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代行者

最後のホールガーディアンと四つ子の秘密

 ホープワールドの西方にある島国、ジャッホン



「この先に最後のホールガーディアンが居るよ」

 幼女姿のソウが宣言する。

「俺達だけで絶対ホールガーディアンを打ち破るぞ!」

 コーサの言葉に強く頷くセーイ。

 そして、二人と一刃は、ホールガーディアンが待つ場所に向った。



 それは今までのホールガーディアンと一線をひく存在だった。

『私は決して負けません』

 そのホールガーディアンは完全な人の姿を取っていた。

「この世界は、滅びるのに何故邪魔をする!」

 コーサの言葉にホールガーディアンは告げる。

『貴方達がやる事で多くの人々が新たな世界に旅立つことが出来るでしょ。それは、この世界を捨てると言う事です』

 子猫の姿の蒼牙が一笑して言う。

『この世界を維持することは、もはや不可能な事だ。お前がやっているのはただの悪足掻きだ。何も変らない。逆に事態を悪化させるだけだ』

 ホールガーディアンはあっさり頷く。

『しかし、捨てられると解っていて悪足掻きをする事は正当な抵抗です』

 セーイは前に出るとソウに左掌を向ける。

『西刃の名の下に、我が刀に化せ、百爪』

 セーイの左掌に『西刃』の文字が浮かび、ソウが刀に変化にする。

 まさに常人離れしたスピードで間合いを詰めて斬りかかるセーイ。

『私は負けません』

 ホールガーディアンが指で印を組む。

『カーン』

 空中に不思議な文字が浮かび、セーイを弾き返す。

『なんて強い言霊だ』

 刀状態のソウが驚愕の声をあげる。

 セーイは怯まず、素早く体勢を整えて、横に回りこむ。

 ホールガーディアンは、慌てず一言。

『カーン』

 文字が生み出す防御波動派に再び吹き飛ばされるセーイ。

「強力な技だな」

 吹き飛ばされたセーイの隣に来たコーサの言葉にセーイが頷き、ソウが言う。

『それでも、相手が攻撃してきた隙を突けば、ダメージを与える事が出来るはずだよ』

 セーイは、その隙を掴む為、鋭い視線をホールガーディアンに向ける。

 しかし、ホールガーディアンは決して攻撃をしてこなかった。

『何で攻撃してこないの!』

 ソウの愚痴に意外にもホールガーディアンが答える。

『私の目的は、この世界を護る事だけです。貴方達を殺す事では、ありません』

『やられたな、完全に防御に特化されては、代行者の力ではホールガーディアンを打ち破る事は出来ない』

 コーサの傍に居た蒼牙の言葉にセーイが首を横に振る。

『不可能だと諦めた瞬間が終わりって言ってる』

 ソウがセーイの意思を伝える。

 しかしその前にコーサが立塞がる。

「ここは一度引くぞ」

 セーイが首を横に振るが、コーサは最後の界連鏡を見せて言う。

「これは、俺がもっている。これが無ければ何にも成らないぞ」

