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覚悟ある者達

トーウの番、そして四つ子の目的が達成する時が来た

 ホープワールドの東方にある最大の森林、ドラゴーン大森林



「ようやくドラゴーンの奴等と連絡とれたよ」

 コーサの言葉に酒場でバイトしていたトーウが近くのテーブルを拭きながら言う。

「良かったと言えば良かったんだけど……」

 歯切れの悪い言葉にコーサが言う。

「次の目的も解ったのに何景気悪い顔してるんだ?」

 トーウは、上を見る。

「東って事はあちきの番でしょ? そうなると最後に残るのはセーイになるんだよ?」

 コーサも困った顔をする。

「未だに二階で泣いてる奴が最後になっちまうな。もう少し待つか?」

 難しい顔をするトーウだったがそこに新狼がやってくる。

「時間はあまり無い。八百刃様の所に紫縛鎖が接触してきたらしい。世界を支える神に限界が近づいてきた証拠だ」

 時空神、新名に経過を報告して来た新狼の言葉にコーサが舌打ちする。

「時間を無駄には出来ないな」

 トーウも渋々頷く。

「仕方ないね」

 そこにいつもセーイの傍に居るソウが幼女の姿になってやって来た。

「セーイも代行者だよ。甘く見ないで」

 そう言って指さした先に荷物をまとめたセーイが居た。

「そうだね。行こうドラゴーンに」

 トーウの言葉に一同が頷いた。



「気配は感じられるけど、近づけない」

 トーウがぼやく。

「ここは、異界との繋がりが深い為、空間が歪んでいるからだな」

 新狼の言葉に、チビ竜モードのクウも頷く。

「空間が歪んでいたんじゃ、目的地の方角が解っても近づけないな」

 幼女モードのソウの言葉に子猫姿の蒼牙が言う。

『力技で進むという方法もあるぞ』

 コーサも頷く。

「そうだよな、これだけの力の持ち主が居るんだ、目的地まで強引に道を作れば良い」

 苦笑するトーウ。

「それって強引って言わない、ただ乱暴なだけだよ。確かに新狼さんの力を使えば、今言った事は出来るかも知れない。でもそれでこの森の生き物は下手をすれば全滅だよ」

『世界を救う為だ、多少の犠牲はしかた無い事だ』

 蒼牙の言葉にトーウは首を横に振る。

「大を助ける為に小を犠牲にするなんて考え方が通るなら、この世界の全ての生き物が犠牲になるのが正しい筈だよ。だってママが神様になる事は、周りの世界の全てが待ち望んでる事なんでしょう?」

 蒼牙が渋々頷く。

『解った、しかし時間が無いぞ。ここで犠牲を躊躇して、世界の滅びに間に合わなかったら意味が無いぞ』

 トーウも頷き、右手をクウの方に向ける。

『東刃の名の下に、その力を解放せよ、空道竜』

 トーウの右掌に『東刃』の文字が浮かび、クウが元の龍の姿に戻る。

「時空の歪みにあわせて動いて、あちき達は、その歪みを踏まえた上で動くから」

 クウは頷くと、時空の歪み自分の体で示す。

「なるほどな、歪み方を観測して、その歪みを計算して動けば、自分の行きたい方向に動けるというわけだな」

 新狼の言葉にトーウが頷き移動を再開した。



「こっち来ないでよ!」

 トーウがそう叫びながら、必死に走る。

 それを追う様に竜としては小柄だが、人の三倍の大きさがある竜が動く。

 その爪がトーウを捉えようとした時、その腕をセーイが八百刃の生み出した神剣を右手で振り下ろして腕を切り落とす。

『西刃の名の下に、我が刀に化せ、百爪』

 セーイの左手に『西刃』が浮かび、幼女モードだったソウが刀に変化する。

 セーイは左手に掛かった勢いをそのまま使い、竜の首を切り落とす。

 汗を拭うトーウ。

「ありがとう。しかし、魔獣じゃない竜に会うなんて、感知できなかったから危なかったよ」

 コーサが驚く。

「今の魔獣じゃないのか?」

 頷くトーウ。

「魔獣って神の欠片から出来てるから、独特の波動を放ってるの。いまのあれは生物としての竜。多分異世界から来たんだよ」

 コーサが唸る。

「竜って生物が居たのか? てっきり俺は魔獣のクラスアップしたのが竜だと思っていたぞ」

「昔は竜と言う生物も存在したらしい。新名様の話では、初期の地上を均す為の生物として大量に存在していたが、均しが終わった後は強大な力ゆえに殆ど滅びたと言われている。強大な力を持つ神の欠片を受胎出来たのが竜だけなので、強大な力を持つ魔獣に竜が多いらしい」

