狂公と四将軍
「聖女の転生体~」に出てきたアラニア公国の話です。
物語が始まる二年ぐらい前のお話
アラニアには四将軍と呼ばれる、凶悪な将軍がいた。
第一軍:ツーバック
第二軍:ドクドレ
第三軍:ディムトッグ
第四軍:ジェイロウ
この4人で最も若く、最も凶暴なのがツーバック。
ベテランでありながら、凶暴さはツーバックに劣らないディムトッグ。
凶悪ではあるものの、献策も行うドクドレ。
そして、本人は凶悪でもなんでもなく、単に周りが死にまくって、なんとなく身分が上がってしまったジェイロウ。
これはそんなジェイロウのお話。
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「ビーーーーーーーッチ!!!」
狂公と恐れられているアラニアの公王、テディネスは、陣地で女を連れ込みセッ○スをしていた。
相手は、占領した貴族の元妻。
テディネスは占領した領地の貴族のうち、男は殺し、老人は燃やし、子供は奴隷とした。
そして女はこのように扱われる。
完全に玩具としてしか認識されない扱い。
最初は抵抗していた彼女達も、狂公の度重なる性行で、完全に気が狂ってしまっていた。
将軍達と軍議をしている間もずっと腰を降り続けている。
羞恥心や誇りなどは既に破壊されていた。
少しでも腰の振りが悪いと、テディネスは容赦なく叫び尻を叩いた。
「ヒギィィィ!!!」
「腰を振れ!もっとだ!!!」
それを気にせず4将軍は軍議を続ける。
「ドクドレさんよぉ。次は俺じゃねーか?」
4将軍の筆頭と恐れられているツーバックだが、ドクドレに関してだけは敬意を持っていた。
「ああ、それでいいと思うが」
ドクドレもツーバックを認めていた。この二人は仲が良い。問題は
「俺はともかくジェイロウは全然戦っていないではないか!第三軍と第四軍に任せてもらいたい!」
ディムトッグ。彼は二人と仲が良くない。
なのでジェイロウとよく連んでいた。
しかし、ジェイロウは、なんで自分が四将軍なのかが分からないレベルで普通の軍人であった。
残り3人の思考も分からないが、狂公の気持ちもさっぱり分からないし、その子ども達に関しては言葉から分からなかった。
ジェイロウが所属した第4軍の上官は、次から次へと戦死したのだ。
そして、どんどん出世していった。
凶暴ではないだけで、比較的優秀な指揮官であったジェイロウは、そこそこの戦果を残し続ける。
しかし、とても「四将軍」と呼ばれるような凶悪さを持ち合わせていないのは皆が知っていた。
「ドクドレ、正直に言いますが、ツーバックが出れば敵は殲滅できる。ですが、被害も多い。ここで彼を使うよりも、もっと大きな場で使うべきでは?」
ツーバックの戦は非常に大味だった。
突っ込み殺しまくる。
敵の被害も凄いが、味方も死んでいく。
「特に城塞戦となれば、第三軍、第四軍にお任せ……」
「ありがたく孕めビッチ!!!!お前のような軟弱な血に、王者の○○○○を流し込んでやる!!!!」
「お出しぐたさい!太い○○○で、わだじの○○をみだしでぐださい!!!!」
テディネスと元貴族の妻の絶叫
頭を抱えるジェイロウ。毎回の話ではあるが、こんな状況で話など慣れるわけがない
「ジェイロウよぉ!テメエが責任持って落とせるのかよぉ!?」
ツーバックが絡んでくる。
「公王様のご期待に背いた記憶はないぞ」
そう。ジェイロウは、幸運も味方して、毎回の指令に成功していた。だからこそ出世したのではあるが。
「ジェイロウ!!!!!」
「は!はい!」
テディネスを見ると○○○を勃たせたまま、仁王立ちしていた。
相手をしていた女は蹴っ飛ばされたのか、吹き飛んでいる。
粘液が垂れていたりと、色々生々しすぎて、ジェイロウは目を逸らしたいのだが、王の呼びかけに、答えないわけにもいかない。
「お主の気概は理解した!三日で落とせ!!!」
「かしこまりました」
三日。それは無理だ。だが否定の言葉は使ってはいけない。
「必ずや三日で落とします。そのためにも、第3軍のお力も借りたいのですが」
「許可する!ディムトッグ!手伝え!」
「かしこまりました!」
満面の笑みで頷くディムトッグ。
思惑通り進んだと喜んでいるのだ。
ディムトッグには野心がある。
第三軍こそが四将軍の頂点に。
そんな野心。
(どうでもいいじゃないか、そんなの)
ジェイロウは心の中でため息をついた。
夜、出陣の準備をしていたジェイロウにツーバックが訪れた。
「よお、ジェイロウ」
「ああ」
ツーバックはディムトッグとは仲が悪いが、ジェイロウとはそうでもない。
理由は
「エウロバ様の話聞いたか?」
「ああ。素晴らしい案だと思う」
エウロバ。
テディネスの娘。
王と王子は戦場に行って帰ってこない。
内政はまだ幼いエウロバが全てをみていた。
ジェイロウは常識的な感覚の持ち主であったため、エウロバの治世とその政治感覚に共感し、早い段階から、エウロバへの傾倒を明確にしていた。
