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職業

雪が魂の回収をしていなかったので、死んだ男の魂は俺が回収してから、一休みする為にお馴染みのコンビニに向かった。


「兄ちゃん、此処には服ないね」


「あ〜そうだな、向かいの通りに服屋があったからな、そこから調達するか、下着は此処のを貰って行こう」


金髪男の魂であれだけ痛かった体も回復した。

ビルに向かう途中で手頃なゾンビを倒して回復したんだが、完全回復はしなかったので、魂による肉体回復も色々と制限が有るらしい。


「兄ちゃん、なんか凄いオシャレな服屋だね」


「まあ、無難なのを選べばいいさ」


俺は試着室で破れた服等を脱ぎ、体を綺麗なタオルと水で拭き、適当に選んだ新しい服に袖を通した。


「兄ちゃん!僕も着替えるから!」


雪が服を持って試着室に入って行った、暫く待つと試着室からでてきたのだが。


「どお、兄ちゃん!」


「いや、ダメージジーンズはダメだろ」


「なんでー」


「肌が守れないだろ、半袖もダメだ」


「はーい」


雪は残念そうな顔で服を選びなおして試着室に戻った。

気持ちはわかるがな、夏だから気分的には半袖にスカートを履きたいんだろう、ここはメンズだからスカートは無いが。


「ねえ、兄ちゃんはさ、悪い事したく成らないの?」


「今はならないかな」


試着室の中から雪が問い掛けてきた、悪い事……か、確かに俺はかなり強い力を身につけたんだよな。


「なんで?あのコンビニの魔法使いの人とか悪い事沢山しようとしてたのにさ」


「雪がいるからだよ」


「えっ」


「雪の前では、良い兄ちゃんでいたいのさ」


「そっか!」


元気な返事が返ってきた、雪は俺の答に納得してくれたらしい。


雪が試着室からでてきたので、今後について話そう。


「雪、線路からかなり離れたし、このまま高速道路を使って東京に行こうか」


「そうだね、今は車とか動かないし、高速は事故車とゾンビで賑わってるだろうけど」


そうだ、本来みんな自分達の安全やライフラインの確保に全力を尽くすのが普通なのだろう、だがそれでは足りない、あの神様の夢を信じる信じないは別にしても、俺達は運良く戦闘力を強く出来る方法を知ることが出来たのだ。


「まあ、強くなるためにはなるべく沢山のゾンビを倒して魂の回収しないとな」


「うん!兄ちゃん僕も強くなるよ!」


「でだ、強くなる為には自分が何をできるかを知る必要がある」


そう今回の相手は人形遣いというジョブを全力で生かしていた、恐らく一定以上の魂を回収した人間はジョブを獲得して、そのスキルを操れるのだ。


「僕は多分魔法剣士だよね、剣が無いと魔法使えないし、剣術っていうのかな?何となく剣の動かし方も分かるし」


「ああ、問題は俺だな」


俺のスキルは『加速』だがそれだけではイマイチ分からない。

木刀も使っているが……使ってるだけ何だよな、武器に魂を込めるのは出来るんだが。

雪は最初から模造刀に魂込めてたので、俺も真似してみたら意外と簡単に出来たので、少なくとも近接戦のできるジョブだと思うんだが。

木刀の動かし方がイマイチ分からないから、剣士とかサムライでは無いと予想はできる。


「兄ちゃん、試しに斧とか、槍とか持ってみたら?」


「と言ってもな、そういうのはなかなか入手が難しいんだよな」


実際斧はホームセンターとかにあるんだろうが……。


「ホームセンター等の施設は人が縄張りにしてるのが殆どの筈だ、色々な道具が有るし、そこに行って貴重な武器の『斧下さい、でも此処は守りません』なんて言えないだろ」


「それもそっか!僕達は強くなる為に東京目指してるんだもんね!」


雪は元気だなー、しかし俺のジョブか、加速出来るし投擲も出来たしアサシンとか忍者かな?

