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狩り

東京と一言に言ってもかなり広い、他の都市の都心部に比べても東京郊外の人口は多いので、都心部に行かなくても魂集めは安易で大量に集めれる。


「兄ちゃん!そっち行ったよ!」


「了解!」


雪が討ち漏らした巨大ネズミモンスターを木刀でホームランにする。


「ネズミでけぇ」


先程からネズミモンスターが大量に現れる、しかも二足歩行する個体も中にはいる。


「ねぇ兄ちゃん!せっかく東京にきたし!余裕ができたらネズミの遊園地に行こうよ!」


雪はそんな事考えながら戦ってたのか。


「そうだな……ただネズミの遊園地は千葉にあるから少し遠いな」


「マジで!」


雪がショック!ってな顔で驚いている、まあ名前に東京ってついてるからな。


「ほら、手を動かしなさい」


少し止まった後再び雪は模造刀を振り始めた。

しかし雪は本当にモンスターをスパスパ切るな、只の黒い刀身の模造刀の筈なのに。


俺の木刀は相変わらず打撃武器で、『加速』を発動させている間だけ切る事ができる。

もっと『加速』を強くしたいなと思ってるが……現状は10秒程『加速』出来る状態で、魂を集める事によって『加速』のスピードがどんどん早くなってはいるが、効果時間をのばせたらな〜

そんな事を考えながらネズミモンスターを狩って行く。

コイツら、一体一体はさして強く無いがまさにアリや蜂の群体ように地を這いながら襲って来るな。


「雪、一気に焼き払おうかなんか嫌な予感がする」


「兄ちゃんもか、僕もなんか変な感じがするんだよね」


俺が前面に出て雪に魔法剣を使う為の時間を稼ぐ


「オラァ!」


木刀を一閃、地を這う巨大ネズミ達を纏めて吹っ飛ばす、倒す為の一撃では無いため巨大ネズミ達は大半が前方に吹っ飛んだだけである、だがそれでいい、後は雪の出番だ。


「炎撃広滅・ファイアァァーストォォォム!」


雪の振るった剣先から渦巻いた炎が出現、周りの巨大ネズミモンスターの悉くを焼き尽くしていった。


「流石だな雪」


「兄ちゃんもね!」


後ろから付いて来るアクセルホッパーがネズミ達の魂を収集、後で二人で分ける、それぞれに役割があるいいコンビネーションだ。


「兄ちゃん!そう言えばアクセルにはナンバープレートが付いて無いんだね?」


「ああ、改造車で撮影用とかサーキット専用の車両は付けない事も有るんだよ」


「ふーん」


雪の質問に答えながら道を進む……しかし此処までがネズミ達の罠だったようだ。

魂を回収する為に少し細い路地に入り進むと、目の前にはさっき戦ったネズミ達よりも更に巨大なネズミモンスターが前後の道を塞いできた、しかも小さなネズミモンスター達も道を埋め尽くすように現れた。


「兄ちゃん!不味いよ!囲まれたみたいだ!」



「逃げるぞ!」


雪に声を掛けると共にアクセルホッパーに飛び乗る、雪も飛び乗ったのを確認してからアクセル全開、前方のボスっぽいネズミモンスターを跳ね飛ばして大通りに飛び出た。


「ふぅー、間一髪だったね兄ちゃん!」


「休まずにここから追撃してくれ、雪」


「OK〜、氷針広撃!アイスゥゥゥスパァァァイク!」


雪の放った氷の魔法剣によって狭い路地にいたネズミモンスター達を今度こそ一網打尽にした。


「強かったね!兄ちゃん!」


「そうだな」


全てのネズミが群れ全体の為に動いていた、ボスネズミのスキルなのか、あるいは群れの為の自発的な作戦だったのかは分からない、分からないが心に感じる物が確かにあった。


………ファイヤボール………


強化された聴覚によりボソッと放たれた言葉を聞いた俺はとっさに雪を乗せたままアクセルホッパーでその場を移動、火の玉の射線上から退避した。

火の玉はさっき迄俺達がいた場所に着弾後爆発、コンクリートの地面をえぐり、周りを焦がして消えた。


「今度は魔法か!次から次ぎへと忙しいなまったく!」


「にいちゃん!魔法だよ!しかもファイヤボールだよ!」


襲われてるっていうのに雪は興奮しながら背中をバシバシ叩いてくる……元気だな。


アクセルホッパーを走らせながらファイヤボールの射線をたどりそこに居た敵を観察する、スキンヘッドにジーンズ、黒のTシャツから刺青を覗かせ鋭く此方を睨み付ける、いかにもな男が更にファイヤボールを三つ撃ってきた。


