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希望を繋ぐもの達

ついに真九との直接対決の時が来た。そして四つ子は、世界の秘密を知る

 ローランス大陸の王に支配されない聖地、マナ



「ここが問題の聖地、マナ?」

 トーウの言葉に頷く、コーサ。

「ああ、前の時空神真名が滅びてから、衰退の一途を辿って居たのを、突如現れた真九が世界を滅びから救う為の組織、九盾として再興したんだ」

「世界を滅びから救うって、どうしてママを狙うのかしらね?」

 ホークの言葉にコーサは少し驚いた顔をして言う。

「お前達は聞いていないのか、この世界の終末を?」

 その言葉に子猫姿のソウが答える。

『セーイ達には、真実はまだ早いと判断しているよ』

 コーサの隣に居た、蒼い猫の姿をした魔獣、蒼牙ソウガが言う。

『確かに、八百刃に似て、成長が遅そうな小娘達にはまだ早いな』

 ナーンが戸惑いながら質問する。

「どう言う事ですか?」

『まだ知らなくても良い事だよ』

 ソウが即答するが、トーウが納得しない。

「ママが何であちき達に秘密にするの?」

『それだけ大事なのだ』

 蒼牙の年輪を感じさせる言葉に、トーウは反論を出来ない。

「とにかく今は、九盾を壊滅させるのが先だな」

 コーサの言葉に、四つ子は頷き、真九が居ると思われる神殿に向っていく。

 その後ろ姿を見ながらコーサが言う。

「八百刃様は、俺に判断させるつもりなんだな」

 コーサの影が不自然に頷く。

 コーサは、胸に大事にしまった包みに手を添えると蒼牙が言う。

『最後の希望の担い手に相応しいかどうかをな。しかしもう時間はあまり残されていない。これ以上遅延は無理だからこそ、今回の騒動を娘達に任せたのだろう』

 コーサは、頬をかきながら言う。

「もしもの時は、どうするんだ?」

『その時は、自分の大切な者だけをつれて逃げるしかあるまい。それにはその力がある』

 蒼牙の答えにコーサが言う。

「もどかしいな、最後の希望を持ちながらそれを使いきるだけの力がないなんてな」

 そして四つ子を再び凝視して呟く。

「人類の運命はお前達次第だぞ」



 九盾の抵抗は熾烈であった。

 相手を殺せない状況に四つ子は、苦戦を強いられて居た。

「もーキキの力を使ってふっとばす!」

 ホークが切れそうになるのを見て、溜息を吐いてトーウが右手に巻きついて居た、幼竜の魔獣、空道竜、クウを開放する。

東刃トウバの名の下に、その力を解放せよ、空道竜』

 トーウの右手に『東刃』の文字が浮かび上がる。

 クウが巨大化して空中で円を作り、トーウはその円の中心に手を向けたまま呪文を続ける。

『八百刃の神名の元に、代行者、東刃が求めん、空道竜が造りし道を通り、八百刃獣ヤオバジュウよ、御力を示し給え、如意森人ニョイシンジン

 クウが作る円より、一匹のオラウータンの八百刃獣、如意森人が現れる。

「ニョイパパ、あそこまで道作って!」

 如意森人は、頷く。

『任せろ!』

 如意森人は、神殿の二階まで腕を伸ばすと、四つ子とコーサ達は、その腕を駆け出す。

「させるか!」

 周りの九盾が妨害をしようとするが、如意森人が、残った手で牽制する。

 無事移動した所で、如意森人の手に金貨を握らせてトーウが頭を下げる。

「ニョイパパありがとう」

 腕を縮めて、傍に来た如意森人が少し不安げな顔をして言う。

『呼ばれた以上、手助けが可能だ。最後まで付き合っても構わないぞ?』

 トーウは首を横に振る。

「あちき達は出来るだけ自分達の力だけで進みたいの」

 残念そうな顔をして如意森人が頷く。

『気をつけるのだぞ』

 戻っていく如意森人を見送って四つ子とコーサ達が奥に進むとその先を、無数の触手が邪魔をする。

