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ミラーとミガサ

「氷魔法使いですが~」の後日談です。

「身体が~。いた~い」

朝起きたら、身体が痛い。

そして、お腹がすきました。


「なにか~、たべもの~」

部屋にはなにもない。


前は置いて置いたのが、最近は平気で5日とか寝るので腐ってしまうのだ。


なので、遠距離会話装置。

「すみませ~ん。ミラーで~す」


『ミラーさん!? 起きられたんですか!?』

「おはよ~ございま~す」

『お腹すいたでしょう?』

「ぺこぺこです~」

『すぐに持って行きますからね』

「助かります~」


わざわざ塔の下に降りるなんてしません。

私は出前を頼むのです。


しかし、こんなに空腹なのもすごいな。

身体も痛いし。


ベッド合ってないのかな?

というか、着替えよう。うん。


部屋でバタバタしていると


「え!? 音がするって! 師匠!? 起きたんですか!?」


ミガサの声

「おはよ~ございま~す」

「部屋に入ります! 今度こそ死んだものかと心配しました! 師匠! 何日寝てたと思うんですか!?」


何日?

「5日?」

「14日です!!!」


14日

「なんで、飲まず食わずでそんなに生きているんですか~?」

「私が知りたいです! 起こしても全然起きないんですもの!」


なんという。


「流石にもう眠くないですね」

「もう、勘弁してくださいよ……あ! そうだ! 書類! いっぱい溜まってますからね!」


ミガサは塔の教師みたいになっている。

私の弟子として、本の問い合わせ、そしてその本の足りない部分や、問い合わせが多く、ミガサが執筆出来る部分の本の作成、そして、その講義。


『合成魔術講座』は、グリモアの学園の教師や、魔法ギルドの幹部も聞きにくる。


そこで集められた質疑応答を、私が答える訳なのだが。


「とりあえずごはん~」

「ミラーさん! お待たせしました!」

ごはん~。


出前の人が持ってきてくれたのは、穀物を叩いてから伸ばした「麺」と呼ばれるもの。


食べやすく、空腹の身体に優しいのだ。

そして美味しい。


「師匠、食べすぎ」

「14日分ですから」

滅茶苦茶大量に持ってきてくれたのだ。

感謝。圧倒的感謝。


食べながら、ミガサの持ってきた書類に目を通す

「本読み返せカス。みたいな質問が多い」

「いや、師匠。やっぱり魔法構成の記述理論は、伝わりにくいですよ」


「グリモアの学園で勉強するでしょうが」

「それでもです。魔法構成記述理論がここまで注目された事はありませんよ」


面倒くさいなぁ。


「ただ、これは、師匠から教われば、私が代わりに書きますよ。それよりも問題なのはこっちです。合成魔術の発展系です」


「この前書いた『合成魔術理論とその応用』読めや」

「だから、あれ分かんねーですからね!? この本の魔術構成理論が分かんねーって質問ですよ!? んで、それは私が代わりに解説しますから、その発展系の解説してください!」


面倒だから嫌だなぁ


「毎日のように、ミラーに会わせろ、ミラーに会わせろ。言われる私の立場になって考えてくださいよ! いつ起きるんだって、私が知りたいわ!?」


キレてるミガサ。


無視して書類に目を通す。

一つの質問に目が止まる。


「……? あ、それ。私意味がわからなくて、その人に書いてもらったのまんま渡したのですが」


「……ミガサ、まだ古代魔術語憶えてないの……?」

「え? それ古代魔術語なんですか? でもそんな文字……」


「古代魔術語には、三種の言語が内包されてるの。これは一番格式の高い文字。確かに一般的には使われないけど」


「わざわざ古代魔術語で質問とか、嫌味ですか? バカですか?」


その内容は

「あ~。これは凄い。この人凄い」

天才っているんだなぁ。やっぱり。


「なんですか?」

「蘇りの魔術記載に、自力でたどり着いた」

でも、私の本を丹念に呼んでいけば辿り着くのは不思議じゃない。

つまり、他の連中が馬鹿なのです。うん。


「ミガサ、この人と会いたい。連絡とれる?」

「え? 直接会われます? 分かりました。すぐにでも手配しますよ」

=====================



私は本の執筆をしていた。

次の本は『合成魔術体系一覧』の続編である。


合成魔術体系一覧の需要は凄かった。

だが、これだけだと、どういう構成するのかが分からない。そうだ。

分かれよ。と言いたいが。


「『合成魔術理論とその応用』読めば分かるのになぁ」

分からなかったらしい。


なので、もう、徹底的に魔法構成を図にしてやる。

という本である。


「師匠、失礼します」

ミガサが入ってくる。


「白湯です」

「どうもです~」

熱いお湯で身体を温める。


「師匠、問い合わせされた方は、転移で行くからいつでも良いそうです。なんなら今日でもいいと」


「次、いつ起きるか分かりませんから、そうしてもらいますか~」


「……本の執筆もお願いしますね。って、うわ、進んでる」

「書くと早いんですよ。私」


「次の本は図が中心なんですね~。へー。分かりやすい」


「文字で分からないなら、図で書くしか無いじゃない」

「確かにこっちの方がいいですね。じゃあ来られたら案内しますので」


ミガサがいなくなった後も、私の執筆速度は止まらない。

サラサラと図を書いていく。


「このあたりの構成はそんなに難しくないんだけどなぁ」


結局、魔法構成とはとても理論的なもので。

その根底の理論が分かればそれでいいのだが。


「師匠、失礼します。お連れしました」


「ミラーさん。お忙しい中お時間空けて頂き、心から感謝申し上げます」


その人は男性だった。

年の頃は30前後だろうか?


