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犯人は誰だ?

転移で移動させられた先は、よくゲーム等で見る荘厳な洋館と思われる大広間だった。

吹き抜けの二階まで続く階段に、床一面に高級感のある赤絨毯、豪奢で巨大シャンデリアと所々にある絵画に胸像に壺等の美術品、目には映らないが恐らく背後にある玄関も美麗な造りになっているだろう。

さてゆっくりと自分の転移した場所を観察できたのには理由がある。

転移した瞬間、場所の確認よりも先に視界内に人間が5人映ったのに焦った俺、当然即座に逃げる為に体を動かそうとしたのだが……体は動かなかった、どうやら他の人達も同様に動けない……らしい。

声も出せないので、他の5人を観察する。

配置的には等間隔でぐるっと円形に立たされていて、まず俺から見て右手側から順に詳しく観察していく。


二十代前半位の男性で短めの金髪にゴールドアイ、赤のインナーに半袖の青いポロシャツに青のジーンズ、赤の紐靴だ。

ぱっと見武器は持っていないように見えるが、若干片側の胸元が膨らんでいるので拳銃を所持していると思われる。


次、三十代位の男性で若干寂しい頭髪をしている、髪色はブラウンだ。

瞳はグリーンで、黄色のインナーにグリーンの長袖のシャツ、茶色のスラックスに革靴、武器は……棒か?まあ魂を込めれば武器の性能はかなり上がるので、リーチを優先して選択したのだろう。


三人目、丁度正面にいる人物は若い女性だ。

髪は赤っぽいロング、瞳はブラウン、褐色の肌からして恐らくは黒人だろう、そして巨乳だ。

服装は白色のTシャツを裾で結んであり、その巨乳を強調している。

下は青のローライズジーンズでへそを出し、そのくびれた腰を惜しげもなく出している。

靴は緑のローファー、武器は両手にメリケンサックを装備している。


四人目、赤いフルフェイスのヘルメットに黒のバイザーで人相が判別出来ない、服装は黒地に青のラインが入ったボディアーマーでそれに合わせてかズボンも黒で丈夫そうな物、靴もデカイ編み込みブーツ、ミリタリーグローブも着用している。

武器は腰に長さの異なるナイフが三本とトンファーを右手に握っている。


ラスト、俺の左手側には恐らくフィリピン系の男性で二十代、短めの黒髪にブラウンの瞳、黄色のアロハシャツにクリーム色の半ズボンとグリーンのサンダル。

武器は……マラカスか?何とも場違いな姿だがここまで生き残った人間なので決して油断は出来ないだろう。


さて、転移してから十分は経過する、そろそろ神側から何らかのアクションが有ってもいい頃だろう。


―――――――――――これよりルールを説明する、お主達には知恵比べをしてもらう。

体が動くようになってから、24時間以内にお主達の中の殺人の『犯人』を特定してもらう。

館の中は自由に移動してもらって構わない。

殺人犯を特定したらどこでもよいので『犯人は〜』と犯人の名前をフルネームで宣言する。

答えが合っていればゲーム終了、その人物が次のステージに進める。

回答権は一人一回、間違えた場合は下界へ戻ってもらう。

次に進めるのは一人のみである。

―――――――――――



例の男のような女のような子供のような老人のような、不明瞭な神の声でルール説明があった。

殺人の犯人を特定するゲーム、しかも犯人のフルネームを入手しなければクリア出来ない。

当然『鑑定』系のスキル持ちがこの中にいれば、そいつは一歩リードできる、殺人が起こった瞬間、五分の一の確率に賭ける事も出来るのだ。

神は殺人犯の特定をしろと言ったので、この洋館の中に殺され役のメイドか執事が居るのも予想できる、館を自由に移動していいと言ったのも死体を見つける為だろう。

普通に考えればこの5人の中に神の使いがいて、そいつが気付かれないように殺人を起こすと仮定が出来る。

また犯人名の宣言もタイミングを考えなければいけない、単純に最初に犯人を宣言した人がいたとして、その解答が間違っていた場合、次の解答者の正解の確率が上がるのだ、但しその宣言を聞いていた人間に限られるが。

神の使いが最初にワザと間違えて、自分を容疑者から外す事も考えられるので犯人名の宣言を聞いても確率は四分の一になるだけだが。


今考察出来る事はこんな所か、だが……何かこのゲームには違和感が有る、神のルール説明に穴が有るように感じるのだ……もう一度神の宣言を思い出す。



これよりルールを説明する、お主達には知恵比べをしてもらう。

体が動くようになってから、24時間以内にお主達の中の殺人の『犯人』を特定してもらう。

館の中は自由に移動してもらって構わない。

殺人犯を特定したらどこでもよいので『犯人は〜』と犯人の名前をフルネームで宣言する。

答えが合っていればゲーム終了、その人物が次のステージに進める。

回答権は一人一回、間違えた場合は下界へ戻ってもらう。

次に進めるのは一人のみである。






ふむ……改めて考えるとこれは知恵比べで、犯人当てのゲームだというのが分かった。

そう知恵比べなのだ、俺は勘違いしていた、運でも知識でも戦闘でもスキルでも無く、知恵を比べるのがこのゲームのキモなのだ。



体が動くようになった瞬間、正面の女性が声を出す。


「取り敢えず自己紹介でもする?この中に犯人がいるんだから、全員のフルネームを知ってないと犯人名の宣言も出来ないでしょう?」


それに応えるように左手側のマラカス持ちが喋る。


「そうだな、神の話だとこの中に犯人が居る筈だしね」


早速仕掛けてきたな、『鑑定』を持っている事を黙っていればそいつはみんなより一歩リード出来る、そして犯人宣言にフルネームは必要不可欠だ、この時点では、犯人は殺人を起こしてはいないが、殺人が起きた瞬間、名前を偽った人物を指定すれば解決出来る……と考えているのだろう。

