終わった、探索再開。


 今度は裏庭の木々を伝って、隣の建物に行ってみようか。


――おい! 資料室を散らかした奴は誰だっ!! 地図がなくなってるぞ!


――ヨーゼフ主任っ! 倉庫にあった魔石から全て魔力が抜けています! 今日がギリアムさんへの納品日なんですけど!?


――ギルド長っ! 倉庫が何者かに荒らされてますっ!


 なんだかギルドの方がざわついているけど、またゾンビでも現れたのかな?


 冒険者ギルドの隣は酒場だった。


 朝だから誰もいない、店主らしき無精髭のお兄さんとおっぱいが大きいお姉さんが二階の部屋で仲良く寝てた――羨ましい。


 さらにお隣は民家、その後も民家が続く住宅街――


 この世界にもブラとパンティはあった!


 なんか質素なデザインで色気はないけども。


 若い女性の下着だけは、研究者として一部預かっておく。


 そんなわけで、適当に民家で動いている女性を覗いたり、金品を物色しつつ、時々、影読みで情報を集めてみた。


 ほとんどが生活関連で、どこのお店が美味しいとか、冒険者のなんとかさんが素敵とか、昨日は旦那が頑張った、とかこれといって気になる話題はなかった。


 俺も早く実体化して頑張りたい――色々と。 


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