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リグルドとハユリ

「娼婦が嫌なので~」の話となります

リグルドは信仰心がない。

そう自覚していた。


なぜ神教の牧師などしているのか。

それは教会に拾われて、そう育てられたからだ。


生まれつき頭の良かったリグルドは、孤児院の中でも才覚を示し、大人たちに可愛がられた。


しかし、その頭の良さが故に、神の力の無さにはすぐ気付いた。


祈っても叶わない。何故か?と。


リグルドは懸命に勉強をした。

これだけ多くの民が神教に帰依している。

きっと正しいのだ。

自分の理解が足りないだけだ。

と必死に勉強した。


その姿を見た周りの大人たちは、リグルドを高く評価し、優秀な人材として教会からスカウトされ、牧師となった。


リグルドは信仰心が無いが故に必死に勉強をしたのだが、周りからは、信仰心があるから勉強をしたように見えたのだ。


その後も、リグルドの苦悩は晴れなかった。

勉強しても、勉強しても、様々な人に指導を受けても、悩みは晴れなかった。


神教への疑いは晴れなかった。

神の存在が信じられなかった。


だが、それが良い方に動いた。

常に疑っていたがために、リグルドは、神教に懐疑的な人間の立場にたって話をすることが出来たのだ。


常に自分と自問自答しているからこそ、他人から神教の不満や不信を訴えられても堂々と答えたし、その思いにたって、冷静に話をする事ができた。


この「信徒ではなく、懐疑的な人々と上手く話ができる」ことは寄付において、力を発揮した。


リグルドは、寄付集めの時に、神のご利益などに頼った話を殆どしなかった。


理論的に、寄付をすることのメリットを伝え、それに合わなければ断っていい。という立場を鮮明にしたのだ。


断れば罰を受ける、といった、神教が今まで使っていた脅し文句は封印させた。


神教は援助するから、メリットが理解できれば寄付をくださいという形にすると、寄付は大量に集まった。


リグルドはあっという間に神教の幹部に上り詰めた。

だが、心の中では常に怯えていた。

「自分には信仰心がない」と



「リグルド様、今日もそんなにお祈りをされて……」

修道女がリグルドに声をかける。


リグルドは仕事以外は祈りを続けていた。

信仰心が無いからこそ祈り続ける。


「いいですか、例え神皇様でも、祈りに限界など無いのです。ましてや、わたくしのような人間には、祈りの時間などいくらあっても足りません」

修道女は尊敬したようにリグルドを見つめる。


すると

「リグルド様!」

可憐な少女が走ってくる

「ハユリ、元気そうですね」

「はい!リグルド様!」

ハユリは抱き付いてくる。


基本的に牧師は女性との性行は行わない。神に身を捧げているからだ。だが信仰心の薄いリグルドは、男性としての欲望はかなり強く、自慰で誤魔化していた。

特にハユリは好みの顔をしていたのだが、理性で思いを封印していた。


「ハユリ、聞きましたよ。宣用の組織を希望したと」

「はい!リグルド様の元でお仕えしたいのです!」

宣用の組織とは、リグルドがトップの、寄付集めの部隊だ。


なのだが、とてもハユリは寄付集めに向いているとは言い難い。


寄付集めは、基本は神教の信仰が薄い人間にやるものだ。

信仰心が篤ければ、自分からやっている。


その人達を説得してお金を出させる事は、それなりの社会経験と、口の上手さがないと無理。


ハユリは、信仰心が純真無垢で、驚くほど向いていない。


報告を聞いて急いでハユリの所に顔を出したのだ。


「ハユリ、神の元で働く以上、誰の下とか関係ありません。あなたは修道女として修業を続けられた方がいい」

信仰心が篤く、純粋なハユリをリグルドは気に入っていた。


自分には無いものを持っているのだ。


小さい頃から可愛がっていたため、変ななつかれ方をしていた。


だが、ハユリは頬を膨らますと

「リグルド様!私が邪魔ですか!」

「そんな事はありませんよ。ハユリ」

苦笑いするリグルド


「私は頑張ります!神様の試練に打ち勝ちます!見守っていてください!」

ハユリの勢いに頷くしかなかった。



ハユリの成績はやはり良くなかった。

否、0である。

良いも悪いも無い。


なのだが、リグルドの秘蔵っ子扱いなので、誰もハユリを指導しない。


これでは困ると、リグルドはハユリに会いにいった。


すると

「ハユリは相変わらずですね」

見知らぬ少女に一生懸命神の教えを伝えていた。


こんな少女を教導しても寄付など微々たるものだ。だが

「これでいいんですよ、ハユリは」

自分には無いものがある。

自分が求めても得られない、純粋な信仰心。


リグルドは横に座りハユリの一生懸命する話を黙って聞いていた。



修道院に戻る話をしにきたが、半分は

「見知らぬ少女を一生懸命教導したハユリは偉い」になっていた。


リグルドは純粋にそう思ったのだ。

これこそが尊いと。

寄付集めなど、自分達がやる。

ハユリは、この純粋さを失わないで欲しいと。


ところが、定例会でとんでもない報告が来た。


「ハユリが……500金?」

寄付金の集計をしていたところ、突然有り得ない金額の寄付が出てきたのだ。


それを調べたらハユリ。 


その直後ハユリから手紙が来た。


以前教導したメイルと言う少女が、ドラゴン討伐をしていると。

そして、そのお金を寄付してくれていると。


メイルからの寄付は止まなかった。

そして、オルグナも紹介して、二人の寄付金は凄まじいことになった。



「さすがリグルド様です」

「ハユリは心配でした。ですが、お見事ですな」

リグルドは誉められるが微妙な気分だった。


これで、ハユリが寄付集めに専属となっても不幸なだけだ。

今だからこそ


「ハユリの成果は異常です。これは彼女の信仰心からでたものでしょう。新都に招き、修業をさせてあげたいのですが」



「リグルド様!!!」

新都に来たハユリはリグルドに抱き付いてくる。

胸が押し付けられて、リグルドは感情を押さえ込むのに必死になっていた。


「ハユリ、あなたは新都で修業するのですよ。そのような振る舞いはしないように」

「リグルド様にだけですわ、こんなことするの」

茶目っ気に笑う。


ハユリはリグルドを父のように慕っていた。

常に優しく、信仰の事を聞けばすぐに答えてくれた。


こんなに頼もしく優しい人はいない。


たから、ギューッとまた抱き付く。


「ま、待ちなさい!ハユリ!」

リグルドはとにかく顔が赤くなるのを止めようとした。


「リグルド様!わたくし!頑張ります!リグルド様のご期待にお応え出来るようにがんばりますわ!!!」


無邪気なハユリを見て


「……ふふふ、そうですね。ハユリ。お互い頑張りましょうね」


リグルドは、今とても頭が痛いことがあった。


隣の大陸の聖女。

リグルドは全ての能力を使って立ち向かわないといけない。

しかし


「ハユリ、あなたの信仰心があれば、きっと乗り越えられます」

自分にはない信仰心。


リグルドはハユリの頭を撫でながら、どうやってこの興奮をおさめようかと思案していた。

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― 新着の感想 ―
[一言] リグルドさん、そっちでも苦労してたのねwww
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