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道中


「そうだ……京じゃなかった東京に行こう」


「なんで?兄ちゃん」


ネタが通じないだと……コレが中学生と高校生のジェネレーションギャップか。


「やっぱり人が多い所の方が魂回収しやすいしな、日本で一番多いんじゃないか?」


「フーン、でも兄ちゃん身を守る位ならもう出来るんじゃない?結構強くなったし」


「まだ二日目だぞ、せめて7日目の終わりまでは強く成るようにしないと」


「そっか」


本当に分かったのか?雪は俺を信頼しすぎな気がするな、俺程あてにならない人間はなかなかいないぜ。


雪とそんな事を話しながら山道を歩きログハウスを後にした。


さて昼間コンビニで昼食を食ってから食事はとっていない。

真夜中の山中を抜け、通り掛かりの小さな村の脇をゾンビと犬と鳥という、もはやお馴染みになった感のあるモンスターを蹴散らしながら休憩の為のコンビニを目指す。


「雪、お腹空いたか?」


「それが空かないんだよね〜」


食欲が無い…というよりは、必要が無いといった感じであり、トイレとかも必要を感じない気がする。


「兄ちゃん、コンビニ見えてきたよ〜」


「おう」


取り敢えず考えるのを止め、俺はコンビニに向かって歩くスピードを上げた。



コンビニの前には40代位の男が一人立っていた。


「何だお前らは、此処は俺のコンビニだぞ」


どうやら威嚇されているらしい。


「地図が欲しいんですが」


コンビニに来た目的は地図である、まあ適当に東に進んで違うコンビニを探してもいいんだがな。


「当然タダでは渡せないな!」


まあそうだろう。


「じゃあいいです。雪、次行こうぜ」


「OK〜兄ちゃん」


コンビニを背に俺達は道を歩き出した……が、やはりというか背後から俺に向かって攻撃を放たれた。


おっさんの〝ファイア〟という小声が聞こえたと同時に俺はその場を大きく飛び退いた。


「チッ」


おっさんの舌打ちが聞こえた、そこそこ距離が離れているが良く耳に響く、五感が鋭さを増しているのだろうか。


「おっさん!一応言い訳位は聞いてやるぞ!」


怒ったり態度が悪かったりする程度ならまだ許せるが攻撃してきたら許す訳が無い。


「そっちの女を置いて行け、ここらは田舎だからな、若い女がいないんだよ、そうしたら見逃してやるぜ!」


よりによって〝ソレ〟か、現状俺は雪を守るために行動している、それをよく俺に向かって言えたもんだ!





「ガハッ」


おっさんが血を吐く。

俺は一瞬で激昂し、次の瞬間には『加速』して、木刀による突きをおっさんの心臓に放っていた。


おっさんの胸を貫通して突き刺した木刀を振りかぶり、既に息絶え死体になった物を駐車場の隅に放り投げた。


「兄ちゃん!偶に体が紅く光るよね?なんで?」


「ん、そうだな多分加速した時に紅くなるんだろ」


「へ〜」


人を殺しても何とも思わない……既に俺達は壊れているのかな。



先程までコンビニは電気が点いていたのだが、おっさんが死んだ時からまた灯りが無くなった。

恐らくおっさんは魔法使いで魔法で何かしていたんだろう。

これまでのパターンからいって、人それぞれにゲームでいうジョブが設定されている事が考察出来るが……


おっさん・魔法使い・女ねらい……まさかな、人間あんな風にはなりたくないな。



コンビニの自動ドアを手動で開けて中に入る。


「兄ちゃん、さっきのおじさん僕なんかにエッチな事したかったのかな?」


「ん、そりゃそうだろう雪は可愛いしな」


ショートヘアだし幼い感じはするし胸も小さいが、それでも可愛いく感じるのは身内フィルターが掛かっているせいかな。


取り敢えずシャツとパンツを着替えたい、かなり血で汚れている。

血が意外と粘着質な事なんて知りたくない事だったな。



「兄ちゃん、奥で着替えて来るからね」


「おう」


「覗いてもいいよ?」


「バカ言って無いで早く着替えて来い、俺も早く着替えたいんだ」


そんな会話をしながら雪はコンビニの奥に商品のシャツ・ショーツ・タオル・水を持って引っ込んだ。


「まったく」


俺は雪を守るんだ、そんな事するワケ無い。


雪と交代で事務所に引っ込み、服を脱ぎ体を水とタオルで綺麗にする、汚れは酷いが体に有った古い傷等が無くなっている、俺は男だから気にしないが女性は嬉しいのかな?


