10 主人公交代?
「おい、庶務如きが調子に乗ってんじゃねぇぞ。誰もお前の意見なんか求めてねぇんだよ」
「御門! 主人公に対してそんな口の利き方はないだろう!」
滝島が激昂するも、御門は無視してこんなことを言う。
「よし、俺の忠実なるクソ犬共の紹介はもう全員終わったな。覚えられなかった奴や忘れた奴、または本編を読んでいる途中でわからなくなった奴は、最初からここまでの文章を何度も読み返せ。いいな?」
「こんな無駄に長い茶番を読み返してくれる人が果たしているでしょうか!」
「まあ、やることはやったし、さっさと本編に……と言いたいところだが、その前に一つ、言っておきたいことがある」
「なんだよ」
「この俺様が主人公じゃないっていうのが、やはり気に食わん。卯月、今からでも遅くはない。主人公の座を俺に明け渡せ」
などという命令に、卯月が、
「あ、僕は別に構わな……」
と答えそうになったので、滝島が瞬時に待ったをかける。
「二つ返事でOKするな! 重要だから! ものすごく重要なことだから!」
「え、でも、滝島君。こういう生徒会をテーマにした物語って、普通は生徒会長が主人公なんじゃないかな? だから、今でも僕なんかが主人公でいいのか不安で……」
「いいんだよ! いかにも会長が主人公っぽいけどそうじゃないってとこがこの物語の作風なんだから! もっと自信を持て! 堂々としろ! じゃないと、御門がすぐに主人公の地位を奪い取って、なんかもう、とんでもないことに……」
と言われた御門が不快そうな顔をする。
「失礼な奴だな」
「だからどっちが! お前は反省というものを学んでくれ!」
「過去に縛られていては、人は前に進まない」
「なんで唐突に哲学的なことを言ってるんだよ! ってか、お前だけはもう前に進むな! いっそ後退してくれ!」
御門の顔がますます不機嫌そうになる。
「鬱陶しい奴だな。さっきから副会ちょ……奴隷のくせに出しゃばりやがって。滝島、もしかしてお前も主人公の座を狙ってるのか?」
「だからどうして言い直すんだよ! それにお前と一緒にするな! 一体誰のせいだと思ってるんだ! 卯月、こうなったら何がなんでも主人公であり続けろよ!」
「は、はい。頑張ります」
卯月は自信なさげに頷いた。