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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第一章 あやしい影に転生しました

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第9話 あやしい子ども


 ブレッシェルの村を出てから、少なくとも一時間以上は経っている気がする。


 遅い。かなりシモン君の歩みは慎重だ。


 若者はもっとリスクを恐れずに進んでほしい。


 さて、シモン君が踏み抜いたフラグのバタフライエフェクトによって俺をも巻き込む大事件を、どうやって華麗に解決したのか説明しよう。



【三つ目のドクロ石】……魔物の核を作ることができる



 この石ころがキーアイテムだ。


 ダンジョン最下層、一番奥にあった祭壇風の部屋――


 棺があって、中には三つ目の骸骨がぼろい服に身を包み、貧相な杖を握って眠っているだけだった。


 俺の期待を返してほしい。


 腹が立ったので身ぐるみを剥いでやった。


 ぼろ服を剥ぎ取ったとき、棺から転がり落ちた三つ目頭の骸骨に睨まれた気がした。


 何をガン飛ばしてるんだ? はーん? と睨み返したときに気づいた。


 三つ目の奥に魔素が渦巻いているのを。


 にやり、本能の悲鳴をBGMに美味しくいただいた。


 ぼろ服と貧相な杖の効果はわからなかったけど、魔素が吸い終わった途端に石ころになった三つ目の頭については、なんとなく使い方が理解できた。


 ということで、三つ目のドクロ石さん協力のもと、ブレッシェル村復興大作戦を開始する。


 まず、三つ目のドクロ石――ドクロ石に改名――に俺の魔素を注ぐと核が出来る。


 この核を見た感じグロくない死体に適当に埋め込んでいくと、死霊が核に取りつこうと争奪戦を開始する。


 見事、核の争奪戦を勝ち抜いた者は、ゾンビとしてこの世に復活する、すごい。


 死霊+死体+核=ゾンビ。


 ちなみに、死霊は生前の記憶をうっすらと持っているから知性はあるよ。


 確かシモン君の記憶では、人口は八十名程度だったはずだけど、争奪戦を繰り広げている死霊の数は、どう見ても軽く百を越えている……。


――村人達はちゃんと元の体に入れたかな? 入ったと思いたい。


 そこかしこで、ゾンビ同士が顔を見合わせて――


『もじがしでぇ、ばだじだち(もしかして、私たち)』


『ぼじゅがでぇ、ぼげだぢぃ(もしかして、俺たち)』


『『いでがばってどぅ!?(入れ替わってるぅ!?)』』


 ほらほら慌てない、君たちは同じ時間を過ごしているよ。


 というわけで、無事に村人たちは復活した――ゾンビとして。


 ちなみに、ソニアちゃん達と思われる子どもの霊は、死体が売り切れてしまったので、ゴーストのスキルで作った火の玉に入ってもらった。


 ウィルオウィプスと名付けた、夜なのに村がほんのり明るいのは彼女達のおかげだ。


――ふと振り返ると、ブレッシェルの村や、俺がいた森が遠くに見える。


 恵みの森は、魔素霧に覆われた魔物達の楽園となり、日の光できらきらと輝いていた小川は、なぜか魔物化してしまった魚たちのおかげで、暗く淀んでいる。


 そして、シモン達が育ったブレッシェルの村は、昼夜を問わず、さ迷い歩くゾンビ達で溢れている――ソニアちゃん達もいるよ!


 ……にしても、シモン君遅すぎ。


『ごべぇんだざぁい』


 あ、ごめん、責めてるつもりじゃなかったんだけど、町にたどり着くのが朝になるのは不味いからさ。


 あと、くねっても可愛くないよ、男の子。


 さっさとシモン君を収納して、一気に影移動しようっ!




◇◇◇




 結構、影移動でも時間がかかった……。


 車が欲しい。


 俺が近づくと魔物が怯えて逃げることに傷つきながら、なんとか夜明け前にムーンの町にたどり着けた。


 門番がいたよ、それから門の付近がものものしい――何かあったのか?