初めは「王女が国を継ぐわけでもないのになに言ってるんだ、お前は」という感覚だったのだが、エウロバの国民的人気が盛り上がり、軍への提案もする頃になると、皆が注目するようになった。
特に「皆兵制は止める。その代わり、大幅に軍の待遇を向上させる。そのような志願制にするべきだ」
という政策提案は大きな支持を受けた。
狂公は聞き入れ無かったが、ツーバックは特にこれを気に入っていた。
「兵は命がけだ。やる気もない雑魚が来るよりも、マネーを掴みたい獰猛な兵士で囲んだ方が遥かにやりやすい」
「ツーバック。心からそう思うよ。無能な兵は敵よりも厄介だ」
ジェイロウは皆兵制に反対だった。
戦いたくもない男性を戦場に無理矢理連れ出す事が耐えられないのだ。
ツーバックは理由が別だったが、エウロバの熱心な信者となったのだ。
「ドクドレには話をしている。大分乗り気になってきた」
「それは心強いな」
ドクドレは、テディネスへの忠誠心が高い。
だが、エウロバを認めつつあった。
「ディムトッグはどんな感じだ?」
「奴は野心が強い。話のもって行き方次第だが」
正直そこまで忠誠心が高い方ではない。
なので、やり方次第だと思っていた。
「ふん。まあいい。俺はお前に期待している」
「ありがとうよ。頑張ってくるよ」
ツーバックがいなくなった後、ドクドレが来た。
「どうした?」
「ツーバック来たろう?」
「ああ。ちょうどお前さんの話もしたんだ。エウロバ様の……」
「王子を乱戦で殺せ」
ジェイロウは息を飲む。
「俺は納得した。お前の言うとおりだった。エウロバ様こそアラニアを継ぐに相応しい」
「ドクドレ、お前」
驚いたのだ。ドクドレは忠誠心が高い優秀な将軍だ。
「あの三王子はダメだ。王の悪いところしか真似ていない。男を殺し、女を犯す以外のことはなにも為してない。王も限界に近い」
「そ、そこまで言うのか、お前が」
意外すぎる。なにかの罠かと思うぐらいだ。
「ジェイロウ、俺は誤りを認めないといけない。俺はな、三王子がいて、王も健在な時期に、王女を立てようなんて言い出したお前が信じられなかった。なにを言っているのだと。
ツーバックが賛同したと聞いたときには耳を疑った。お前がツーバックを騙したのか?と
ところがだ、今振り返れば、エウロバ様が正しいのは間違いないんだよ。俺の感覚が古かったんだ」
頭を下げるドクドレ。
「そんな、ドクドレ」
「だからこそだ。王子を殺害しろ。城塞戦は乱戦になる。背中からならば殺せる」
「待て、ドクドレ。賛同は嬉しいが、殺すなどは……」
まだ時期が早いと言おうとしたが
手紙
ドクドレは手紙を差し出した。
「エウロバ様からだ」
「なに!?」
手紙を見ると暗号化されてはいたが
「……分かった」
王子の排除。
「一人貸してくれ。ドクドレ」
「ああ。バレだろう?」
「ああ。バレなら確実に殺せる」
ドクドレの部隊にいるバレ。
弓の名手。
「もちろんだ。お前だけに手を汚させる気はない」
ドクドレは微笑み
「ジェイロウ、冷静なお前が四将軍で良かった。でなければアラニアは滅んでいたよ」
長男戦死。
その報を聞いたテディネスは
「ちっ!?油断していたのか!?馬鹿者が!!!」
悲しい素振りを見せることもなく、女を犯していた。
「城を落とすことは出来ましたが、ご長男を失った罰は受けます」
頭をうなだれるジェイロウだが
「構わん!そもそもが、あの馬鹿者は今回の陣に入れてもおらんぞ!勝手に紛れ込んで!勝手に死んだのだ!奴に気を取られて城が落とせなかったと言う言い訳よりよほどいいわ!」
三王子は、毎回戦争に勝手に参加していたのだ。
ドクドレはそのあたりも含めて、ジェイロウにやらせたのだが。
「どうせ子などいくらでも増やせる!この女もいい具合だな!奴が死んだ件は不問だ!よくやったぞ!ジェイロウ!」
「ありがとうございます」
頭を下げて部屋から出た。
「子などいくらでも増やせる、か」
実際はエウロバ以降、子はいない。
不妊ではない。犯した女は孕むのだが、毎回激しい性行で、流れてしまうのだ。
この世界で流産の割合は多い。
特に戦場に連れ出し、道具のように扱えばこうなってしまう。
悲鳴と嬌声を聞きながら
「アラニアは変わらないといけない」
こんなものが長続きする訳がない。
「俺は、この国を、変えたい」
ジェイロウは拳を握っていた。
テディネスに犯されていた、貴族の女性。
城に侵入した際に捕らえた、可憐で美しい女性だった。
逃げ出して殺された貴族の夫と違い、彼女は召使い達を部屋に匿い、自分の部下達を守ろうとしていた。
彼女の差し出す際に、テディネスに
「勇気ある女性です。自らの身よりも、召使い達の命を守ろうとしました。誇りある方にはそれなりの待遇をお願いします」
と申し出たのだが
「素晴らしい報告だ!ジェイロウ!だからこそ犯しがいがある!俺の前に連れてこい!」
と命じられたのだ
「こんな非道を続けてはいけない。殺して、犯した先にはなにも無いんだ。なにも無いんだよ」
凶悪な四将軍。
そう称えられていながらも、常識的な感覚を持つジェイロウは泣いていた。
「エウロバ様、私はこの国を変えます」
そう天に誓っていた。