「自力であれにたどり着きましたか」

「……私の推測は正しかったと?」

いきなり本題から。

いつ眠くなるか分からないし。


「結論から言いますが、『蘇り』の魔術は実在します。書かれた記述も基本的には正しい」


「や! やはり! 素晴らしい! し、しかし、ならば何故? それを正式に書かれないので? もしくは隠したいのですか?」


「隠すつもりならば、あんな本書きません。貴男のように辿り着く人は必ずいる」


「なるほど。ではなぜ?」


「推測になりますが、私の考える魔法構成はこのような形です」


妖精の書の魔法構成はまだ憶えている。

それを書いていく。


「……? あれ? ミラーさん。ここは?」

あ、やっぱり気付いた。

この人は本当に自力でたどり着いたんだろうな。


「そう。魔法量の消費記述です。間違いではありませんよ」

「……私の、推測だと、並みの魔術師100人でも足りないのでは?」


「1000人は必要だと思います」

「……実質、不可能と」


「そういう事です」

「……なるほど。それは分かりました。実は私も魔法量の問題は気にしていたのです。それよりも、次です。『蘇り』は無理。だが、似たような、不可能と思われる魔術も可能な筈。『合成魔術体系一覧』には載ってはいませんが、年齢操作や、不老などは可能では?」


「『蘇り』に自力で辿り着かれた貴男ならば、それはもう分かる筈です」


「著書は全て読みました。ですが、その合成魔術構成までには辿りつけない。特に『合成魔術理論とその応用』の理解が深まらないのです。なにか、手掛かりを」


うーん。この人のレベルでもあの本は分からないのか。反省。


「まだ執筆中ですが」

私は紙を見せる。


「こ、これは?」

「『合成魔術体系一覧』の続編です。直接魔法構成を書きました。これの、闇と光の記述を見れば、貴男なら分かるはずです」


「……これか。ふむ……。待て、ああ。ここか。いや、うーん」

その人は本を読みながら唸る。


「ミラーさん。なにか、書くものをお願い出来ませんか?」

「どうぞ~」


その人は、それを見ながら必死に魔法構成を書いていく。

おお、それっぽい。流石だな。これはたどり着けちゃう?


しかし

「……ふむ。私はここの記述はおかしいと思います」

指をさす。


「……難しい。そこが違いますか?」

「理論の説明が足りないようです。少し記述を考えます」


「……いや、本当にありがとうございます。勉強になりました。私ももう一度著作を読み直します」


その人は、深く感謝をし、帰った。



その日の夜。


「そーいえば、ガル&ベリーさんはお元気?」

年齢操作の魔術で思い出した。


「相変わらずですよ。城買って豪遊してるみたいです」

年齢操作の魔術独占の権利を与えたジャブローとガル&ベリー。


なのだが、商売を開始して、3ヶ月でジャブローが死んだ。


殺したのは、若返りの魔術を覚えた魔術師二人。


報酬で揉めたと聞く。

だが、世界最高峰と呼ばれたジャブローが殺されるなど悪い冗談。


その二人は、年齢操作で、ジャブローを加齢させ、そして殺したのだ。


だが、老いたジャブローも、魔術師二人を道連れにした。


それ以降、ガル&ベリーの二人は年齢操作の魔術を慎重に扱い、金儲けに成功した。


だが、それはとても血なまぐさい。


ガル&ベリーの二人は、ある程度若返りの魔法を使わせると、その魔術師を処分する。


ジャブローの時のようにならない為に。先制して殺すのだ。


「ここ一年は商売している雰囲気もありません」

「独占契約の話もオジャンですしね」


なので、あの人が年齢操作の魔術にたどり着いても別にいいのだ。

うん。


「眠くなりました~」

寝ます。


「はいはい。師匠にしては結構長く起きてましたもんね」


その時、遠距離会話装置が震えた。


「おや?」

なんだろうと思ったが


『ミラーさん』

「メイル」

『起きたそうで』

「なにかご用がありましたか?」

『いえ。ご挨拶だけ。おやすみなさい』


わざわざ、お金のかかる装置で


「はい、おやすみなさ~い」

こういうのがメイル。


きっといつまでも、仲良く過ごせる。

そう思いながら、私は眠りについた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の通話で不覚にもウルッと来ちゃった。 居るんだなぁ天才が他にも……一番の功績は「もう少し分かりやすくしたほうがいいか」と思わせたことだと思うけどw サンドマンの血が強くなってるのかな…
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