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探索

玄関前にて装備を確認する。俺は黒のジーンズに薄い長袖のシャツ、そして修学旅行の時に買った木刀。


雪は上下長袖のジャージに、週刊少年誌の後ろのページによくある、通販で購入した黒い刀身の模造刀、更に指貫グローブ……雪はなにを買ってるんだ。


取りあえず一度は戻るつもりなので、食料や水は置いておく。


玄関を出て鍵を閉める、道路に出て左右を確認する。あちこちで車が事故っているようだ。


車に近付こうと歩くが、先ほどとは違う犬が襲ってきた。


「オラァァァ!」


犬の体当たりに合わせて右足で犬の腹を蹴り上げる、犬の浮かんだ体に木刀で横一閃、犬は石垣に叩きつけられて血みどろになりながら死んだようだ。

犬の体を確認する、暫くするとやはり拳サイズの白い炎が現れた、俺がそれに触れると、炎は体に吸い込まれて消えた。


感覚的な物だがやはり体が強化されている気がする、眼鏡の度数がいきなり合わなくなったので、視力も強化されているようだ、俺は眼鏡を外して折り畳み、胸ポケットにしまった。


「兄ちゃん!何時の間にそんなに強くなったの!」


「ついさっきだ」


「本当に?」


「ああ、犬を倒した後に白い炎が出て来るから、それに触れると強く成れるらしい」


「兄ちゃん!じゃあ次倒したら僕に触らせてよ!」


「ああ、それとあんまりこの事は言いふらすなよ」


「何で?」


「人間同士で争いが始まる可能性がある」


「分かった!」


まあ何時かは起こるだろうけど。


雪と会話しながら車に近づいたら、いきなり車のドアを破りながらゾンビっぽい奴が現れた。


「あぇうああああ」


ゾンビはそんな雄叫びを上げながらこちらに襲いかかってきた。


ふっと息を吐きながら一閃、木刀でゾンビの体に向けて袈裟切り、更に体を一回転させながらゾンビの胴体に追撃の横一閃、アスファルトにゾンビを叩きつけた。


「雪ー白い炎が出てきたぞ」


「兄ちゃん、容赦なさすぎじゃね」


「言ったろ普通じゃ無い事が起きてる、自分で判断するんだ」


実際かなり自分が凶暴になってるのは自覚している。

だが雪を守る為、何より自身を守る為にも、ある程度は狂気に身を委ねなければならない。


雪が白い炎に触れたようだ。


「おー本当だ!何か体の調子が凄い良くなった!」


「雪!カラスがくるぞ、背中を任せる!」


カラスが2羽づつ二手に別れて、俺と雪を挟み撃ちにしてきた。空から嘴で刺すつもり何だろう、かなり早いスピードで突っ込んで来たが、二羽纏めて斬り落とす!


カラスの攻撃にタイミングを合わせて、カラスの体当たりをかわしつつ、カウンター気味に一刀で斬り伏せた。


「兄ちゃん!そっちに行った!」


雪に任せた二羽の内一羽がこちらに来る、が俺は木刀を振り切った後でタイミングが悪く横腹を刺される、カラスは一旦離れて空に逃れると、再び俺に向かって体当たりしてきた。


「一石必当!カラス殺し!」


雪が叫びながら石を投げた、見事にカラスに当たり止めになったようだ。しかし一石必当って……只の投石やん。


「雪、助かったよ」


「兄ちゃん大丈夫!」


「ああ、痛かったけどそれだけだな」


あんな攻撃受けたら体に穴が空きそうなもんだが、防御も強化されているらしい。


その後も雪と一緒に凶暴化したカラスや鳩などの鳥類、犬に猫、車に乗っていたと思われる人のゾンビや、事故を見にきて殺されたと思われる野次馬のゾンビなどを片付けながら、白い炎を回収しつつ小学校に向かった。