 門番から離れた場所で、シモン君を外に出して、【認識阻害】、【幻妖】、【魔素操作】っと。


 俺は角度的に仕上がりが確認できないけど、生前の元気はつらつな八才の男の子にしか見えないはず。


 ちなみに、魔素操作は自分に使う。


 ラノベだと魔素の大きさで正体がバレることもある。


 この世界には、鑑定魔法みたいなのはなさそうだけど、気配でヤバさを感じる奴はいるだろう。


 お前、何者だ? 的な一悶着があると面倒。


 ふっ、あいにく俺はそんなヘマはしない。


「そこの者、とまれっ! 貴様、何者だっ!!」


 あるぇ? なんで? なんで何者だとか早速言われてんの?


「ばあ"ぁ"あだ、ごびぁ、ぶでっじぇきばしだ……」


 よしっ! 何を言ってるかわからないよ! 後半はブレッシェルから来ました、だろうけど、名前ぐらい言えるようにもっと頑張れ!


「お、おい、大丈夫か? ぶでっじぇ……、まさか、ブレッシェルか!? あそこから夜通し歩いてきた? 嘘だろ、貴様のようなガキが一人でどうして――っぐ」


 ブレッシェルが伝わる奇跡を見た。


 もう、門番Aはうるさいよ。


 まだ早朝なんだからそんなに大声出さないの。


 後ろの人たちがこっち見始めてるじゃん。


 ん? あそこに女性らしきシルエット?


 とりあえず門番Aの影が朝日を浴びて、こちらに伸びてきたところで、【影支配】からの【影読み】――


『――俺の名前はマティアス、この町で……、はい次っ』


 昨晩、ブレッシェルにいたはずの冒険者達たちぼろぼろの状態で戻ってきた。


 ブレッシェルで何があったのかと尋ねると、小規模ではあるが魔物大暴動が起きて……村が飲まれたと。


 俺は傷ついた冒険者たちの手当てをガイルに任せ、急いで町長宅へと向かった。


 夜中にも関わらず、話を聞いてくださったムンロス様は、すぐさま冒険者ギルドに町の警備と村への調査の依頼を出してくれた。


 冒険者は命がけの職業だ、おそらくボランティアに近い今回の依頼を受けてくれる人はどれだけいるんだろう。


 早く……、早く夜が明けろ!


「マティアス、気持ちはわかるがな、焦るな。俺たちが今出来ることをやるんだ」


 ガイルの言葉になんとか気持ちを落ち着けるよう試みる。


 俺もガイルもブレッシェルの出身だ、村が心配でたまらない――くそっ!


「おい、ブレッシェル村の調査依頼の集合場所はここでいいか?」


「早く助けに行かねぇと!」


「バカね! 夜中に出発するなんて命がいくつあっても足りないわよ!」


「くっ、だけど……」


 三人組のパーティーが来てくれた。


 一人はブレッシェルの出身かもしれない、女になだめられている。


 そう、夜中は危険な魔物が徘徊する世界、集団で行動しなければ魔物の餌にしかならない。


 だから、どんなに早くても出発は夜明け前になる。


 夜が明けていく、徐々に集まる冒険者たちの数を見て、俺は少し安堵した。


『――この町、町長も優秀だし、冒険者たちもいい奴らが多いな』


 そんなときだ、ぼろぼろの服を着たガキが目の前に現れた。


 影から突然出てきたかのように……。


『――うお、異世界人、夜目すごすぎ!! よく考えたら、普通に影のまま町中に入ってからシモン君を出せば良かった!!』


 虚ろな様子で、どこを見ているかわからないガキ――まだ小さいな、七、八才ぐらいか。


 ゆっくりとこちらに近づいてくる。


 さっき一瞬だけ、すごい魔力を感じた。怪しいガキだ!


