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ユレミツレとエールミケア

アルネシア公国


龍姫の治める国であるが、その面積は小さい。

元々は荒野でなにもない地域であった。


なにもなかったが故に与えられた場所。

だがその国は龍姫のもたらす鉱山と、圧倒的な散財による経済活動により大きな街ができることになった。



街の名前はアルネシア。

優良な鉱山がすぐそばにあり、貴金属類があふれている。

そして、龍姫や龍族は基本的に暇なため、屋敷に招かれて大道芸を行う需要も多かった。


そんな噂を聞きつけ、一つの旅団がアルネシアに向かっていた。


「気に入られると報酬が凄いらしい。バルナー旅団は2日の滞在で1000金を与えられたらしいぞ」

旅団の隊長が皆に言う。


「1000金かぁ。1年働いたのと同じ金額じゃん」

旅団は盛り上がるが


「……」

一人の少女はつまらなそうに外を見ていた。

入ったばかりの少女。

無愛想で、無口。そして喧嘩っ早い。

性格に難はあるが、その身体能力の高さから団長が引き抜いたのだ。


「ミツレも頼んだぞ。お前の跳躍は目を引くからな」

「……はい」


ミツレと呼ばれた少女。

彼女は旅団の人間と折り合いは悪かったが、引き抜いてくれた団長には恩義を感じており、言うことを聞いていた。



龍姫の館につく。

「ようこそ、おいでくださいました」

複数人の女性が出迎える.


彼女たちは館で人間のまま仕えている女性達。

旅団はそのまま中に案内される。


「どうぞこちらへ」

豊満な肉体を誇る女性が案内をする。


「私は龍族フェルラインと申します。セルドリ旅団のお噂は聞いており龍姫様も喜んでおられます。芸には準備が必要ですか?」

「いえいえ、すぐにでも始めましょう」



セルドリ旅団は音楽を奏で、舞を踊る旅団だった。

ミツレはその跳躍力で音楽に合わせ跳ぶ。

自分の存在意義はそこだった。

常人ではありえないほどのジャンプ


「……へえ」

龍姫や龍族も目を輝かせる。

人間でここまで跳べるというのはインパクトがあったのだ。


セルドリ旅団は龍姫と龍族に気に入られ、その日は泊まることになった。

「既に1000金だぞ!」与えられた金貨を見て大喜びする団長と団員。


一方でミツレは、その騒ぎから離れ庭に出ていた。

「……訓練をしなければ」

ミツレは毎日の鍛錬を大切にしていた。

鍛錬をするから高く跳べる。


毎日かかさずやっている訓練をやろうとした瞬間

「わわわーーーっっ!!! どいてーーーー」

走ってくる少女

そして

「ミケアーーーー!!!! さぼるなーーーー!!!!」

追いかけてくる女性。先ほど挨拶をしたフェルラインが鬼の形相で向かってくる。


そして

「しゃがんでーーー!!!」

目の前の少女。だがミツレは反応できずにそのまま立っていると


「わーーーーっっっ!!!!」


少女は高くジャンプした。

ミツレとぶつからなかった。


そのままミツレの上を飛び越える大ジャンプ


「……は?」

なにが起こったのか理解できなかった。

あんな滅茶苦茶な跳び方で、あり得ないほどの跳躍。


そのまま少女は消えていった。


「……あんの馬鹿……新人で護衛をさぼるとか初めてよ……。あ、お客人、お騒がせして申し訳ないわね」

フェルラインが謝る。

だが

「……あ、あれは」

「あれ?」

「あの少女は、なんなのですか……?」

ミツレが誇りにしていた跳躍。その倍は跳んだ。


「ああ、あれは龍族成りたてのエールミケアって言って。見どころはあるんだけど、さぼり癖が……」

「……あの娘は、元々跳躍がすごかったのですか……?」

その言葉にフェルラインはようやく気付いた。

皆の前で誇らしげに跳躍の芸を見せた少女。


彼女の前でそれをはるかに超える跳躍してしまったエールミケア。

なんと言おうか困惑するフェルラインに


「……龍族になったから、あんな跳べるようになったのですか……?」

嘘を教える意味はない。フェルラインは頷いた。



ミツレは旅団からの脱退を申し出た。団長は残念がっていたが他の旅団の人間はホッとしていた。

ミツレはあまりにも攻撃的すぎたのだ。


そして

「姫様、あの旅団から龍族希望者が」

「ええ、知っているわフェルライン。よりによってエールミケアに感化されて龍族目指すなんてね」

楽し気に笑う龍姫。そして


「ユレミツレと名付けます。彼女を呼びなさい」




龍族となったユレミツレは龍族の血が合ったのか、若いリーダー格として尊敬を集めていた。

だが、次期リーダー争いは


「ユレミツレかエールミケアか」

この二人。

ユレミツレは自分のほうがリーダーにふさわしいと思っている。

さぼり癖があり、ちゃらんぽらんで、闘争本能のないエールミケアよりも自分の方が龍族のリーダーにふさわしい。


だが


「……あの跳躍」

滅茶苦茶なフォームだった。

だが、それを見たミツレは「美しい」と思った。

跳躍に命を懸けた自分が見惚れた大ジャンプ。


「運命、なのかもね、エールミケア」

自分の運命を変えた大ジャンプ。それを行ったものが自分に立ちふさがるのは、ある意味では当然。


「それでも、わたしは負けない」

あれから跳ぶことはしなくなった。まだ目に焼き付いているあの大跳躍。あれを自分では超えられないから。


「時代はかわる。エールミケア、私は時代を自ら切り開きたい」

ミツレは天を見上げる。

館から響き渡る歌声。儀式が始まる。

カレンバレーが、眠りにつく。


同期に近い、フェルラインもマディアクリアも活動停止は近い。

エールミケアも歌い始める。


龍族が眠りにつく時に歌うもの


ユレミツレと一番抗争し、ユレミツレを誰よりも評価していたカレンバレー。次期リーダーはユレミツレこそ相応しいとまで言っていた彼女。


彼女に感謝の思いを捧げ、ユレミツレは歌っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] これも未来へつながる話……龍姫の眠りの時ってリミットはあってもそうだと思いたい。
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