8 超適当?
「おい、滝島ぁ! これは一体どういうことだ! ちゃんと説明しろ!」
「わかったよ、わかったから、少し落ち着けって、皐月」
怒鳴られながらも、皐月相手に怖気づくことなく接する滝島。
これは卯月の推測だが、皐月と滝島は、外観は不良と準三大王子で接点がないように思われるが、意外にも友人同士のようである。教室で、二人がしゃべっているのを稀に見かけるのだ。
「えっと、これは大変申しにくいんだが、実は、その……」
「なんだ? さっさと言えよ」
夕立直前の空のように、滝島の表情が曇る。これを言えば皆が、特に皐月が、どんな反応をするか目に見えていたために、その有様を頭に浮かべて肩を震わせる。
だが、言わなければ、もっと怒鳴られる。
意を決した滝島は小声で、
「く、くじ引きで決めたんだ。……俺が」
と言った。
「はあ? なんだって?」
あまりにも信じられない理由だったので、皐月が確認の意味を込めてもう一度尋ねる。
滝島は、申し訳なさそうに同じ言葉を反復した。
「俺が、くじ引きで決めたんだ」
「なんだとおおおおぉぉぉぉ!」
皐月が、滝島の予測通りの反応をする。そして、他の生徒たちもさすがに、
「ちょっとお、なんなのよ、それ!」
「適当。非道」
と、葉月と文月が苦情を述べる。
しかしながら、そんな決め方に不満を持ちながらも、受け入れてしまう生徒もいて、
「ほう、これも運命とやらか」
と、如月が言う。
生徒会室内に不穏な空気が漂う。ちょうど、授業が始まって先生が教室に入ってきて教壇の上に立って出し抜けに「えー、これから抜き打ちテストをします」と言ったときのような。
「ど、どうすることもできなかったんだよ。自分で決めるのは面倒だから、お前が選べって御門に脅されて……。で、俺がどういう生徒を選べばいいんだよって訊いたら、それもまた、考えるのが面倒だから、くじ引きでいいだろってことになって……」
と、滝島が詳しい説明をするが、そんな説明で説得できるはずもなく、
「ふざっっっっけんな! そんなやり方で決められて、おめおめと従ってられっか!」
皐月の、まさにその通りだと言わんばかりの正論に、他の生徒たちも次々と首肯した。