6 全員集合
西棟へと辿り着いた卯月は、速度を緩めることなく階段を駆け上がる。段々と息が上がってきた。だけど、目的地はもうすぐだ。
三階に到着し、即座に生徒会室と書かれたプレートを見つけ出す。そして、勢いよく引き戸を開けた。
「あ……」
目の前には六人の生徒が立ち並んでおり、振り向いて卯月を見つめている。その中でも、ヴィゼだけは珍獣でも発見したかのような驚愕の顔をしていたのだが、卯月は気がつかない。
そして、部屋の奥から先ほど放送していたのと同じ声がして、
「二分五十一秒。ふん、ぎりぎりだな。全員揃っちまった」
と、なんだか残念そうに息を吐くのが聞こえた。
他の六人がすでにいるということは、卯月が最後だったということだ。とにもかくにも、間に合ってよかった。
卯月は生徒会室の中に入り、そろそろと引き戸を閉める。
部屋の一番奥にある窓を背にした会長席に座る一人の美男子。それから、近くにはもう一人男子生徒がいて、機嫌の悪そうな顔をして立っている。卯月は、さっき放送していたのは、この二人であることを察した。
(って、あれ? 会長席のそばに立ってるのって、同じクラスの滝島君?)
滝島もまた、文月と同じ準三大王子として有名な生徒だ。だが、彼がなんで生徒会室にいるのか、理由がわからない。
「御門、なんでため息をつくんだよ。時間内に全員揃って、よかっただろう?」
「罰ゲーム、楽しみにしてたんだがな」
「楽しみにするな、そんなこと」
「まあでも、下等なうじ虫たちが慌てふためく様を想像できて少しは楽しめたから、今回はそれで充分としておこう」
放送のときと同じように、偉そうな口調でしゃべる美男子。
(この人が、御門先輩?)
銀髪に碧眼という、本物の王子様を思わせてしまう日本人離れした外見。じかに見ると、完璧なまでの超美形だ。女生徒たちが騒ぐのも、生徒会選挙という名の人気投票で一位を得たのも、わかる気がする。