7 犬
「では、今ここに集まってもらったクソ野郎共、誇りに思うがいい。それから、有り難く思うがいい。今からお前ら全員俺のどれ……」
「違ぁぁぁぁう! お前はまだ生徒奴隷化計画を引きずってんのか!」
「おっと間違った。奴隷はお前だったな。紹介しよう。こいつは俺の奴隷である中等部三年の滝島優流だ。にしても、よく『どれ……』の時点で突っ込めたな。さすがだ。我こそが俺の奴隷であるという主張と解釈してもいいんだよな?」
「そんなわけあるか! お前の言いそうなことぐらい大体見当がつくんだよ! 第一、俺は奴隷じゃないって! 生徒会副会長だろ! お前がそう指名したんだろーが!」
(……え? 生徒会副会長?)
卯月は素直に驚いた。別に親しい間柄というわけではないのだが、自分の知っているクラスメイトがそんな役職を与えられるなんて、なんとなくだが尊敬してしまう。
「と、いうことだ。この学園の生徒会長が持つ他の役員の指名権は知っているな? 今からお前らは生徒会執行部員だ。拒否権はない。俺の命令には黙って従うこと。いいな? 逆らったらぶっ殺すから、そのつもりでいろ」
御門が威厳を放って言う。しかし当然、これをよしとしない生徒もいるわけで。
「ちょっと待てよ。どうして俺なんだ? きちんと理由を聞かせてもらわねぇと、こっちも了承できねぇな」
と、不良生徒の皐月が、相手が先輩であるのにもかかわらず、猛獣のような目つきで御門を睨みつける。
だが、御門は少しも怯えることなく、それどころか「ふん」と鼻であしらって、
「逆にこっちが訊きたいな。言うならば、お前らは俺の下部だ。犬同然だ。飼い犬に、ペットショップで選んだ理由を説明する主人がどこにいる? 俺の貴重な時間をそんなことに割いていられるか。ぶっ殺すぞ?」
なんてことを言う。
「てめ、喧嘩売ってんのか! 誰が犬だって!」
「お前らだと言っているだろう。お前には人語が通じないのか? おかしいな。血統書のない雑種の犬ですら、お手、お座り、などの簡単な言語なら理解できるというのに、俺の言葉が難しすぎたのか? これだから馬鹿の相手は疲れる。不良には馬鹿が多いというありがちな法則は、この宝月学園の不良にも当てはまるのか」
「ああ? てめぇ、死にてぇのか! 生徒会長だからってあんまり人のことを舐めてっと、後で痛い目見るぞ!」
「きゃんきゃん吠えるな。耳障りだ。悪いが、犬語で話すのはやめてくれ。俺は犬じゃないから意味がわからないんだ。生徒会室に犬語翻訳機がないのが残念だな」
「このっ!」
御門には話が通じないと皐月は悟ったのか、今度は目線を滝島へと向けた。