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銀河連盟生徒会が行く  作者: 百合華
第一章 花澤卯月の辛苦
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1 孤独な時間

 今日も。

 今日も、卯月は一人でお弁当を食べていた。

 何事もない平穏な日。普段通りの昼休み。

 賑やかな教室内は、ごくごく在り来たりなもので。

 同級生たちが、それぞれ何人かのグループを作り、楽しそうに会話をしながら昼食を口を運ぶ風景は、すでに見慣れたものとなっていた。

 外は春の陽気。暖かな日差し生命に活気を与えている。とてもいい天気なので、大方、中庭辺りでも仲良くお弁当を食べている生徒もいるだろう。卯月にとっては、夢のような話だが。

「…………」

 卯月は黙々と箸を動かす。目の前にある自分のお弁当のみを見つめる。食べることだけを考える。……それしか、することがなかった。

 近くにいる男子生徒たちが大声を上げて笑う。

 前方の席に集まっている女生徒たちがきゃあきゃあ騒いで盛り上がる。

 その他のクラスメイトも、各自雑談に華を咲かせる。

 廊下を歩いている生徒の話し声まで耳に届く。

 中高一貫校であるこの宝月学園に入学してから二年。中等部三年となって早二週間。卯月にはいまだに、同じ学年にも先輩後輩にも友達がいなかった。

 もう、慣れたと思っていた。もう、気にならないと思っていた。だけど、耳に入ってくる同級生たちの談話は日々大きくなるばかりで、自分がまるで海に囲まれた孤島のようになっているのを強く実感してしまう。

 つらい。

 苦しい。

 心が、痛む。

 入学時から何も変わっていない自分が嫌になる。

 このままじゃいけないって思ってはいるのに。変わらなければならないって思ってはいるのに。

 誰かが声をかけてきてくれることを期待してしまう自分がいる。

 朝のホームルームが始まる前の時間や、現在のような授業の間の休み時間。機会はいくらだってあるというのに、どうしてもっと積極的になれないのか。ただ一言「仲間に入れてください」と言えばいいだけの話なのに、その一言が……出ない。

(こんなはずじゃなかったのに……)

 今日もまた、何も言えないまま昼休みを迎えてしまった。次の休み時間は言おう、明日は言おう、と心に誓うのだが、そうして再び同じことを繰り返す。

 いつしか、そんな誓いを立てたところで、きっと今度も言えないだろうと後ろ向きに考えるようになっていた。学園に通うのが怖いという思念までもが生まれていた。

 自分が一人ぼっちだと思い知らされる時間。自分が惨めだと思い知らされる時間。

 卯月が思い描いていた学園生活は、もっと楽しいものとなる予定だった。毎日適当に過ごしている内に友達もできて、休み時間になったらどうでもいいような会話をして、笑っている自分がいるはずだった。

 なのに、現状はどうだろう。

 厳しい現実の壁にぶち当たり、自分は何もできないままでいる。

(僕って、ダメな人間だなぁ)

 ほんの少しでいいから勇気がほしい。一緒にご飯を食べる相手がほしい。友達と呼べる存在が、ほしい。

 不変の孤独な日々に嫌気を感じながらも、一歩を踏み出せない自分が本当に情けなく思う。望むだけでは、何も手に入らないというのに。

 自分は、ただ待つことしかできない。

 食事に専念できる卯月が、他人よりも早く昼食を食べ終えてしまうのも、いつものことだった。

 空っぽになったお弁当箱を卯月は鞄に仕舞う。そして、ただひたすら、ときが過ぎるのを待つ。昼休みの終了を告げるチャイムが鳴るのを待つ。

 退屈だが、他にすることがない。

 授業の予習は、すでにやってある。復習は、学生寮に戻ってからやるのが卯月の習慣だ。図書室に行って読書をするという手もあるが、それは中等部二年のときの昼休みに年中していたことなので、すでに飽きてしまった。

(暇だなぁ……)

 卯月は頬杖をつきながらぼうっとする。すると、こんな校内放送が流れてきた。

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