小学校前の正門、夏休みだしまだ異常に気付かない人が多いのか、端から見て学校に避難している人はそんなに居ないように見える。

俺と雪は正門を飛び越えて中に入った。


校舎と外周を覆うフェンスの間を回る、途中に有る兎小屋をふと見ると、内から壊されていた。


「雪が卒業したとき兎は何羽いた?」


「知らなーい、僕バスケで忙しかったモン」


「そうか」


俺の時は6羽だったが、今は何羽かな。


プール、体育館、と回り最後に職員室に繋がる教員用の出入口から校舎に入る。


「兄ちゃん、靴替えないと」


「いやそのままでいい」


「えぇ先生に怒られるよー」


「今は緊急事態だ、怒られる位何でもない、裸足やスリッパは危険だ」


戦闘中にスリッパが脱げて、バランスを崩したりしたら危険である。


俺は木刀を雪に預けてから、職員室のドアを開けて中を確認する。教師が6人いる。


「失礼します、現在何が起こってるか分かるでしょうか?」


「おお、避難して来たのかね!……いや何が何やらさっぱりだよ、テレビもパソコンも電話もスピーカーも車もダメ、仕方ないから若い先生達が歩いて警察署に向かったよ」


応えてくれたのは50代位の男性教師、俺が通っていた時には居なかった教師だ。


「こんにちは後藤先生!」


「おぉ九条さん!こんにちは、しかしそんな危ない物持ってどうしたんだい」


「えっと、外は今モンスターが襲って来て大変なんですよ!」



どうやら雪は知り合いらしい、まあ血が付いた木刀を持ってれば、当然聞かれると思って木刀を雪に預けたのに、普通に入って来るなよ。


「それは本当かね?」


「えぇ、僕達が見たモンスターは犬・猫・カラス・鳩・ゾンビと各動物のゾンビです」


モンスターと言うよりは凶暴化だが、ゾンビはモンスターっぽい、恐らく各動物が争った後、死体がゾンビ化したのだろう。

しかしゾンビ化しない動物の死体も何体か見たので、何か条件があるらしい。


「うーむ信じられないな」


「事実ですよ、後、兎小屋が内側から壊されていたので、恐らく学校の敷地内に凶暴化した兎がいると思われます、兎は何羽飼っていましたか?」


「兎は3羽だが……しかし実際それが真実でも何も打つ手が無いな」


「せいぜい学校中の戸締まりと防火扉を展開する位ですかね」


「ふむ……では戸締まりをして回るかな、後は他に避難して来た人がいたら、こちら側の入口に来るように立て看板を用意しよう」


「ええ……この学校から離れれば離れるほど、避難者の生存率が下がるので、そんな所が限界でしょう」


俺と雪は出来る限り敵を倒して学校まで来た、後は兎の探索と自宅に戻って、防災リュックを取って来る位かな。


「まあ、実際に見れば分かると思いますので、双眼鏡を使って三階辺りから外を眺めて見て下さい」


「そうしよう」


会話を終えると、男性教師は鍵を持って廊下に出て行った。


「雪、一旦家に帰ろうか」


「OK!」


雪から木刀を返して貰い、教員用の出入口から今度は運動場を突っ切った。


運動場の途中で小屋から逃げ出した兎が、攻撃を仕掛けて来た。

地面を飛ぶように跳ねる兎は、今まで相手にした動物と違い、変則的な動きで攻撃がなかなか当たらない。


「オラァァァ!」


気合いを込めて運動場の砂を木刀で吹き飛ばす、驚いたのか、兎の動きが一瞬止まる。

その隙を逃さずに木刀で攻撃、兎を倒した。


「電光刀撃!サンダァーソォード!」


また雪が何か言いながら模造刀を振るってるな、と思いながら雪の方に振り向くと、本当に雷っぽいのが出て残りの2羽が焦げていた。


「雪さん、今のは何だね」


「兄ちゃん!見た見た!僕もよく分かんないけど格好良いでしょ!」


「そうだな」


兎から白い炎を回収してから、雪にどうやって電撃を出したのか聞く。


「イメージだよ、後は考えるんじゃない感じるんだ!」


「そ、そうか」


その場で雷をイメージしながら木刀を数回素振りをする……がダメ、俺には無理っぽい、まあ雪の戦闘力が高まったと納得しよう。


その後も家に帰るまでに、


「氷河一撃!アイスゥニィードル!」

とか


「炎焼斬撃!フレイムゥゥブレーイド!」


とか


「風爪音撃!ソォニックゥシュゥート!」


なんて雪は叫びながら残党を狩りつつ、家に帰った。

これで多少は小学校に避難する人の安全を確保できただろう。

しかし何故俺には出来ないのか解せぬ。

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