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第1話

新連載です。短いけど。ツンデレっぽいヒロインを目指して。

私、アレクシア、16歳は只今逃亡中です。元はアレクシア・エマーシャ伯爵令嬢だったのだが…私のいたサザンスエル国の第一王子殿下、オルトア様のご婚約者に指名されたので仕方なく逃亡している。夜会で一目惚れされたとかなんとか。未来の王妃様だ。喜ぶだろうって?冗談じゃないよ。

因みに私には前世の記憶がある。ここで前世は地球の女子高生で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢だ、とか言うとみんなは喜ぶと噂で聞いたが、生憎女子高生なんて可愛いものになった記憶はない。私の前世は地獄の獄卒である。メイドインヘルの魂なのである。何で獄卒が転生なんか?って思うだろ?これには語るも浅い訳が。地獄に落ちたものが、そのカルマ分の地獄を味わった後は再び転生するわけだが、その転生の穴に落ちた。いや、うっかり落ちるほど私は粗忽な性質じゃねーんだぞ?ただ、慣れない新人獄卒と組んでいて、そいつが落ちそうになったので慌てて庇ったら、私が落ちてしまったのだ。転生して生まれたあとはすぐに天使がやってきて「労災はおりるそうです。人間として一生を終えたらまた再び獄卒に戻ることになります。休暇だとでも思ってのんびり人間として過ごすように、と神様は仰っておいででした。」と伝えてくれた。なので私は目立つことなく、騒ぐことなく、無難に一生を終えようと思っていたのだ。

だから婚約から逃げたのかって?馬鹿言うな。普通の婚約だったら受けたさ。人間に転生した私だが、獄卒のスペックは一部受け継いでいる。類稀な身体能力と、魂の色とカルマが見える瞳。地獄に落ちたものが責め苦を味わいカルマ値が減っていき、カルマ値が0になった時点で転生の穴に導いてやるわけだ。魂は言わずもがな心清いものほど美しい色をしている。

オルトア王子のカルマ値…滅茶苦茶たけーの。あれ絶対何か後ろ暗いことしている。それも相当残虐なこと。魂滅茶苦茶汚いし。閻魔様が調べるまでもなく地獄行き確定だよ。そんなやつの所に嫁に行く?冗談じゃないね。かといって王家からの直々の指名。絶対に断れない。私は両親に私は死んだことにしてくれと言い、仮死状態になり、棺に入り、仲の良かったご令嬢や件の王子に棺に花を入れられて、埋葬される直前にこっそりと復活して、空の棺を埋めてもらったのである。

そして国外逃亡。隣国である。スノウエレン国へやってきたのである。名前をアリシアと変え、心機一転庶民としてやっていくつもりである。剛力と健脚を持つ私は鉱山から鉱物を町の鍛冶屋に届ける職に就いた。勿論輸送に馬車は使うが、鉱物の荷揚げ荷下ろしは人力で行うので、そういう職は得てして屈強な男性が就く。最初、深窓の令嬢と言った見目の私がこの職に応募した時は「冷やかしなら帰れ!」と怒鳴られたが、私がそこで詰まれた鉱物を軽々と持ち上げてみせたら唖然とされた後、採用通知を貰えた。

私は早くて、仕事が丁寧、というので中々の高評価を得ている。

私がいつものように、荷馬車を走らせているといくつもの蹄の音が聞こえてきた。豪奢な、いかにも貴族の乗ってそうな馬車に、それを追う黒尽くめの集団の乗っている馬たち。どう見ても暗殺者です。本当にどうも有難うございました。

私はちょっと面倒くさいな…と思ったものの獄卒としてお天道様に顔向けできない所業は出来ないので、荷車を馬から外し、道脇に寄せると、馬に跨り、猛然と黒尽くめの男たちを追った。馬のスペックはともかく、獄卒の身体能力を舐めんなよ?一応護身用に、と腰に下げていた剣で、ばったばったと黒尽くめの男たちを切り伏せた。