自己紹介を切り出してきた正面の女性とマラカス持ちは『鑑定』を持っていると仮定出来る。

ふむ、ここはおとなしく従っておくか。


「では俺から、日本人で高校生の九条大助だ」


シンプルに自己紹介した、それに一つ気になる事がある。


「ほう、日本人か!日本人なら見て分かると思うが、俺はアメリカ人でハワイ在住なんだ!名前はヨーク・ウッドマン!大助は英語が得意なんだな!俺は日本人向けの通訳をやってるんだが、大助程上手い日本人は見たことないぜ!」


俺にはマラカス持ち改め、ヨークの声は日本語に聞こえる。

やはり言語は神の神秘的な何かで相互に翻訳されて聞こえてるらしい。


「私はイェーガー・アヒム、無職だ。それと私には二人の会話は綺麗なドイツ語に聞こえたのだが?」


続いてフルフェイスのナイフ使いの男が名乗る、くぐもっただみ声で男性だと判別できる。


「私はブラジル出身のマリア・セナ・ダ・シルヴァよ、よ・ろ・し・く♪私の耳にはみんな綺麗なポルトガル語に聞こえるわね、きっと神様がコミュニケーションに困らないように気を使ってくれたのね」


次は自己紹介を切り出した正面の巨乳を持つ女性、色気のある声色をしているな、会話は恐らく彼女の言った通り神様の仕業だろう。


「次はわしだな、ジョージ・ジョブス、職業は駅員だ、異変が起きてからは不思議な事ばかりだなもう慣れたよ」


ハハハと力なく笑う俺から見て右手奥の頭髪の寂しい男性の自己紹介だ。

彼の言った通り、異変が起きてから色んな変化が有った、外国人とこれだけの意思疎通が出来るのは、異変を起こした神のおかげ何だろうが……できるなら異変以前に欲しかったな、世界共通言語。



「最後は俺だな、職業は一応警察官、名前はベル・クリフだ」


最後は俺の右手側の金髪イケメン男、これで全員の自己紹介は終わった、後出来る事は洋館の探検位か。


「この後どうするの?私は取り敢えず洋館の探索位はしておきたいのだけど……それに私達以外にも人が居る可能性もあるわよね?」


マリアは探索をしたいらしい、それには俺も同意見だが。


「なら別々に行動しないか?犯人を推理するにしても、まず犯人が事件を起こさないといけない、全員で集団行動してたらこの中の犯人も活動出来ないだろう?それにコレは勝負だしな、みんなで仲良くするのが目的じゃない」


こうして俺はメンバーの個別行動を推奨した。


「そうだな、それにほら、あっちを見てみろ」


ウッドマンが指し示す方向を確認する、メイドと執事が普通に廊下から現れた。


「客人方を、それぞれのお部屋に案内するように、主に言われております」


老執事さんが俺達の会話がきりのいい所で声を掛けてきた、此処までは規定路線なのだろうか?ともかくこのゲームのメンバーはそれぞれ、執事やメイドに連れられて自室となる部屋に案内された。






「此処が九条様のお部屋でございます」


俺を部屋に案内したのは男性の執事だ、最初はメイドさんが案内しようとしていたのだが、俺はイケメン執事に変えてもらった。


「では、何か御用が有りましたらそちらのベルを鳴らして下さいませ、出来うる限り対処します」


それぞれのメンバーは、大広間から方角のちがう六方向に伸びた廊下の先に案内されていた、これも『犯人』が活動しやすくする為の神側の工夫だろう。


「じゃあ一つお願いがあるんだがいいかな?」


俺は早速案内された部屋の中でイケメン執事に頼み事をお願いする。


「なんなりとお申し付け下さいませ、出来うる限りお応えします」


「簡単な事だよ、後ろを向いて動かないでくれ」


「はい、承知しました」


イケメン執事は疑問を挟まずに後ろを向き直立不動になった。









そうして俺は模造刀でイケメン執事の首を落とした。








「犯人は九条大助」


そう力強く宣言する。



「お見事です、この犯人当てゲームをこんなに短時間でクリアなさるとは」


ゲームクリアを宣言したのは首を切られたイケメン執事だった、体だけ動かして頭を首に乗っけて普通に復活したぞこいつ。


「色々ヒントが有ったからな、神の説明もそうだが執事さん達が登場した時点で確信した、つまりは殺しやすい獲物を用意したぞ、殺しやすい環境も用意したぞって言ってるような物だからな」


それぞれを方角の違う別の部屋に移動させたのは露骨だった、他にも気付く人がいないか若干焦ったが、無事に俺が一番でクリアする事が出来たので良しとしよう。


「九条様、一つ伺っても宜しいですか?」


「なんだ?」


何か変な所でも有っただろうか?


「何故メイドから私に案内を変更なされたのでしょうか?あのメイドの方が仕留め易かったでしょう?」


そんな事か。


「女は斬り辛いだろ?死なないと分かっていてもさ」


「なる程、質問に答えて頂きありがとうございました、九条様が勝ち抜く事をお祈りします」


「そうか、まあありがとうよ」


ここは天界で、呼ばれた一番最初に死んでも下界に戻るだけだと説明されたのと、流石に本当に死ぬのなら、ある程度の怯えがあのメイドや執事達にも発生するだろうと考えられたのだ、だが俺が観察する限りそんな事は無かった。

だからこそ普通に攻撃する事が出来たのである。


こうして犯人当てゲームは幕を閉じた。

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