 複雑な顔をするセーイを尻目にコーサはその場から離れた。



「勝つ算段はあるの?」

 幼女モードのソウの言葉に近くの町で食事をしているコーサが答える。

「あの技は俺が受ける。その隙をお前達がつけば良い」

 驚いた顔をしてセーイが手で×を作る。

「生身の人間があの防御壁に触れたら、瞬時に死ぬだけだよ」

 ソウの言葉にコーサが子猫モードの蒼牙を見る。

「俺にはこいつが居る。生まれる前からのパートナーのこいつが居るから言っているんだ」

 コーサの言葉に蒼牙が頷く。

『我が力を信じろ』

 蒼牙の自信たっぷりな言葉にセーイも渋々同意した。



 万全の体勢を組む為、その日はその町の宿屋に泊まることになった。

 宿のベランダに出たコーサの手が激しく震えていた。

『怖いか?』

 後ろから入ってきた子猫の姿のままの蒼牙に手の震えを隠して笑みを浮かべて答えるコーサ。

「何を言ってるんだよ。俺は紅雷様の子孫だぞ。この位大丈夫だ」

 蒼牙は鼻で笑う。

『無駄な虚勢を張るのはよせ。はっきり言っておいてやるぞ、ホールガーディアンの防御にぶつかってお前が生き残れる可能性は五割行けば良い方だ』

 蒼牙が告げる真実に息をのむコーサ。

『今だったら止める事は出来る。あれの手助けを出来る存在を探してくれば良いのだからな』

 蒼牙が淡々と忠告するが、コーサは首を横に振る。

「俺は約束をした。俺があいつをポイントまで連れて行くと。だから俺がやる。もちろん死ぬつもりも無い」

 苦笑する蒼牙。

『無鉄砲な所は本当に紅雷に似ているな。私も奴の事を言えなかったがな』

 そこに幼女モードのソウがやってくる。

「やっぱり無理やりやるつもりだったんだね?」

 蒼牙はあっさり頷き、コーサが慌てて言う。

「セーイには言うな」

 ソウは肩を竦めて言う。

「言えるわけ無いじゃん。もし知ったら、無理でも独りで何とかしようとするからね」

 ソウも薄々気付いていた、セーイ単独では、あのホールガーディアンには勝てないことを。

『八百刃は、何故、セーイ達を異世界との要としたのだ? 八百刃獣に問題の役目をやらせると我々は考えていたぞ』

 蒼牙の質問にソウが星空を見ながら言う。

「セーイ達って実は戦争孤児だったりするの」

 その言葉に驚くコーサを尻目にソウが話しを続ける。

「今までも何人もの戦争孤児を育ててた。でも彼女達は、少し違うんだよ」

「何が違うんだ?」

 コーサが聞き返すとソウは、悲しそうな顔をして告げた。

「セーイ達は、全員死にかけていた。それこそ八百刃様でも手の施しようの無いくらい。それでも周りに居た無数の死骸に護られた結果だった。セーイ達の一族は力があって、周囲の国々から畏怖されていた。そしてそれが起こった。周囲の国が一丸となり、畏怖の対象だったセーイ達の一族を滅ぼそうとした。結局生き残ったのはおびただしい死骸に護られたセーイ達だけだったんだよ」

