暗黒の雨
「ついに…この日が来てしまったんだ…。」
窓際に立つ一人の男性は外の雨を見てつぶやいた。
「父さん…この雨、なんかおかしいよ…?」
彼の娘であろう少女は言う。
「色が変なの。ふつう雨って水だから透明なはずなのに、この雨は黒いよ。」
「黒い、雨…か。…アンナ、もしかしてこの雨の中で外に出たりは…」
「してないよ。あ、でも降り始めたのが帰りだったから、少し濡れたかも。」
男性はその言葉を聞き、急に目の色を変えた。
「どこが濡れたんだ!?」
「え、ふつうに頭とか…。」
「体に変化とかは!?頭痛いとか、ないのか!?」
「う、うん…。」
少女、アンナの言葉を聞いて今度は胸をなで下ろす男性。
「何でそんなこと聞いたの?」
アンナは不思議に思い聞いた。
「アンナ、よく聞くんだ。この雨は、百年ほど前にある人物が予言した『呪いの雨』なんだ。その人物はこの雨のことを『暗黒の雨』と名付けた。きっと、この雨に濡れると呪いがかかってしまうんだ。」
「父さん…怖いね。いつになったらやむのかなあ…?」
降りしきる黒い雨の中、少年は家の前に座り込んでいた。
「おとうさん、おとうさん…どうして帰ってきてくれないの…。」
黒い雨は容赦なく少年を濡らす。
「はやく…はやく……」
だが、その声は誰にも届くことはなかった…。
まだ幼い子供が黒い雨の中で泣いていた。
「…ごめんね。ママはあなたと一緒にいることは出来ないの…。たまには遊びに行くからね…。だから泣かないで…?」
「あーん!!やーあだあ!ママー!ママー!!」
母親は子供を乳母に任せ、その場を離れる。
子供はその乳母に連れられ、家の中に入っていった。