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銀河連盟生徒会が行く  作者: 百合華
第一章 花澤卯月の辛苦
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2 漫才放送

『あー、校内にいるクソ野郎共、もとい、うじ虫たちに告ぐ』

 偉そうな口調に、率直な罵言。

 教室にいた誰しもが……いや、校内にいた誰しもが、「一体誰だ」とざわめく。生徒たちの両眼がスピーカーに集中した。

 が、次にスピーカーから流れてきたのは、別の誰かの声だった。

『って、御門。違うだろ。第一声からとんでもないことを言うな。言い直しの意味が全然ないじゃん。生徒会長が生徒をけなしたら、それはそれで問題だろ。もっとちゃんと言いなって』

 するとまた、さっき罵言を吐いた声の主が、口調を正すことなく言う。

『ならば、校内にいる俺の下僕共に告……』

『だからぁ、違うって! お前は、もっと自分の言葉遣いについて考えろ!』

『ああ、そうか。下僕は広辞苑で引くと男の召使いって意味だからな。これじゃあ女生徒が含まれない。言うならば、俺の奴隷たち、か?』

『論点はそこじゃなあい! 要するに、生徒たちを見下すなって言ってんだよ! 生徒会長っていうのは生徒の代表であって、生徒の中の王様って意味じゃないからな!』

『似たようなもんだろ。どちらも偉いってことには変わりない。偉い奴が下等な奴らを見下して、何が悪い』

『悪いに決まってるだろーが! お前のやっていることは、政治家が国民を見下すのと同じなんだよ! いいから、早く言い直せ!』

『では、改めて。校内いるゴミ共に……』

『もはや生き物ですらなくなったな! お前は自分以外の生徒をなんだと思ってるんだ!』

『俺を生徒会長にしやがったクズ共』

『ここで本心を言うなあ!』

(……なんのコントだろう?)

 どうやら、スピーカーの向こうにいる二人の内の一人は、生徒会長のようだ。卯月は、三日前に行われた生徒会選挙を思い出す。

 この学園では、生徒会長は投票で決めて、残りの生徒会執行部員は生徒会長になった者が学年問わずに好きに選んでいいという決まりになっている。ただし、高等部の三年生だけは、受験などの理由から生徒会長に立候補できない上に、生徒会執行部員に選ばれることはない。各部活の部長や委員会の委員長も、仕事が忙しくなるという理由から、同様である。

 確か、今年の生徒会選挙は、立候補者が一人もいなかったために、誰でもいいから生徒会長にふさわしいと思う人の名前を白紙に書くというものだった。そのため、生徒の中でも人気のある者に票が集まってしまったという。生徒会選挙が行われた後、卯月の近場の席の女生徒たちが、そのような噂話をしていた。

『わかったよ、ちゃんとやればいいんだろ? あー、校内にいる全校生徒に告ぐ。俺は三日前の生徒会選挙で不本意ながらも、ふ・ほ・ん・い・な・が・ら・も生徒会会長に任命された高等部二年の御門蓮だ。というわけで、選挙のときに俺の名前を書いた奴、今すぐ生徒会室まで来い。一人残らずぶっ殺してや……』

『ストップストップストップ! 校内放送でそんな物騒なことを言うな! ちゃっかり不本意ながらもって二回言ってるし! お前が生徒会長っていう役職を押しつけられて腹を立てているのはわかるけど、高等部の三年生と部長と委員長を除く全校生徒の中からたった一人選ばれたんだぞ! だから、もっとこう、プラス思考でいけよ! 学園の人気投票で一位になったと思えばいいだろう! だから喜べ! すごく名誉があることだぞ!』

『当然だ。俺が一位にならない方がおかしい』

『お前は、言ってることがめちゃくちゃだな!』

『俺はだな、人気投票で一位になる=生徒会長になるという方式が気に入らないだけだ。まったく、なんで立候補者が一人もいねぇんだよ。おかげで俺は生徒会長っつうクソ面倒臭い仕事をする羽目に……』

『ああ、ちょっと赤裸々に語りすぎだって! っていうか、さっさと本題に入れよ!』

『そうだな。いつまでも過去のことをネチネチと気にしていては、そこらの愚人共と一緒になってしまう。生徒会長になったからには、その権力を思う存分に利用させてもらうとするか。では、まず手始めに、全校生徒の持つありとあらゆる権利は生徒会長に譲渡するという校則をつく……』

『って、さりげなく全校生徒を自分の奴隷にしようとするな! 趣旨が見え見えなんだよ、そんな計画! じゃなくて、その他の生徒会執行部員のことで、今、放送してんだろーが!』

『あ、そうだった』

『あ、そうだった、じゃねぇ!』

(そうか。生徒会長は、御門蓮って人がなったんだ)

 卯月は他人事のように放送を聞いていた。まあ、無理もない。

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