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錆びた神剣

昔々、八百刃が打った神剣が古物商に売られていた事から話が

 ローランス大陸のハールス王国のある一つの町、マロスが今回の舞台である。



「この町は、マーロス大陸の物が多いね」

 トーウの言葉に、一緒に町に買い物に来ていたセーイも頷く。

『確かこの町は、マーロス大陸からの移民が多い町だった筈よ』

 セーイの肩に乗る、子猫の姿をとる魔獣、百爪(愛称ソウ)のテレパシーにトーウが頷く。

「なるほどねー。でも、あまり栄えてないみたいだね」

 そう言って、周りを見回すトーウ。

 トーウが言うとおりに、町に人気は少なかった。

『移民の町に活気が無い理由なんて簡単だろう』

 その言葉にトーウが難しい顔をする。

「詰り、大陸間戦争、それも相手はマーロス大陸って所だね」

 その言葉に、セーイの顔が強張る。

『あきらめな、正しき戦いの護り手、八百刃の代行者であるセーイ達の行く先には戦争があるのは必然だよ』

 ソウの厳しい一言に、辛そうに頷くセーイ。

「とにかく、状況を掴まないと、うまく立ち回ればお金になるかもね」

 トーウがそう言って、買い物を再開した時、セーイは古物商の前で止まる。

 セーイは導かれるように中に入っていく。

「いらっしゃい。お客様は、何をお探しですか? 名人作の皿や花瓶、何でもありますよ」

 早速営業スマイルを向ける店主だが、盲目のセーイには意味が無かった。

 そんな店主を置いて、セーイは一本の錆びた剣の前に立つ。

「お客様は、お目が高い。それはなんと正しき戦いの護り手、戦神、八百刃様の打った刀ですよ」

 その言葉にセーイが頷く。

 微妙な反応に店主が戸惑う。

 それから、セーイの格好を見ると到底お金を持っている風には見えなかった。

「お客様、その商品はとても貴重なものなので、かなりお高いのですが、御代の方は大丈夫ですか?」

 その一言に、セーイは恐る恐るサイフの中身を見せる。

 セーイのサイフには、喋れないセーイに万が一の時に役立つのはお金とトーウが金貨を数枚入れていた。

 因みに、ホークがそれを知ってたかろうとして、星になりかけたのは、ヤオの元を離れてから一ヶ月も経っていない時の事だったりする。

 店主は即座にカモと判断して言う。

「残念ですが、それでは足りません」

 その一言に普通の大人なら、直ぐに慰めたくなる程悲しそうな顔をするセーイ。

 店主も、罪悪感に襲われるが、そこは長い間、いい加減なハッタリで無価値な物を売りつけている悪徳古物商、心を鬼にして続ける。

「しかし、お客様の熱意には、負けました。お財布にあるお金で手を打ちましょう」

 途端に眩しいほどの笑顔になるセーイ。

 何度も何度も頭を下げて、錆び付いた剣を大事そうに抱える。

 元値が銀貨5枚でその他のもの込みで買った剣に10倍以上の値段をつけた店主はかなり罪悪感を覚えたが、笑顔のまま言う。

「私もいい商売が出来て良かったですよー」

 頭を下げながら店を出ようとしたセーイの前にトーウが立つ。

「ソウ、事情説明」

 その一言に、セーイの肩の上で一部始終を見ていたソウが言う。

『完全に店主にぼられているよ』

 その一言に戦闘モードに入ったトーウが、セーイから錆びた剣を奪い取り、店主に言う。

「この剣が金貨3枚以上の価値があるって言うの?」

 店主が慌てて言う。

「はい、そうです。それは高名な戦神の八百刃様の打った刀です」

 その言葉にトーウが言う。

「その言葉に、嘘偽りは無い?」

 店主は胸を張って言う。

「当然ですよ。私はこれまで一度も嘘を言った事が無いのが自慢です!」

 完全なハッタリにトーウは、即座に反論する。

「まず貴方は、一つ間違った事を言ってるよ」

 その一言に慌てる店主。