着替えを済ませ店内に戻る、事務所から持ってきた清掃用のアルコールで木刀を綺麗にする。


「雪も模造刀を綺麗にしとけよ」


「ん〜」


雪はアイスを食べている、あのおっさんが電気を魔法でなんとかしていたからまだ溶けてないんだろう、今後アイスを何時食べれるか分からないしそれは別にいいんだが、雪はビールも飲もうとしていた。


「こら雪、ビールはダメだぞ」


「えーー兄ちゃーん、ちょっとだけなら……ね」


「そんな甘えた声出してもダメだ」


「なんでー」


俺はビールを雪から取り上げるとレジカウンター内の流しに放り投げた、まだ栓を開ける前だったので中身は零れない。


「兄ちゃん、ちょっと怖いよ?そこまで怒らなくても」


「酔ったらどーする、今は命が掛かってる状況だぞ、それが酔っ払って死にましたじゃ流石に怒る」


「兄ちゃん……ごめんなさい、ただちょっとお酒ってどんなかなーって、こんな時だし少し位いいかなって、お酒飲むと酔った間は嫌な事忘れられるってゆうし」


「ああ分かってる、それでもダメだ、もっと強く成ってからな」


俺達は安全を確保するために戦って強く成ろうとしている、そのためにストレスが溜まってしまうのも仕方ない、雪が辛かったんだろう事も分かる。


「兄ちゃーん、そこ動かないでね?」


「うん?」


雪は地面に座り込んでいる俺に抱きついてきた。


「どうした、そんな甘えて来て」


「兄ちゃんがお酒捨てたから、その代わり」


「そっか」


俺も雪を抱きしめ返してやる、小さい頃は良く抱きついて来てたな、いつ頃からかそんな事も無くなった、この温もりを俺は全力で守りたい。



俺達はコンビニで少し休憩してから地図を持ち、再び夜道を歩き始めた。


「取り敢えず近場の駅に向かって、その駅の線路を歩いて東京に向かう」


俺が今後の進路を雪に話し掛けるが



「兄ちゃん!星が凄い綺麗だね!」


まったく関係ない言葉を掛けられた、

言われて仕方なく夜空を見上げる。


「おぉ」


思わず感嘆する声が出た。


そうか、今世界中は電気が一部の例外を除いてまったく光らないのだ、そのおかげで、ここまで星がこんなに沢山綺麗に見えるとは、昔の人が星に様々な想いを馳せた事も理解出来る気がする。


「今まで必死で気づかなかったな」


「そうだね兄ちゃん、こんな世界に成っちゃったけど、少しは良いこともあるんだね」


道中のモンスターも少なかったので、余裕を持って駅にたどり着けた、

恐らくモンスターテイマーと魔法使いのおっさんが近場のモンスターを狩ったのだろう。


駅と言ってもそこまで大きく無い、田舎の駅はビックリするくらい小さくて何もないのだ。


「兄ちゃん、線路を歩くんだよね」


「ああ、あっちの方向だな」


俺達は昔見た映画のワンシーンの用に、肩を並べながら揃って歩き出した。


三時間位だろうか、歩くスピードも早く、疲れもない、やはり魂のおかげで肉体が強くなり軽いジョギングみたいに線路を進む。


途中電車が横転したり、電車に車が突っ込んでいる事故現場が有ったり等したが、片っ端からゾンビを排除して回って行った。


「やっぱり、生き残りは居ないみたいだね」


雪がポツリと言葉を漏らす、今は子供のゾンビも雪は殺せるようになった、苦しそうな顔をするからなるべく俺が倒すようにしているが、やはり完璧とは行かない。


「生き残った人がいたらとっくに避難してるさ」


「うん」


そんな道中を夜通し歩く、魂の収集も上手く行っている、先に進めている筈だ、順調な筈だが……それでも足が重く感じるのは……気のせいじゃないと思う。

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