 新狼の説明にトーウが頷く。

「詰り逆説なの、竜の魔獣が強力な力を持っているのではなく、強力な力を放つ神の欠片が竜位しか、受け切れなかったって話しだよ」

 コーサが蒼牙を指さす。

「でも竜以外にも強力な魔獣は、居るぞ?」

『我や白牙は特例だ。そして力そのものの大きさは、我も白牙もそれほど大きくない。戦闘に特化した能力ゆえに強く思われるが、力の総量のみならば他の魔獣とそう変らない』

 蒼牙の説明に頷くコーサ。

『勉強会を開いてないでさっさと行こう』

 刀のままのソウが急かす。

「そうだね、急がないとね」

 目的地に向って突き進むトーウ達であった。



 そんな中、トーウ達は、一つの町に着いた。

 そこには不思議な事に竜と人とが共同生活を送っていた。

「信じられない風景だな」

 コーサの言葉にトーウも頷く。

 なにせ、自分の数倍もある竜と村人達は普通に会話しているのだから。

「ついでだから異界について聞いてみましょう」

 トーウがそう言って、情報収集を開始した。



「じゃあこの町の竜は異界から逃げてきた連中な訳?」

 トーウの言葉に、最年長になる竜が頷く。

『わし等の居た世界は、竜の力が絶大での。竜以外の生物と仲良くしようとする竜には辛い世界じゃった』

 唸るトーウ。

「そうなるとこの世界の人間や生物が移民するには不適当な世界なのか?」

 コーサの言葉に、長老が驚く。

『例え穴があろうとも、人の身で異世界に行くのは無謀だぞ』

 トーウは手を横に振って言う。

「そっちは大丈夫。神名者と神が協力して行うから。それより移民した先にそんな問題あるとなると少し考え直さないといけないのかも」

 そこに新狼が長老を見て言う。

「貴方達は元の世界を変えるつもりはあるか?」

 その言葉に長老が複雑な顔をする。

『数が違い過ぎる。とても敵わない』

 その一言にトーウが断言する。

「だったらあちきが力を貸すよ。貴方達の人や他の生物と仲良くしたいと言う気持ちが本物だったら、八百刃が力を貸すよ。それは八百刃の代行者である東刃が約束する」

 トーウが右掌の『東刃』の文字を長老や周りに居る竜達に見せる。

 長老はその文字の力を凝視して言う。

『確かにその力があれば、しかし大きな争いになれば被害も大きくなるのでは?』

 トーウが頷く。

「だから大きくなる前に終わらせる。どうせ、一部の強力な竜がえばっているんでしょう? そいつらを圧倒的な力で倒せば良いのよ」

『確かに何万年も生きる竜達が絶対君主の様にしています。しかし、彼らの力はこの世界の神に匹敵します』

 長老の反論にトーウは余裕たっぷりな態度で言う。

「この世界の神様程の力があったとしても、八百刃様の前では関係ない。相手が他者を否定するものならば絶対に勝てる!」

 周りの竜達も興奮してくる。

『解りました。そう言った事ならば協力して、元の世界を変えて行きましょう。そうなるとこの世界で溜め込んだ宝はどうするかのー』

 そう言って、視線を向けた先にある宝石の山に驚くトーウ。

「……凄い宝ですね」

『しかしこの世界では、そこそこ価値があったかもしれんが、向うの世界では普通の物が大半じゃ。元の世界を懐かしむ為に集めておったが、元の世界に戻る以上、不要の長物じゃな』

