フェルラインとエールミケア
「あの馬鹿どこ行った」
フェルライン。
ここは龍族の館。
龍姫には常に龍族の付き添いがあり、それはローテーションで決まっていた。
なのに当番のエールミケアがいない。
「サボリじゃなーい?」
マディアクリアが欠伸をする。
「諜報担当がサボるとかどうすればいいのよ」
「優秀なんだけどねー。闘争本能コントロール出来るし」
「私も評価してるのよ。マディアクリアの次はエールミケアだと思っているから」
「うんうん。いいと思うけど」
「だから教育しないとね。次世代の為だもの」
フェルラインは壮絶な笑顔を浮かべ廊下に出た。
「ふんふーん♪」
エールミケアは、芋を油で揚げたものを食べながら、本を読んでいた。
「いやー。新都で流行ってる恋愛小説めっちゃ面白いな。これからは恋愛小説の時代だって、うん」
「へえ。それ、新都で買ってきたの?」
「うん。新都に潜ったと、きに……」
ギクリ、とエールミケアはゆっくりと振り向く
「ミケア、分かってるわね?」
フェルライン。笑顔だが、目が笑ってない。
「ま、待ってください!今は自由時間!ですから!」
「いいえ、あなたは龍姫様のお付きの時間よ。とっくに時間過ぎてるから」
エールミケアは汗をかく。
そして
「新都で買い物なんて、報告聞いてないんだけど」
「い、いえ、暇だったもので」
「な、ん、で、一刻を争う、貴族クーデターの情報収集で、暇が出来るのかなー???」
ダラダラと汗をかきまくるエールミケア。
そして
「や、止めてください!フェルラインさんのお仕置きシャレにならないんです!マジで!あれやられると真っ直ぐ歩けなくなるんですから!諜報活動にも影響が!」
「安心しなさい。一週間休暇をあげるわ」
「一週間休暇貰えるなら小説読みたいです!」
フェルラインから、「ぷつん」という青筋がキレる音がすると
「3日間レイ○」
「たすけてー!!!」
「このサボリ魔がーーー!!!根性叩き直してやる!!!」
大騒ぎする二人に
「あれが次世代リーダーって本気か?」
カレンバレー。
「私は認めませんが」
ユレミツレ。
「いや、まあ、あれも優秀なんだよ。サボリ癖があれなんだけどさ」
マディアクリア。
3人は腕を組んで、二人の騒ぎを見守っていた。