6 説明書はちゃんと読もう!
「次は、生徒会副会長の滝島君の紹介です」
が、滝島は暗雲をまとって黙り込んでいる。
「あれ? どうしたの?」
「…………」
「えーっと、もしかして、御門先輩の紹介のときに、僕が突っ込み役をやっちゃったから、すねてる?」
「んなわけあるか! 御門が自己紹介でどんなことを言うか黙って聞いてれば、あんな話を聞いて落ち込まない方がおかしいだろう! もう、自分の紹介なんてやってられるか!」
「だ、そうですが。どうしましょう、御門先輩」
「ふむ、こんなときはアレだな。じゃじゃーん、滝島取扱説明書!」
御門が得意気に一冊の本を取り出した。
「おい待て! なんだよソレ? 俺の取説?」
「説明しよう。滝島取扱説明書とは、その名の通り、様々なシチュエーションにおいて、滝島への最善の対応の仕方をわかりやすく解説した説明書である。ちなみに一冊400円」
「わあ、お手頃な値段ですね……って、人の生態を勝手に本にした挙句にその安さかい! ふざけんな!」
「滝島が暗雲をまとって黙り込んでいるときの対処方は……まず、大好きなクマのぬいぐるみを与えてみよう。少しは元気を取り戻します」
「取り戻せるかあ! ソレ、他人には秘密にしてることだから! 恥ずかしくて余計に落ち込むわ!」
「それでもダメなときは、お菓子作りが趣味の滝島君に、料理に役立つ便利グッズを与えてみよう」
「え……。それはちょっと嬉しいかも……」
「なお、壊れているものを与えると、効果が倍増します」
「するかあ! ストレスがたまる効果が倍増するわ! ってか、それはただの嫌がらせだろ!」
「……という感じのボケを連発し、滝島君に突っ込ませてあげると、滝島君は自然と元気になっています。滝島君の成分の約九割は突っ込みです。突っ込む回数の減少がそのまま元気を失う原因になるので、適度に彼の前でボケて突っ込ませてあげましょう」
「どういう意味だあ! 成分の約九割が突っ込みって!」
「なんだ。やはり俺の自己紹介のときの突っ込み役を卯月に取られたのが原因じゃないか」
「黙れ! そんなことはない! そんなことはない、はず……だ」
いつの間にやら、本来の滝島に戻っているのを見て、卯月とヴィゼは言う。
「ねぇ、ヴィゼ。あの取説、すごくない? ホントに滝島君、元気になったよ」
「ああ。でも、肝心の自己紹介はやはりできそうにないから、最低限の説明は地の文でやっとくか」
滝島優流。中等部三年。生徒会副会長。