「な、なんだこの女!」

「強いぞ!矢だ、矢を射かけるんだ。」


私、自分に飛んで来る矢くらい素手で掴んで止められるんですよね。無駄なことをご苦労様です。


「ぎゃああ!」

「殺せ、殺すんだ、相手はたった一人だぞ!」


なんだか喚いているようだが普通に切ってやった。黒幕を吐かせる、とかの使用用途があるかもしれないので、手足をつぶして生かしておく。黒尽くめの20人からなる暗殺部隊を無事切り伏せると彼らが追っていた馬車へと向かった。


「無事ですか?」


御者は気絶しているようだ。

馬車の中の人は、恐る恐る窓を開けた。


「わたくしたち…助かったんですの?」

「とりあえず追ってきたのはみんな倒しましたけど。」


馬車の扉が開いて壮年の男性と膨らんだお腹をした妊婦の女性と侍女らしい女性が出てきた。あたりに散らばって呻いている黒尽くめの集団を見て、顔を青くしている。


「黒幕とか吐かせるのかなー、と思って一応殆ど生かしてあるんですけど、要ります?要らないならここで殺しちゃいますけど。」

「黒幕は吐かせたいが私たちには輸送手段が…」


壮年の男性が困った顔をした。というかこの馬車の中の3人、恐るべきカルマ値の低さだな。魂も割ときれいだし。多分天国へ行かれるだろう。今救えて良かった。


「数人ならうちの荷馬車に乗せても良いですけれど。」

「荷馬車…?君は一体…」

「鉱物輸送してる民間人です。あそこに荷馬車が止めてあるでしょう?」


だいぶ離れてしまったがしっかりと荷馬車がある。これで荷物盗まれてたりしたら笑えないところだけど、そんなことはないので大丈夫だ。


「ではリーダー格らしい、あの男と、指示を出していたこの男と、後は予備に二人くらい乗せてもらえるか?後、行きずりの女性にこんなことを頼むのは心苦しいのだが…」

「道中の護衛?」

「お願いできないだろうか?」

「行先が王都ならいいですよ。あの荷物も王都に運ぶんで。」


私は指名された男たちを自分の荷馬車に乗せて、後は殺して道の端に避けておいた。そして気絶している御者を起こして、王都へと向かった。王都へ入る検問所で門番が。


「こ、これはウォーレン陛下!守護騎士の方々はいかがいたしました!?」


陛下…向こうの身元を全く尋ねなかったが、王様だったのか…カルマ値的に悪い人ではないのはわかるけど、ちょっと面倒くさそう…と思ってしまう。


「道中で暗殺者に襲われ、守護騎士のものは命を散らしてしまった。我々の後ろについてきている荷馬車の女性はここを素通りさせて構わない。我らの命の恩人だ。」

「はっ。」


素通りできた。私は門の中にいた兵の一人にお願いした。


「ちょっと陛下?に頼まれた荷物を運ぶ予定が出来てしまったので、ノルン鉄鋼所に納品が少々遅れる旨伝言を頼まれてくれないでしょうか。」

「はい!」


王様の命の恩人だけあって私の扱いも丁寧だ。

私はお城までに馬車でゴトゴトついてった。あんまりのんびりしていると手足を切り落とされた暗殺者が出血多量で死んでしまうからだ。私は城について速やかに彼らの傷口を焼いて処理してもらった。あとの拷問と自供はお城のものにお任せする。


「では私は仕事があるので失礼します。」


城を辞そうとしたとき、ウォーレン王と呼ばれていた人に呼び止められた。


「後日改めてお礼がしたいのだが、名は何という?どこに住んでいるのかね?」

「別にお礼とか要らないですけど。」

「いやいや、一国の王を救っておいて礼をしないなど前代未聞。迷惑かもしれないが、礼をさせてくれ。」

「はあ。」


まあ、向こうにも都合があるよね。私は名前と住所を告げた。

そのあと、予定通りノルン鉄鋼所に鉄鋼を届けた。


「兵が全力で駆けてきてびしっと伝令なんてするから焦っちまったぜ。」


ノルン鉄鋼所の親方は笑っていた。荷馬車がなあ…血まみれなんだが、これは大丈夫なんだろうか?乾けば大丈夫…だよね?



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