 トーウが目を輝かせて言う。

「それじゃあ、協力賃として貰って良いですか?」

 長老が首を傾げる。

『お主も我等の世界に行くのであろう。そうなれば屑になるぞ?』

「良いんです。八百刃様への捧げ物にしますから」

 トーウがガッツポーズを決める中、長老が頷く。

『そう言う事なら問題ない。好きなだけ持っていってくれ』

 トーウがクウの方を向いて大声で言う。

「クウ、これをママの所に送って。これでママの借金が無くなるよ」

 うきうきしているトーウは、気付かなかったが、回りからの視線はかなり冷たくなっていた。



「今度もまた凄まじい姿だこと」

 トーウのホールガーディアンに対する第一声に答える様に、ホールガーディアンの七つの首から同時にブレスが放たれる。

 セーイは、咄嗟にトーウを担いで横に飛ぶ。

 新狼は、空駆馬に乗って上空に避ける。

 コーサは最初から後方に居たので、迫ってくるブレスもそれ程強力でないので、子猫の姿のままの蒼牙の爪の一振りで拡散される。

『どうやって倒すの?』

 刀モードのままのソウの言葉にトーウが言う。

「異世界の竜をベースにしている以上、生命力は高そうだね。まともに勝負していたら、こっちが先にばてる。ここは大技で一発勝負だよ」

 トーウは、右掌の『東刃』の文字を上空に避難していたクウに向ける。

『八百刃の神名の元に、代行者、東刃が求めん、空道竜を媒介に、天に道作りし汝を召喚せん。天道龍テンドウリュウ

 クウに共鳴するように、天空が割れた様に、巨大な竜、天道龍が現れる。

『トーウよ、我が力、存分に使え』

 トーウが頷き、『東刃』の文字を輝かせる。

『東刃の名の下に、天道龍よ、異世界への道を生み出せ! ワールドホール!』

 天道龍が天を包むような大きな円を描くとその中心が異界と繋がり、ホールガーディアンを吸収し始める。

「倒すのは面倒だから、退場してもらうよ」

 トーウが自信満々に宣言した時、それが起こった。

 元々不安定だった空間が、天道龍の力で一気に決壊し始めたのだ。

 舌打ちをしながら新狼がその力を空間維持に費やす。

「今すぐ天道龍の力を止めろ!」

 トーウは直ぐに頷き、天道龍の力を停止する。

『空間が不安定だと思ったがここまで酷いとは、いよいよ時間がない見たいだな』

 蒼牙が更に緊迫感を高める。

「俺が空間の維持をしていられる時間はそんなに長くない。早くホールガーディアンを滅ぼせ!」

 新狼の言葉に、トーウが慌てる。

「でも、竜を短時間で倒す方法なんて……」

 その時、セーイがソウを左手に、八百刃の神剣を右手に、ホールガーディアンに向っていく。

 ホールガーディアンは、七つの首で、次々とブレスを放ち、牽制する。

 しかし、セーイは止まらない。

 ブレスをソウの一振りで蹴散らし、八百刃の神剣を胴体に投げつける。

『トーウ、一点集中だ! あの八百刃の神剣が刺さった先にポイントがある。強引に突っ込め!』

 刀状態のソウが、そう言った時、八百刃の神剣を失って攻撃力が半減したセーイにホールガーディアンの尻尾がヒットする。

「セーイ!」

 トーウが叫ぶと、吹っ飛ばされたセーイは、片手を挙げて平気な事を示す。

 トーウは、深呼吸をしてクウに飛び乗る。

「テンパパ、あちき達に全力のブレスをぶつけて!」

 天道龍は、敢えて問う。

『失敗すれば代行者でもただではすまないぞ?』

 トーウは、躊躇せず宣言する。

「セーイがあそこまでがんばったのにあちきが怯む訳には、行かない!」

『お前の覚悟、お前達を育てた我々として誇りに思う。その覚悟に答えるため、全力で行く!』

 天道龍の砂漠に道を作り上げる圧倒的な力の篭ったブレスが空間防御を張ったクウに直撃する。

「どうするつもりだ?」

 コーサが呟くと、いつの間にかに隣に来ていたセーイの手に握られていたソウが答える。

『空道竜は、元々天道龍の分身みたいな物、天道龍の力をその身に蓄える事も出来るんだよ』

「それじゃあ、強力な攻撃になるな」

 安堵の顔を見せるコーサに心配そうな顔をするセーイ。

「何か問題でもあるのか?」

 コーサの質問にソウが答える。

『本気の天道龍の力を受け止めきる容量は空道竜には無いよ。その身に溜めた力を完全に使い切れなければ、トーウもただではすまない。でもそれ位の力でなければ、ポイントまで達成できない。鏡の用意をお願い』

 コーサが緊張しながらも、界連鏡の用意を始める。

 天道龍の力でブレスを弾きながら突き進むトーウ。

「決める!」

 八百刃の神剣に向って特攻をかけるクウに乗ったトーウ。

 ホールガーディアンに大穴が空き、その中心にトーウが飛び移る。

『界連鏡よ、今こそその力を解放せよ!』

 コーサが界連鏡をトーウに向って開放する。

 界連鏡がトーウに手に渡る。

「それじゃあやるよ!」

「駄目に決まってるだろうが!」

 トーウが宣言に被せるように新狼が怒鳴る。

「このまま異界との繋がりを作れば、いっきにこの空間が崩れるぞ」

「でも、今しかチャンスは無いよ!」

 トーウが反論した時、空駆馬に乗った新狼がトーウの隣に行く。

「俺がこちら側から空間を支える。それしかあるまい」

「もう二度とこちらの世界に戻れないけど良いの?」

 新狼は鼻で笑う。

「お前等と一緒にするな。俺は、全てが終わった後、新名様が居る場所に戻る事など容易だ」

 新狼は、空駆馬の頭を撫でて言う。

「行け」

 空駆馬がコーサの隣に飛ぶ。

「そいつは、お前に預ける。自由に使え」

 そしてトーウが呪文を唱える。

『界連鏡よ、我が魂に応え、真の力を解放し、異界との道を切り開け』



 界連鏡が発動し、その力による世界の歪みを新狼が食い止める中、トーウは世界の境でセーイを見る。

『一人で大丈夫』

 セーイは涙を流しながらも必死に頷く。

『コーサ、泣き虫な子だけどよろしくね』

 笑顔で告げるトーウにコーサは、強く頷く。

「任せておけ、最後のポイントには、俺の命を犠牲にしてでも到着させる」

 その言葉にトーウが首をふる。

『そんな考えじゃ駄目だよ。犠牲を求める勝利は何も生み出さないよ。どんな事があっても生き残って未来を掴む。それこそが正しい戦いだよ』

「解ったよ」

 苦笑しながら頷くコーサ。

 涙を拭ってその場を離れるセーイとコーサであった。

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