「間違いなど、これは正真正銘、戦神の八百刃様が打った刀です!」

 呆れた顔をしながらトーウが言う。

「それが間違いなの。八百刃様は、神名者で神様じゃないわ!」

 その一言にしまったって顔をする店主にトーウが続けて言う。

「詰り、あなたは謝った話でその錆びた剣を売ろうとしたのよ!」

「しかし、その程度の間違いは……」

 及び腰で反論する店主にトーウは迫る。

「あちきは、確認したよね? 嘘偽りは、無いって?」

 汗を拭きながら店主が答える。

「単なるいい間違いであって……」

 トーウは大きな溜息を吐いて言う。

「あのねー、神様と神名者といったら、哺乳類と鳥類くらい違うのよ。解る?」

 その言葉に店主が切れた。

「小娘の分際で!」

 掴みかかる店主に、セーイが反応する。

 突き出して来た手を掴むみ、引っ張る事で加速させてバランスを崩させ、足払いを食らわせると、空中で回転させて背中から床に落とす。

 呆然とする店主の顔の横にトーウが足を振り下ろす。

「私が悪かったです」

 必死に弁明する店主にトーウが笑みを浮かべて言う。

「あちきも無茶は言わないよ、仕入れ値で売ってくれれば良いわよ」

「はい、そうさせてもらいます!」

 銀貨3枚で買った錆びた剣を嬉しそうに抱えて出て行くセーイを見送ってから、怯える店主にトーウが言う。

「因みにあれって、八百刃様が打った刀って言うのは本当だよ」

 その言葉に言葉を無くす店主。

「細工に見覚えあるし、マーロス大陸で一度、何本かの刀を打ったって話を聞いたことあるもん」

 トーウはそれを告げるとそのまま去る。

 暫く呆然とする店主だった。



「本当に錆を落とすだけで良いの?」

 ナーンが、セーイの買って来た剣の錆を落としてから言うと、セーイが大きく頷き、剣を抱きしめる。

「セーイに合わせてパワーアップさせられるよ」

 ナーンの言葉にセーイは首を横に振り、傍で座っていたソウが答える。

『このままが良いんだって』

 少し不満気なナーンに料理を持ってきたトーウが言う。

「解ってあげなよ、ママの温もりを感じたいんだよ」

 その言葉に呑気に今さっきまで寝ていたホークが欠伸しながら言う。

「確かそれって、旅費に困って沢山打った奴でしょ?」

「関係ないよ、暫くママに会ってないし、寂しかったんでしょう」

 トーウが微笑を浮かべる。

「妹には優しい事で、その優しさを一応長女のあたしにもくれたら嬉しいんだけど」

 そういって手を差し出すホークを睨みトーウが言う。

「少しは働いてくれたら考えるよ」

 そんな無駄話をしながら過ごした比較的、平和な午後の一時であった。



「帰りもお願いね!」

 アルバイト先の酒場の裏口から手を振るトーウにセーイが頷く。

『どこいっても酒場だけは、人気があるね』

 ソウの言葉に手に持った、八百刃が打った剣を持つセーイが難しい顔をする。

 ソウは溜息を吐いて言う。

『仕方ないでしょ、喋れないと注文も聞けないんだから。無駄に惰眠を貪ってるホークと違ってこうやってトーウの送り迎えをしてる分、役に立ってるって』

 そんな会話をしながら道を歩いていると、数人の男達が、一人の少年と少女を囲んでいた。

「移民の分際で、堂々と表通りを歩いてるんじゃねーよ!」

「そうだ、そうだ! クソ汚いマーロスの臭いを振りまきやがって、臭いんだよ!」

 それに対して少年は怯える少女を後ろに庇いながら言う。

「僕達は生まれた時からこの町に住んでいます。マーロス大陸には一度も行った事はありません!」

 正当な主張だったが、男達には通じない。

「関係ない! お前達は、生まれた瞬間から、マーロス臭いんだよ!」

 少年を殴り飛ばす男。

「お兄ちゃん!」

 少女が、少年の所に駆け寄ろうとした時、下品な笑みを浮かべた男が腕を掴み言う。

「お前は、可愛いから俺達が中から俺達の臭いに染めてやるよ!」