「雪しっかり捕まってろよ!」


「OK〜」


俺はファイヤボールを避けながら道路をUターン、男の立っていた四階建てのビル目指してアクセルホッパーを更に加速させた。


「なるほど」


雪がなんとなく剣を使えると言ったのがよく分かる、確かに俺もなんとなく出来る事が分かるらしい。

爆音を地に響かせながらアクセルを全開にして加速する、何キロでているのか分からないが驚く程のスピードで俺はビルに向かって加速した。


「兄ちゃん!ぶつかるよ!前!前!」


「大丈夫だ!」


そして何となくから確信に変わり、アクセルホッパーと雪と共に俺はビルの側面をまるで吸い付くように駆け上がった。


「キャァァァァァ!」


雪も随分と女らしい叫び声を上げるんだな、と変な感心をしながら屋上に到着、既に逃げだそうとしていたチンピラ風の男をアクセルホッパーと共に強襲、敵の背中を加速した木刀による一撃にて葬った。


「兄ちゃん、何でこの人襲って来たんだろうね?」


「まあ魂が沢山手に入りそうで安全に遠距離からの攻撃で俺達を倒せると思ったんじゃ無いか?」


実際ネズミとの戦闘も見ていた筈であるが、雪の魔法剣は射程が短い物が多いと判断したんだろう。

俺は魔法を使うタイプでは無くバイクを乗り回すジョブと判断したが、流石に直接ビルの側面を駆け上がってくるのは予想外で逃げ出すのが遅れたのだと思われる。


「俺達も気をつけないと、予想外の事態にはとっさの判断力が求められるからな」


「僕は大丈夫だよ!でも兄ちゃんは考えて動くタイプだから心配だね!」


「ああそうだな」


うんうんと雪は首を上下に振っているが俺も心配である、雪は昔からカンで動くタイプだからな……平和な時はそれでもいいし、とっさの時や決断力を試される時は雪の方が優れているんだろうな、だが考えて行動して事前に危険を回避するのも重要な事である、特にこの地域は人間が多いからな。


「さて雪、このビルだが探索してみるか?恐らくなにかあるぞ」


「多分あの魔法使いの根城だったんでしょ?」


「ああ多分な」


ビルの屋上にある機械室の壁に頭から叩きつけられて絶命した男の方を見ながら少し考える。

男は軽装であり魔法使いであるが、俺と雪のようにリュック等の装備は近くに見当たらない、また男がファイヤボールと唱えるまで気配を感じず、このビル全体から魂の気配を感じるのだ。


「少なくとも何かを隠してあるんじゃないかな?」


「そうだね」


雪の返事を聞いて取りあえずアクセルホッパーに貯めてある魂を雪と分配する、アクセルホッパーには自力で一旦地上に降りて貰った……まさか普通に飛び降りるとは思わなかったけど、ホッパーとは意志疎通できて、ヘッドライトやアクセル音で何となく雪とも会話しているらしい、段々ホッパーの感情が豊になっているのを感じた。



雪と共にビルの最上階に続く階段をおりる、途中にあった扉は壊されており、すぐに通れた。


「これは……またなんとも」


「うぇ〜兄ちゃん気持ち悪いよ〜」


既に色んな死骸やらを見てきた俺達だが、各部屋を覗く毎に気が滅入ってくる、普通の死体だけならまだしも各部屋には【元人間】としか表現出来ない物が数多に存在していた。


「兄ちゃん……何でこんな事できるんだろうね」


「さあな」


想像は出来る、あの男は魔法使いだった、しかもファイヤボールと唱えていたのだ、ゲーム等で良くある物ならジョブは恐らく黒魔法使いって所だろうか、そういう趣味の人間だから黒魔法使いになったのか、それとも黒魔法使いになったから強くなる為に仕方なくこうしたのか………。


最上階こそ【元人間】ばかりだったが階下の部屋を調べるにつれ動物の死骸に変わって行く、そして一階最後の部屋にはまだ生きている動物がいた。


「ニャー」


「金瞳の黒猫か……いかにも魔法使いの使い魔ってかんじだな」


「兄ちゃん!猫だよ!」


「しかも魂をなかなか保持しているな」


ビルから感じた気配はこの黒猫か、まあ檻に閉じ込められているのだが。

魔法使いが死んだ所為かは分からないが随分と弱って見えるな、俺は木刀を振り下ろして檻に一撃を加えて猫を檻から出してやった。


「兄ちゃん?えっと殺さないの?」


後半は少しか細い声だったが最後まで聞こえた。


「まあ何時もと違って襲いかかってこないからな」


今までのモンスターは俺達を見たら即、襲ってくるモンスターばかりだったが、この黒猫は使い魔だった影響でもあるのか俺にされるがまま檻から出すことができた。


「ニャー」


足にすり寄ってきた。


「ニャー」


ふむ、まあこのままでいいだろう。


「さてコンビニで少し休むか」


「OK〜」


「ニャー」


モンスターか、さて一番のモンスターは誰何だろうな?

そんな事を考えながら、俺はホッパーを押しながら雪を連れて近くのコンビニに向かうのだった。

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