9 ラブラブ姉弟
「あ、葉月先輩。ちょうど今、紹介するところだったんですよ」
「ホントに~? あ、でも、正直な卯月ちゃんが言うことだから、間違いないわよね」
腰まで伸びた長い薄ピンク色のストレートヘアに、薄茶色の瞳。元気いっぱいな声音は男女問わずして相手に好印象を与える。顔もそれなりに美人で、ちょっぴりモデル体系の魅力的な女子だ。
「高等部一年の書記、熱海葉月でーす。よろしくねー」
そしてもう一人、葉月と同じ色の髪と目をした男子が現れる。
「中等部三年、書記、熱海文月」
まるで独り言のように要点だけをぼそぼそと言う文月に、葉月がビシッと指摘する。
「ちょっと文月、ダメじゃない。言葉はもっとはっきり言わないと」
「ごめん、姉さん」
枯れかけた花のようにしょんぼりする文月。なので、葉月は慌てて水を注いだ。
「あ、別に攻めているわけじゃないのよ。姉であるあたしとしては、文月がもうちょっと男の子らしくしてくれたらなぁって思っただけ。だから、気にしないで」
「うん」
「よしよし。大好きよ、文月」
「僕も、姉さん、大好き」
「もう、文月ったら。可愛いんだから」
「姉さんも、可愛い」
そんなほんわかとした暖気に包まれている葉月と文月を、卯月は微笑ましそうに眺める。
「名字が同じ熱海なので、もうわかった方も多いと思いますが、葉月先輩と文月君は姉弟なんですよ。僕は一人っ子なので、なんだかうらやましいです」
と、そこへ御門が口を挟んでくる。