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カレンバレーとユレミツレ

カレンバレーとユレミツレ

この二人は基本的には仲が悪い。


なにかあると揉めて、館内でバトルをしている。


しかし、根っこのところでは、互いを尊敬しあっており

カレンバレーは「ユレミツレは次世代の龍族リーダー」

という認識で

ユレミツレは「カレンバレーこそが龍族の理想体」

と認め合っていた。


だからこそ、ちょっとした気に入らないことで

「次世代のリーダーが、なにやってやがる」

「龍族の理想となるべきやつが、なにやらかしてやがる」

と殴り合い、燃やし合いに発展するのだが。


そんな二人が意見を一致するときがある。

龍族の間では

「あの二人の意見が合致したら、大抵ロクなことが起きない」

と噂されていた。


そして今日。

カレンバレーとユレミツレは、二人してマディアクリアとフェルラインに意見をしに来ていた。



「目にあまります」

「私から見ても同感だ」


フェルラインは龍族のリーダーを降りて、マディアクリアに譲った。

カレンバレーは護衛筆頭を降りて、ユレミツレに譲った。


つまり新旧のリーダーと護衛筆頭4人が集った話し合いなのだが


「新人の教育がぬるすぎます!なんですか!あのヘラヘラしたのは!」

新しく龍族に加入したクミルティラ。

この教育方針に対して、この二人は文句を言っていた。


「教育者の方針には基本的に口出ししない」

マディアクリアが反論するが

「ミカミセラの実力は認めますが!教育には向いてなさすぎる!」

ユレミツレは反発。


ミカミセラは40年前に入った龍族。

龍族の中では中堅だったが、気まぐれで酷い性格をしていた。


「まともな教育をされた形跡がない。問題になったカリスナダですら、教育者のアリスウルは悩みながらも懸命に教育しようと努力していた。ミカミセラにはその責任感もない」


「アリスウルは、カリスナダの不始末に、処罰なら自分が受けるとまで言ったのですよ!?あれこそが教育者の責任感です!対してミカミセラには責任感がない!だからクミルティラがああなるんです!」


二人は必死に訴えるが


「で、どうしろと?」

後ろで微笑んでいたフェルラインが聞く。

「教育者を変えるべきです」


「ミカミセラはしばらく龍族として残る。彼女にも後輩を輩出してもらわないと困るわ」

「それにしても!クミルティラが可哀そうでは!ちゃんと教育も受けていないのに、失敗を重ねても、それは本人の責任とは言い難いです」

ユレミツレはカリスナダへの叱責を強烈に憶えていた。


フェルラインはあの時カリスナダを本気で殺すつもりだと思ったのだ。

戦慣れしているユレミツレですらビビるほどの殺気を出すのがフェルライン。


あの時のカリスナダは、教育不足が原因で失敗したとユレミツレは思っていた。


「ユレミツレの責任感は素敵ね。マディア、意見は聞いてあげた方がいいと思うわ」

「フェルがそう言うなら……」

「問題は」フェルラインが笑顔で言う。


「誰が教育するの?二人のどちらか?」

凍り付く二人。


ここまで言っておいて、自分のやる教育に不備があったら色々問題となる。

それでも

「言い出した以上、責任は果たしたいと思います」

ユレミツレ。


「素晴らしいわ。ユレミツレ。でもね、護衛筆頭は教育している暇はないわ。

カレンバレーがあなたを教育した時は、まだカレンが護衛筆頭ではなかった時期だからね」


「じゃあ私か」

「カレンバレーもそうよ。あなたも無理。今は帝国が揺れ動いている時期だからね。いつでもいけるように準備しておいて。私も、マディアもダメ。じゃあ誰がいい?」


二人は困ったように顔を見合わせる。

誰がいいか。

この4人を除くと教育に向いた龍族が見つからないのだ。


「今は忙しいのよ。暇してるとしたら、チャズビリス」

「殺す気ですか!?」

チャズビリスは拷問担当。

相当えぐいことをやるのだ。


「あとはそうね……」

フェルラインは遠い目をして言うが

「戻ってきたカリスナダと、謹慎中のエールミケアぐらいしかいないわよ」


顔を見合わせる二人。

そのどちらかならば

『エールミケアで』



エールミケアはフェルラインのお気に入りだった。

ミケアがなにかやらかしても、フェルラインがなんとかするだろう。


カリスナダはフェルラインが激怒し、追放に近い処分を受け、最近戻ってきたばかりなのだ。

これ以上、フェルラインを怒らせかねない事には関わらせたくない。


その結果、エールミケアに決まった。


「いやです」

エールミケアは即答する。

「絶対あの二人の陰謀です!私が失敗するのを見てネチネチ言うんです!やりたくないです!」

泣きそうな顔でフェルラインに泣きつくエールミケア。


「他にいないのよ。頑張りなさい」

「無理ですよ~」

ヘラヘラするな、と言うが、エールミケアがヘラヘラしているのだ。

教育者がこうなのに、無理である。


「とりあえずやってみなさい。フォローはするわ。無茶なお願いなのは知ってはいるから」



ところが。

エールミケアとクミルティラは変に気が合った。

性格が似ているからなのと、やたら怒られるあたりが。


エールミケアが一生懸命

「これをやったら怒られるから、こういう時は笑わない方がいい」と伝え、実際に自分が怒られるのを背中で見せていたら、クミルティラは、きちんと周りに合わせた振る舞いが出来るようになってきたのだ。


エールミケアは、龍族の教育では常識的な暴力による制裁は一切行わず、クミルティラの教育に成功していた。



「似た者同士組むのがいいのかも知れんな」

カレンバレーとユレミツレは二人で蜜水飲みながら談笑していた。


「そうですね。よく考えたら、教育に問題があったケースって、性格が似てないもの同士ですものね」


「私達もそうかも知れない。私の活動時間はもうそんなに長くは無い。ユレミツレ、しっかり頼むぞ」


「ええ。エールミケアも頑張ってはいますけど。私の方が相応しいと思いますしね」


次世代のリーダー争い。


ユレミツレかエールミケアか。

マディアクリアは短い腰掛けであろう。

二人のどちらかが育てば、降りると見られていた。


「私もそう思うよ。頑張れよ、ユレミツレ」

「ええ。もちろんですわ、カレンバレー」

二人は和やかに話をし続けていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 龍族の活動時間限界がイマイチピンときてないです。龍姫も含めて。 てっきり生に飽いたか、強すぎる衝動に耐えられないからだと思ってたので、フェル辺りは大丈夫では?と思っていたのですが…… …
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