「妹に手を出すな!」

 立ち上がり、必死に殴りかかる少年。

 しかし、多勢に無勢、すぐに取り押さえられる。

「お前はそこで黙ってみてろ!」

 男に地面に押し付けられながら少年が叫ぶ。

「止めろ!」

 その様子に対する周りの住人の反応は二通りだった。

 男達と一緒でローランス大陸に元々住んでいた住人は、当然と言う顔をしている。

 少年達と一緒の移民は、トラブルを恐れてビクビクと見ていた。

「助けて!」

 少女の叫びに男の一人がいやらしい笑みを浮かべて服を破こうとした。

「大人しくしてな! 直ぐ気持ちよくしてやるぜ!」

 その時、セーイの容赦ない手刀が男の顔面に当たり、吹っ飛ぶ。

 そして、男達は一斉にセーイの方を向く。

「ガキが邪魔するんじゃない!」

 ソウが呆れた顔をする。

『まー無視するわけにはいかないけど、面倒になるよ』

 セーイは少しも迷わず、大切な剣を地面に置くと、次から次に襲ってくる男達を素手で叩きのめす。

「覚えてやがれ!」

 逃げていく男達を見送ってからセーイは少女の方を心配そうに見る。

 顔に痣を作っていた少年が来て少女を支えながら頭を下げる。

「ありがとうございます」

 セーイは、謙虚に首を横に振る。

 その時、数人の移民がやってきた。

「あんたは何て事をしてくれたんだ!」

 その言葉に、セーイが驚いた顔をする。

「これで、奴等に私たち移民を排除する理由を作ってしまったじゃないか!」

 感情的な移民たちの言葉に、少年が反論する。

「だからって妹をあいつ等に差し出せっていうのかよ!」

 その言葉に、移民たちの中でも偉そうな男が言う。

「移民の弱い立場を考えれば仕方ない事だ!」

 その一言に少年が殴りかかろうとするが、セーイが止める。

 セーイはソウに視線で合図を送ると、ソウがテレパシーで移民たちに言う。

『全ては、自分の責任ですって言ってる。もしなにかあったら、町の外の魔獣車に居ると、その人たちに言ってくださいともね』

 その言葉に移民が少し驚くが即座に反論する。

「関係ない! 奴等は私たちを排除する理由を欲しがっているだけだ!」

 その言葉にセーイが大きく溜息を吐く。

 セーイが対応に困っていた時、物凄い雷撃が移民たちの頭の上を通過する。

「あたしの妹にイチャモンつけるんだったら、あたしが相手になるよ」

 両手に炎の塊を浮かべるホークに移民たちは怯えて逃げていく。

 残った少年が必死に頭を下げる。

「本当にすいません!」

 ホークは直ぐに頷く。

「謝礼と迷惑料払って欲しいわね」

 困った顔をする少年にセーイが首を横に振る。

『気にしていないって言ってるから大丈夫だよ』

「いえ、お礼はさせてください」

 そしてセーイとホークが少年の家に行く事になった。



「子供達が世話になった」

 そう言って、頭を下げたのは少年達の父親で、がっしりした体型の男性、アラルであった。

「謝礼お願いね」

 ホークの言葉に顔を真っ赤にするセーイ。

 苦笑するアラルだったが、金貨をあっさり出して言う。

「うちも金持ちで無いのでこれで許してくれ」

 ホークがそれを受け取り言う。

「まあ良いでしょう。お茶まだ?」

 そんなホークを他所にセーイが心配そうな顔をしてるのを見てアラルが告げる。

「この位払わせてくれ。自分の子供を値切りたくはないんだよ」

「そうだよ、お礼をケチるなんてマードラスの恥なんだからね」

 そう言って、簡単な食事を用意するアラルの妻、ミーラ。

「しかし、かなり移民に対する風当たりが強いみたいだね」

 ホークの言葉に肩を竦めるアラル。

「まーな。しかし、同じ町で暮らしてきた仲間だ、きっと解り合える」

 ホークとセーイは、ミーラが作った美味しい料理を食べて、八進に帰った。



 そしてそれは、その夜起こった。

 移民たちの住む一角に火が放たれた。

