トーナメント・第三試合
三回戦、転移にも慣れ、即座に視界内を確認する。
どうやら周りに敵は居ないようだ。
続いてフィールドの確認をする、海と砂浜と山と川、太陽も普通に有る、気温は春の陽気を想わせる程度だ。
島なのか?どの程度広いかは分からないが、この島で敵を探すのは天然の障害物が多く、視覚と聴覚で索敵する俺には骨が折れそうだ。
敵から隠れる為に木々の合間を移動しながら索敵をする。
相手も俺と同様に視覚と聴覚で索敵するなら、ある程度は効果がある筈だ。
索敵系の魔法ならこの行動に意味は無いができる事はやっておく、何が幸いするかは分からないのだから。
そんな風に転移から一時間も経とうとする頃、狼煙が上がった。
どうするかな……敵の誘い、転移から一時間だ、罠を仕掛るには十分だろう。
しかも敵が居るとは限らない、罠だけで俺を倒す計画かもしれない。
だが敵の情報を掴むチャンスかもしれない、相手のジョブや性格、姿が見えれば武装も確認できる可能性がある。
少し悩んで、結局慎重に偵察する事に決めた。
「はっ?」
隠密行動中にも関わらず、思わず声を出してしまった。
現在、狼煙の上がっていた場所、砂浜を遠目に観察しているのだが……。
敵は堂々と仁王立ちしていた、チェーンソーと白いマスクをして。
えっマジ?俺ファンなんだけど、実在したの?ヤベーよ!だって基本不死身じゃん!あの怪物!キャンプ場に来るリア充カップルを問答無用でぶち殺すお方だぜ?どうするの!落ち着け!冷静に冷静になるんだ!
まず当然『アレ』は偽物だ、うん、実在する訳ない、映画のキャラクターなんだからな!
とするなら『アレ』はただの完成度の高いコスプレだろう。
だがジョブやスキルでなにかしらの強化の条件の為にあのコスプレをしている可能性が高い。
つまり、如何にあのコスプレを脱がすか?
という事に全力を注がなければならないだろう。
コスプレキャラクターの能力を再現する、そんなスキルやジョブだったらかなり厄介だ。
いやまて、まだ混乱してるな!脱がす事が目的じゃねぇ!倒す事が目的なんだよ!大体俺のジョブはライダーなのになぜホッパーが持ち込めないんだ、そりゃホッパーは拾い物だが、自己修復、自動操縦、知性、バイクとしての性能等、含めて、最高の戦友と言っても過言ではないのに。
「雪……ホッパー……会いたいな」
思わず呟くと、なんと目の前にアクセルホッパーさんが現れた。
えっ呼び出せたの?
というか、何故こんなに混乱してるんだ?
さっきから自分の思考がおかしい……まさか!!
そう俺は既に相手の術中に嵌っていたのだ。
『ヤツ』のは相手の思考を乱すスキルか!しかも長引くと更に強くなるこの威力!ヤバイと感じた時には『ヤツ』はチェーンソーを振りかぶりながら接近して来ていた。
「迫真のモノマネだな!」
俺は捨て台詞を吐いてから久しぶりにアクセルホッパーに乗り、間一髪逃げだした!
どうするかな……視認するだけでパニックになるのはかなりキツい、俺は今まで思考しながら戦ってきた、雪なら真正面から戦って倒せる気がするんだがな。
つまりはパニックになっても戦える状況を作らなければならない。
手持ちでは対人トラップを作っても、強化された人間相手にはたかがしれてる、ジョブやスキルにトラップ関連がある訳でもないし。
とすると一撃離脱、しかも時間をかけるとパニックが酷くなるから、高速で攻撃を行う位しか方法が無いな。
だがホッパーが居る今ならそれが出来る。
「頼むぞホッパー」
エンジン音で返事をするホッパーを撫でる、こんな状況だがホッパーが居るだけで心強い。
猛るエンジン!吼えるエキゾーストノート!
俺はアクセルホッパーを高速で飛ばし片手で運転しながら接敵する!
『ヤツ』はチェーンソーのエンジンを吹かしながら、正面から迎え撃つようだ。
「オッラァ!」
そのマスクかち割ってやらぁ!
一瞬の交差、『ヤツ』のマスクを右手に持った模造刀で切り壊した感触を確かに感じた。
『ヤツ』のチェーンソーはホッパーのフロントカウルとヘッドライトを傷付けたが、戦闘に支障はなさそうだ。
高速ターン、再び『ヤツ』を視認した、マスクの下はイケメン金髪青年だったらしい。
まあ関係ないね!
「イケメン死すべし!」
アクセル全開から再びの接敵、全力でイケメンのチェーンソーと模造刀で切り結ぶ!
火花を散らしながらも、一瞬の鍔迫り合い、模造刀を滑らせながら再び距離を離す。
高速ターンから三度目の接敵、
「オラァ!」
三度交差した剣閃、チェーンソーと模造刀は再び火花を散らし、そちらに集中していた『ヤツ』は左手の木刀による不意の追撃で致命打を首に受けて死亡した。
「ホッパー、ありがとう」
そうアクセルホッパーは只のバイクではない、自分の意志で動ける、俺が片手運転してる振りをする作戦を、事前に話せば理解してくれる、正に戦友だ。
今回は特に消耗も傷も無く、終わってみれば完勝だった。
まあホッパーは傷付いたが、しばらくすれば自己修復で回復出来るだろう。
後はイケメンの荷物を確認するか。
やはり、リュックは近くに置いてあった、隠してもいないので完全に此処で待ち受ける体勢だったのだろうか?
中にはコスプレ用だろうコスチュームが入ってる。
ふむ白いマスクの死神にレーザーのでる一つ目タイツ人間、格ゲーの三本爪白マスクに、これはオペラ座のファントムマスクと黒マントかな。どうやら何にでもコスプレできてその能力を使用出来る訳では無かったようだ。
あまり俺のリュックにもスペースは無いので、衣装以外で入ってたナイフをいただいた。
さて、そろそろホッパーに気になってる事を聞くか。
「……それでホッパー、雪と坊主は無事なのか?」
やはりそれが一番気になる、ホッパーはチカチカヘッドライトを点滅させている、その返事にホットする、どうやら無事のようだ。
因みにイエスなら点滅、ノーならハンドルを左右に振るというルールをアクセルホッパーと以前、会話する為に交わしている。
「ホッパー、準備出来たから魂を吸っていいぞ」
俺の声に反応してホッパーは魂を回収、ポーション的役割の為に魂を保管して、俺の体の回復の為に残りの魂を俺に譲渡した。
傷は軽いので、魂もそれ程減る事なく無事吸収。
再び光に包まれて俺は転移した。




