3 遅刻は厳禁
生徒会選挙が行われた日の放課後になって一時間もすれば、投票結果を示した紙がそこら中の掲示板に貼られる。
だが、帰宅部である卯月は、その日もいつも通り、放課後になると同時に下校してしまったし、関心がないので後日も掲示板に目をやることはなかった。
御門蓮。
名前だけなら聞いたことがある。宝月学園の三大王子と謳われる、成績優秀、スポーツ万能、ついでに超絶美形という、学生モテ男の三種の神器を兼ね揃えた有名人だ。よく女生徒たちが話題にして騒いでいるのを耳にする。
『ということで、今から今年の生徒会執行部員を発表する。同じことは二度言わないから、しかと聞いておけよ』
卯月は、自分には関係ないだろうと、適当に聞き流そうとした。
が。
『高等部二年の雪峰師走。高等部一年の熱海葉月とヴィゼルフ・ベルス。中等部三年の熱海文月と雨植皐月と花澤卯月。中等部二年の多波如月。今、名前を呼ばれた奴、この放送が終わり次第、三分以内に生徒会室まで来い。この俺様を刹那でも余分に待たせた奴は、罰として人に知られたくない秘密をつまびらかに放送してやるから、くれぐれも遅れないよう……』
(……え?)
卯月は自分の耳を疑った。
(今、僕の名前を呼ばれた?)
『人に知られたくない秘密って、お前がもう知ってんじゃん! どこから仕入れた、そんな情報!』
『全校生徒の個人情報は全部把握している。生徒に関するプロフィールで俺にわからないことなどない。なぜなら、俺は生徒会長だからな』
『なぜなら、の意味がわからんわ! そんな生徒会長、フツーに気持ち悪いっつの!』
『つうわけで、三分以内だぞ。ちゃんと計っているからな。では、よーい、スタート!』
『ちょ、マジで計るのか! マジで罰ゲームとかしな……』
ピンポンパンポーン。
放送が終了する。
(え、え、ええ!)
卯月はただちに席を立って、教室を飛び出した。