2 暴走生徒会長
その男子生徒――卯月は遠慮してか、マイクの受け取りを拒否する。
「あ、いいよ、滝島君。僕はただの庶務だから。ここは会長である御門先輩に……」
「よく言った。よし、今から俺が忠実なる八匹のクソ犬共を紹介してや……」
間髪を容れずに滝島が遮る。
「誰が忠実なるクソ犬共だ! そもそも俺らは犬じゃねーし! 忠誠も誓ってねーし!」
「じゃあ、今すぐ誓え。俺様に、人間としてのすべての権利を譲渡すると」
「基本的人権を尊重しろ! ああもう、卯月、頼むからお前が司会をやってくれ。御門に任せていたら話が進まない」
と言われて気分を害した御門が、
「失礼な奴だな」
とクレームをつける。
「どっちが! お前は今までの自分の台詞を振り返れ! 実際に卯月……主人公が出てくるまでに何行無駄に文字数を費やしたと思ってる!」
「この物語を読んでいる君、暇だったら数えてみよう!」
「だからお前は読者様をなんだと思ってるんだ!」
「奴隷」
「会話をループさせる気か! いいから、その思考回路をまず直せ! もういい加減にしないと、文字数稼ぎだと思われるかもしれないから!」
「かもしれない、じゃなくて、もう思われてるんじゃね?」
「じゃあ、頼むからお前はもう黙ってろ! 卯月、早く司会を……」
卯月は戸惑いながらも滝島からマイクを受け取る。そして、気を引き締めてぺこりとお辞儀をし、自己紹介を始めた。
「えーっと、はじめまして。一応ながらも主人公を務めさせていただく、中等部三年の生徒会庶務、花澤卯月です。この物語は中高一貫校の私立、宝月学園っていう学園の生徒会を舞台にして、なんかこう色々と、主人公である僕が日常ではちょっとあり得ない出来事に巻き込まれながらも、毎日ガヤガヤ楽しく活動していくといった感じの話です。最後までどうかよろしくお願いします」
「平凡な解説だな。つまらん」
御門がろうそくの火を一瞬で消せそうなくらい大きなため息をつく。