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近未来百年史(4) 日本国債のデフォルト

 国内需要のほぼ全てを国産品で賄う体制を確立し、日本は輸入が完全にストップしても長期間を耐えられるようになった。


 機は熟したと見て、政府は国債の整理を始めた。


 まず、個人投資家や外国企業が所有する国債を日本銀行が買い取った。次に国内の金融機関などが保有していた国債も日本銀行が買い取る事とした。日本国債は日本銀行がその大部分を引き受ける事が百年前から常態化していた為、金融上の混乱はほとんど無かった。


 全ての国債を日本銀行が保有した頃、政府は国債のデフォルトを発表した。同時にベーシックインカムは日本銀行の経済政策の一環と再定義されて、日本銀行から個人の銀行口座へ直接振り込まれる制度に改められた。


 デフォルト前の国家予算は6割以上が国債依存となっていた事、そのほとんどがベーシックインカムと医療費に充てられていた事、国内消費は国産品でほぼすべてを賄えるようになっていた事などから、発行通貨が個人に直接支給されるという前代未聞の制度においてもインフレはほとんど発生せず、国内の混乱も最小限に抑えられた。


 それでも国際的な信用失墜は免れないと言う諸外国からの厳しい糾弾が続いた。これには日本の実質支配への足掛かりを得る意図もあると思われた。損失を出した金融機関や投資家は世界のどこにも存在しない事を盾にして、政府は糾弾を躱し続けた。


 しかし海外投資家の目は厳しく、日本円の為替レートは暴落した。


 日本は円の暴落による経済力の縮小を理由に、国連分担金とIMF拠出金の低減を要求。他方では日本から世界への輸出が急増し、各国の競合他社から悲鳴が上がった。


 公的機関か民間企業かを問わず、世界各国から日本に非難が集中した。しかし日本は世界と国交が断絶してもほぼ困らない。そのため為替レートに関して日本政府が手を打つ事はなかった。IMFから融資を受けるべきとの意見も、日本政府は無視した。


 仕方が無く、日本を除いた世界各国が協調した。その結果、国債のデフォルトで為替レートが暴落した特定国家の通貨を、IMFとは無関係に各国が協力して買い支えるという歴史的珍事が発生。国際的依怙贔屓であるとして一部の国が反発したが、現実問題として日本円の暴落を放置する事は出来なかった。短期間の乱高下を挟んで、やがて円は落ち着きを取り戻した。


 形式的には、日本政府は各国に借りを作った事になった。しかしそれでも外交的には強気で交渉する事も可能であった。今や世界中で不可欠のエネルギー源となったマグネシウムの生産を握っていた事、その融通を直截的に要求されても流通は石油メジャーの仕切りという理由で躱せた事、世界と国交が断絶してもほぼ困らない国内体制を築いていた事、などがその理由として挙げられる。


 ここで日本は敢えて強気には出ず、要求を呑んで動くという形をうまく使って各国の面子を立てつつ利害を調整する、という方針で外交を展開した。その結果、世界の裏側には日本がいるという世界共通認識が醸成され、日本は世界の黒子と呼ばれるようになった。


 人口が減った上に物価が非常に安いので物資やサービスの流通量が経済指標に表れ難くなり、為替レートの影響もあって、日本の経済力は数字上は世界のトップグループから脱落した。しかしそれでも日本は世界各国から一目置かれて、一定の政治的地位を確立した。

余り知られていないようですが、日本は国債発行残高と同程度の海外資産を持っているので、国債を整理してしまうと結構な金満国家に早変わりします。


その海外資産と言うのも、大部分は某国の国債だと言う噂もありますが。ここを突っ込むと虎の尾を踏みますかね…?

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