 必死に逃げる移民たちに 逃げる移民たちを襲う、軍人達。

「敵のスパイどもが! ここで皆殺しにしてやる!」

 アラルは必死に家宝の刀を握り締めて応戦する。

「止めてください! 私達は決してスパイではありません! 何を根拠にその様な戯言を言うのですか?」

 まともな反論だったが、軍人達には通じなかった。

「元からの住民にさからったそれが証明だ!」

 論理にもならない論理に舌打ちをするアラル。

 その時、セーイが駆けつける。

「危ない、逃げるんだ!」

 アラルの叫びに、セーイは首を横にふり、ソウに向って手を伸ばす。

『西刃の名の下に、我が刀に化せ、百爪』

 ソウは、刀に変化する。

 セーイは次々と軍人達の武器を切り落としていく。

 驚く、軍人達であった。

「ばかな、八百刃様の代行者だと!」



 司令部では、トーウが軍の将軍の前に座って居た。

 その周りには、ホークの輝石魔術で気絶させられた兵士達が倒れていた。

「八百刃の代行者であるあちき達が間違っていると判断する戦いをする事の意味は解ってますか?」

 将軍は、何も言えずに居るのをみてトーウは続ける。

「言っておきますが、国同士の争いに口を出すつもりはありません。どちらにも言い分があるでしょうし、どちらにも正義があるとおもいます。しかし、今回の作戦は完全に間違いです。それを強行するのなら覚悟を決めてください」

 後ろに控えている、大地から首を出す大蛇、大地蛇ダイチジャを見てあっさり折れる将軍であった。

「全軍撤退だ!」



「ありがとうございます」

 頭を下げるアラル。

 そして、セーイが首を横に振る。

『八百刃様の考え、正しい戦いを護っただけだって』

 ソウが解説する。

 アラルは自分がもって居た剣を差し出す。

「大したお礼は出来ませんが、これを受け取ってください」

 それを見てセーイが驚く。

『これって、ヤオが、命を助けてもらったお礼って渾身の力込めて作った刀じゃない』

 ソウの言葉にアラルが言う。

「やはりそうですか。我が一族はこの剣に何度も助けられたといいます。どうかこれをお納めください」

 セーイは大きく首を横に振るがアラルも折れなかった。

「私には、解ります。この刀は貴方の元に行きたがっています」

 その言葉にセーイは剣を手にとり、感じた。

 自分を必要にしている事を。

 そして深く頷くセーイであった。

『ありがたく、受け取るそうよ』

 ソウの代返にアラルも安堵の息を吐く。



「それでは、今回の作戦は失敗したと言うのか」

 暗い一室、そこに九盾の長、真九が居た。

 最初に少年達に絡んでいた男の一人が怯えた表情で頷く。

「それは、偶々代行者が居たため……」

 男の言葉は途中で遮られる。

「良い訳は聞かぬ。あの剣こそは我等が八百刃を滅ぼす為の鍵になる物だったのだぞ。他ならぬ八百刃自身が鍛えた神剣。それさえあれば八百刃を滅ぼす事も決して不可能ではなかった筈だったのだ!」

 その言葉に、必死に頭を下げる男。

「お許しを!」

 だが、次の瞬間には、男はこの世から消えていた。

「あれだけは決して逃すわけには行かない」



「だから買い取れって言うのですか?」

 最初に剣を買った古物商の店主にトーウが錆を落とした剣を差し出して言う。

「そう。もっと良いものが手にはいったからね」

 その言葉に店主が溜息を吐く。

「しかし、本当に八百刃様が打ったって保障が無いのに、金貨5枚で買うのはちょっと」

 それにたいしてトーウが睨み言う。

「代行者の保障じゃ不十分だって言うの!」

「そうは言いませんが!」

 その様子を恥しそうに見るセーイ。

「大変ですねー」

 セーイが助けたアラルの娘は、明るい表情で同情するのであった。

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