 壮絶な話に息をのむコーサ。

「そのセーイ達も八百刃様の力をもってしても生き残らせるのは至難だった。その為に八百刃様は、世界を繋げる為に溜めていた力を使うしか無かった」

 その言葉に蒼牙が納得した顔をする。

『なるほどな、本来なら神でしか生み出せない筈の代行者を四人も同時に生み出せたのは、事前の準備の為だったのだな?』

 頷くソウ。

「本来だったら、上位の八百刃獣にその力を付与する予定だったの」

 セーイの眠っている方を見て蒼牙が言う。

『つまりこの十年は、八百刃があの娘達を要にするかどうかを悩んだ期間か?』

 ソウは答えないが否定もしない、それが回答だった。

「関係ない、あいつらは立派にその役目を果たした。そしてセーイもその役目を果たす。それだけだ!」

 無理やり話しを終わらせて、部屋に戻ろうとするコーサの腕をソウが掴む。

「最後に約束して、死なないって」

「死ぬつもりは無い」

 前を向いたまま答えたコーサをソウが魔獣としての強大な腕力で床に叩きつけてその目を睨む様にして言う。

「もしも貴方が死んだらセーイの心に深い傷が出来る。あたし達はそんな事を許さない」

 その真剣な眼差しに、戸惑うコーサだったが覚悟を決めて告げる。

「俺は絶対死なない。死んでセーイの重しになるなんて無様なまねは絶対しない。どんなに情けなくても生き残る」

「当然だよ」

 部屋に戻っていくコーサと蒼牙を見送った後、ソウがベランダの死角に声をかける。

「あいつの覚悟は理解出来たよね?」

 死角から出てきたセーイが頷く。

 ソウは幼い外見とは、不釣合い大人の表情で言う。

「あの時あたし達は猛反対した。特にセーイは代行者の能力を得ても目が見えないままな程の重傷、世界の人々を救う為の大切な力をロスする可能性があったからね」

 セーイは、驚いた顔をせず普通にその言葉を受け止めた。

 セーイ達は知っているのだ、ソウ達八百刃獣は、最終的には八百刃の事を最優先すると。

「でも今は八百刃獣の全員があの判断は正しいと認めているよ。安心して」

 セーイが嬉しそうに頷いた。

「あたし達も寝ようね」

 セーイとソウも部屋に戻っていくのであった。



 セーイ達は再びホールガーディアンの元にやって来た。

『何度やっても同じです。私は、この世界を護ります』

 ホールガーディアンの言葉にコーサが前に出る。

「今度は俺がやる! 絶対その防御を打ち破ってやるからな!」

 そう言った後、コーサはセーイに界連鏡を渡そうとするが、セーイは、首を振って受け取りを拒否する。

 コーサが首を傾げると、もう刀の姿に成っているソウが答える。

『死なないんでしょ? だったらセーイの攻撃が決まった後に直接渡してよ』

 その一言に苦笑しながらも頷くコーサ。

 そして蒼牙が蒼い虎の姿に戻る。

『行くぞ、コーサ』

 頷き、蒼牙に手を向けるコーサ。

『血の盟約に従い、共に敵を貫く槍と化せ、蒼牙』

 コーサの手に槍の姿に変化した蒼牙が握られる。

「行くぞ」

 蒼い雷を放つ蒼牙でコーサが突貫を試みる。

『カーン』

 ホールガーディアンが防御波動波を放つ。

 蒼い雷撃を纏った蒼牙が、ホールガーディアンの防御波動波とぶつかる。

 強烈な衝撃がコーサを襲い、コーサの服が衝撃で破け散る。

「負けて溜まるか!」

 コーサが絶叫と共にそこで踏みとどまる。

『次で終わりです』

 ホールガーディアンが次の防御波動を放とうと力を集束した時、一気にセーイが間合いを詰める。

『西刃の名の下に、我が力全てを爪に託さん、西百爪セイビャクソウ

 セーイの左手の『西刃』の文字が激しく輝き、ソウが大きな爪の形に変化して、ホールガーディアンを切り裂いた。

『私は最後の希望、負けるわけには行きません』

 上半身だけになったホールガーディアンが、セーイにしがみつく。

『離れろ!』

 力を使い果たし、子猫の姿に戻ったソウが叫ぶが、同じく力の大半を使い果たしたセーイを確り捕まえたホールガーディアンを外せないで居た。

 セーイすら死を覚悟した時、ホールガーディアンの頭を槍の蒼牙が貫く。

 振り返ると不敵な笑みを浮かべたコーサが居た。

『最後の最後で良いところ持って行ってくれたね』

 ソウが笑顔で愚痴って、ホールガーディアンから開放されたセーイが駆け寄ろうとした時、コーサが崩れていく。

 セーイの声無き声があがった。



『女の子を泣かすなんて最低な男だよね』

 子猫姿のソウがセーイに膝枕されているコーサの頭に猫パンチをいれる。

「言わないでくれよ。自分でも反省してるんだから」

 ばつが悪そうな顔をして、まだ泣いているセーイの顔を見上げるコーサ。

「もう大丈夫だから泣き止んでくれないか?」

 セーイは、必死に涙を堪えるが、涙が流れていく。

『全てお前が悪い』

 子猫姿の蒼牙の言葉に味方が居ない事を悟るコーサ。

「泣き止むまでずっと傍に居るよ。だから最後のポイントを繋げろよ」

 セーイも頷く。

 セーイに肩を借りてコーサはホールガーディアンが守護していたポイントに向う。

「さあやるぞ」

 コーサが懐から界連鏡を取り出してセーイに渡す。

『これで、四方の扉が開くね』

 ソウの言葉にコーサが頷く。

「後は、八百刃様しだいだ」

 自信たっぷりな顔なセーイが界連鏡をかかげる。

『界連鏡よ、我が魂に応え、真の力を解放し、異界との道を切り開け』

 そして最後の異世界が繋がるのであった。

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