『――そして魔素操作、間に合わず!』


 俺は警戒しながら声をかける。


「そこの者、とまれっ! 貴様、何者だっ!!」


「ばあ"ぁ"あだ、ごびぁ、ぶでっじぇきばしだ」


 聞き取れない、ろれつが回っていないし、少しだけ腐った臭いが漂っている……。


『へ? 腐った……、あ、嗅覚オフってたけどシモン君、腐ってたのか! シモン君のせいで色々と台無しだよ』


 くそ、なんだってんだ。


 俺たちはブレッシェルにこれから向かうってのに。


 待て、こいつ、ぶでっじぇって言ったぞ。まさか!


「お、おい、大丈夫か? ぶでっじぇ……、まさか、ブレッシェルか!? あそこから夜通し歩いてきた? 嘘だろっ!? 貴様のようなガキが一人でどうして――っぐ」


 読み取り調査、完了!


 ……どうしよ、見た目は変えられても臭いはごまかせないのかぁ。


 よし、シモン君は収納して、マティアスの影から様子を見よう。


『ばずだぁ、ごべだざい。すでだいでぇ』


 捨てないで、男に言われても嬉しくない。


 まあ、女に言われてもうっとうしいが。


 話し相手が欲しくてシモン君を連れてきたけど、よく考えたら町に入れば人がいっぱいなはず。


 話し相手ぐらい出来るかもしれないぞ。


 腐ってきたのは予想外だった。


 男の子だし、いっそ捨てちゃうかぁ――男の子だし。


――そういえば前世で実家のお隣さんが、夜中の鳴き声、獣の臭い、そこらに糞と三拍子揃った猫屋敷だったのを思い出した。


 じいさんの一人暮らしで最後は猫の世話どころか、自分の世話もままならず孤独に昇天してたはず。


 猫屋敷って土にまで糞尿が染み込んだりして、リフォーム代がすごく高いらしい。


 痩せこけた猫たちの死体に、じいさんの孤独死とかで、完全に事故物件になってたな――息子さん、涙目だった。


 うーん、そう考えると、鳴かない、糞しない、ちょっぴり臭いのシモン君ならその辺に捨てても問題ないかも?


『あぅあ"』


 言わなきゃ良かったぁ! って頭を抱えるシモン君。


 あんまり強く頭を持つともげちゃうよ?


 君はすぐにフラグを踏むんだから、反省しなさいよ。


 そういうとこだからね!


 でもね、大丈夫!


 まだまだ俺の収納スペース――シャドウスペース――いや長いな、略して――シャドスペは余裕ありまくりだから!


 ○○ドームの広さを信じてくれ。


 初めての仲間だし、とりあえず保留だよ。


『ばすだ……』


 あー、泣かないで。


 涙より先に目玉がポロリしちゃうよ。


 おっと、とにかく今は門番Aの後ろのお姉さんが気になるから全部後回し。


 とりあえずシモン君はシャドスペでぼんやりしててくれ。


『んぼー』


 うん、素直。


「おい、マティアス。どうしたー?」


「…………、あれ? なあ、ガイル。さっきそこに怪しいガキがいただろ?」


「ガキ? いや、まだまだ暗いし、お前のデカさのせいでお前の向こう側は見えてないぞ」


「門番さん、どうしたの?」


――今っ! 【影移動】――


 よし、門番ずと第一レディがどうのこうのと話しているうちに、じっくり楽しませてもらうぜ。


 ……、鼻が大きい。


 下から覗くと鼻の穴がすっごい見えちゃう。


 違う、俺が見たかった女の子の秘密はこれじゃない。


 しかも装備は上下ともに鎧だと?


 ボディラインがわからない。


 あと、朝日さんが何気に俺の邪魔をする。


 くそ、朝は苦手だ。


「――それじゃ、ブレッシェルに向けて出発だぞー!」


「「「「「おうっ!」」」」」 


「「「「任せろっ」」」」


 いや、待て、待って!


 お姉さんの影にいるから俺もブレッシェル村に連れて行かれそうなんだけど。


 たくっ【影移動】【影移動】【影移動】――


 とりあえず門番マティアスに見えないところで、シモン君を出して冒険者ギルドにいってみよう――やってみよう。


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