でも手裏剣とか何処にでも有る物じゃないだろ、忍者とアサシンならイメージ的には気配遮断とかだろうけど、出来ないし暗視は雪もできたから違うと思うんだが。


結局考えても分からなかったので、休憩を終えて再び高速道路目指して歩き出した。






「やっぱり盛大に事故ってるな」


「……高速道路だもんね」

高速道路の料金所は沢山の車が事故を起こしていた。

ひしゃげた車に折れた遮断機、さまようゾンビは異変による狂気を充分に感じさせた。

だがこの光景にも慣れてしまったのだ、琴線に触れる物は確かにある……だがそれ以上に俺は強くならなければ成らない、道は切り開くものだ。

料金所周りのゾンビを倒して高速道路を観察する。

やはりスピードを出していたんだろうか、夏休みという事もあってか、結構な車両が事故っていた。


「じゃあ左右の往路と復路に別れて進もうか」


「OK〜」


返事をした雪と別れて、中央分離帯を挟んだ往路と復路を分担してゾンビを倒す事にした。


雪を気にしながら道を進んでいく。


ゾンビを倒して魂を回収する、戦闘は大分楽になったな、強くなったのも有るだろうが、ゾンビの攻撃を受けても自分達が感染しないのは楽に感じる。

ゾンビが感染するならかなり最初の方で感染して、とっくにゾンビになっている、死んだ人間がゾンビになると考えて間違いないだろう。

後あの人形遣いが強かったのも有るな、それに比べたら高速道路のゾンビはかなり弱い。

雪の方も見てみる、やはり高速で戦闘をしながら同じように魂を回収している。

子供のゾンビも中にはいるが問題無く倒しているようだ。


しかし綺麗に模造刀を振るってるな、ゾンビがキレイに両断されたり、首を飛ばされたりしている……模造刀なのにな。

それに比べ俺の木刀による攻撃を受けたゾンビは、粉砕、爆砕、超グロイだな。


ずいぶんと日が暮れてきた、かなり移動したし、そろそろサービスエリアにでもよるか。


「雪ー、次のサービスエリアによって休憩しようか!」


「OK〜分かったよ兄ちゃん!」


大声で反対側の道路にいる雪に呼び掛けて、休憩をとる事にした。


サービスエリアの駐車場に入ると、特徴的なバイクが目に入った。

剥き出しの車の荷台に停めてあるのは、子供の頃にテレビで見ていた特撮ヒーローが乗っていた、バッタを模したバイクであった。



「兄ちゃん!アクセルホッパーだよ!格好いいね!」


「ああそうだな」


正義の味方か……小さな頃は好きだったな、いや今でも憧れているんだろう。

せめて俺は、雪だけは精一杯守ろう。


「兄〜ちゃ〜ん、中にはいろ〜」


「おう今いく」


雪から声が掛けられた、俺は随分と真剣にバイクを眺めていたらしい。


雪に続いてサービスエリアの中に入って行った。

店内には人は居らず、食料等があまり置いてなかった、恐らくここに避難して来た人達がもっと安全そうな場所に逃げるために、出来るだけ持ち出したんだろう。


「兄ちゃん!ここはかなり綺麗だね!」


「ああ、死体もないし建物も壊れてないな」


地形的にモンスターが出にくい場所何だろうか?

ゾンビも高速道路の方には結構いたのだが、サービスエリア内には死体は無かった。

食堂の長椅子を平行に二つくっつけて、簡単なベッドにする。

寝そべって目を瞑る、雪も近くの長椅子で同じようにして横になっている。

肉体的には疲れてはいない、強化された体は食事どころか水分すらとらなくてよさそうだ……だがまぁ心は別だ、雪も表にはだしていないが、かなり疲れているように見える。

あの人形遣いから何か感じるものでもあったのだろうか……せめてゆっくり寝むれる時間を過ごしてもらいたい。


目が覚める、スッキリした頭で店内の時計を確認した。

五時間程睡眠をとれた、雪はまだ寝ている。

俺は雪を眺めながら雪が目覚めるのを待った。


「おはよー兄ちゃん」


「おはよう、と言ってもまだ三時だけどな」


深夜、まだ良い子も悪い子も寝ている時間である、お互いに寝たまま会話を続ける。


「なんかスッキリ目が覚めたんだ、初めてかも」


「雪は寝ぼすけさんだからな」


「兄ちゃんはいつも朝早いよね〜」


なんて何気ない会話を少し楽しんで俺達は起き上がった。


「そうだ兄ちゃん!」


「なんだ?」


「アクセルホッパーに少し乗りたい!」


「動かないと思うぞ?」


異変が起きてから車やバイク等が走っているのは見た事がない、電気が付いているのはコンビニで魔法使いが何やらしていたと思われるのを見た位だ。


「いーの!兄ちゃんも跨がってみるぐらいしてもいいよ!」


「ああそうだな」


駐車場にでて、雪が荷台からアクセルホッパーを下ろす。

バッタを模した緑のボディに赤色のベッドライト、車両ナンバーが付いて無いのを見るとサーキット専用に改造した物かもしれない。


「兄ちゃん!どう!格好いい?」


「ああ、格好いいよ」


小さな頃おもちゃのアクセルホッパーに跨がっていたのを思い出した。

あの頃はヒーローが本当に居るって思ってたな。


「兄ちゃんなんで泣いてるの?」


「ん……さあなんでだろうな」


思い出とか願いとか夢とか異変とか色々なモノがごちゃ混ぜになって俺は胸が締め付けられた。


「ねえ、兄ちゃんも乗ってみなよ!」


「ああ、乗るよ」


袖で涙を拭って、アクセルホッパーに跨がると不思議と体が熱くなる、頭の中にアクセルホッパーの動かし方が自然と浮かび上がった。


「そうか……俺のジョブは」


きっとライダー何だろう、コイツは貰って行こう。


「兄ちゃん!格好いいよ!」


「雪、コイツは動くぞ」


「本当に!」


俺は動きを確かめるために駐車場内を駆け巡った。


「兄ちゃん!バイクの免許持ってたの!?凄く上手いよ!」


「雪、バイクを動かすのに必要なのはカードじゃない、テクニックだ」


俺達は一路東京を目指す。

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