『ここは通さない』

 舌打ちをするトーウ。

「人を核にした終末の獣がまだ居たの!」

 それを見て、ナーンが背負ってきたリュックに入っていたパーツを素早く組み立て、大筒を作る。

『我が声に応え、我が剣よ、集いて爆炎を生み出す砲と化せ、爆炎砲』

 ナーンの額に『南刃ナンバ』の文字が浮かび、大筒が爆炎砲にパワーアップする。

 ナーンの懐に居た、火の羽根を持った魔獣、火羽鳥のヒバがその動力部に入る。

『南刃の名の下に、その力を我が刃の力とかせ、火羽鳥』

 爆炎砲は、その一撃で、人工の終末の獣に大穴を開ける。

「こいつは僕が相手するから先に行って!」

 ナーンの言葉に頷き駆け出すトーウ達。



 トーウ達が暫く進んだ所で武装した九盾のメンバーが立塞がる。

 構えるトーウの前にセーイが出て、肩に乗っていた白猫モードのソウが肩から降りて言う。

『手練みたいだからここは、セーイが受け持つから先に行ってだって』

 セーイの左手に『西刃』の文字が浮かぶ。

『西刃の名の下に、我が刀に化せ、百爪』

 刀に変化したソウの強烈な一撃で道を作るセーイ。

「無理しちゃ駄目だよ!」

 トーウは、頷くセーイを残して先に進む。



 大きな扉の前に立つトーウとホークそしてコーサ。

「この先に真九が居る」

 唾を飲むトーウにホークが力強く言う。

「任せておきなさい、相手が何者だろうがあたしの輝石魔術には、勝てないわ!」

 トーウは苦笑してから強い眼差しを取り戻して言う。

「そうだね。最強の八百刃の娘のあちき達が負けるわけ無いもんね」

 そして、扉が開かれる。

 真九が待ち構えるように立って居た。

「ここまで来たか。しかし予定通り分断出来た。後は八百刃が滅びるまでお前達を封印するだけだ」

 その言葉にトーウが怒鳴る。

「どうしてそんなにママを滅ぼそうとするの! 前の時空神の敵討ち!」

 真九は首を横に振る。

「理由はもっと切実だ。このまま八百刃が神になったら、この世界は滅びる」

 ホークは、平然と言う。

「そりゃーママは、神様っぽく無いけど、ママ一人の所為で世界が滅びるなんてことないわよ」

 真九は首を横に振る。

「そう言う事では、ないのだ。この世界は神を生み出す為の世界。そして八百刃と言う戦神を生み出すことでその役目を終える。不要になったこの世界は滅び消え行く。我々はこの世界を守るためにも八百刃を神にする訳にはいかないのだ」

 意外な言葉にトーウが感情的に反論する

「嘘だ! そんな訳ない!」

「本当だぞ」

 トーウ達に後ろに居た、コーサが答えた。

 振り返りホークが言う。

「何であなたがそんな事を知っているの?」

 コーサは、肩を竦めて言う。

「俺の一族は百年前からその滅びを知って居たのさ。事情を知った、透連鏡様が当時の八百刃様の力を奪う事で、世界の滅びまでの時間を延ばした。その存在すら捨ててな」

 真九が納得した顔になる。

「なるほど、八百刃程の神名者が神になるのに二百年はかかり過ぎだと思って居たが、そんな事情があったのか。しかしそれを知って居て何故お前は八百刃の代行者の後ろに居る?」

 コーサは肩をすくめる。

「色々事情があるって事だよ」

 トーウが必死に否定する。

「ママはそんな事しない!」

 そんなトーウに真九は淡々と答える。

「真実は一つだ。八百刃が戦神になれば、この世界が無くなる。それだけは間違いない事実だ。だからこそ私はお前等を滅ぼせない。お前等を滅ぼし、その力が八百刃に戻る事があっては、世界が直ぐにも滅びる事になるからだ」

 愕然として、膝をつくトーウ。

 しかしホークが真っ直ぐ真九を見て言う。

「だから何? 命乞い?」

 意外な言葉に真九が戸惑う。

「私の話しを理解出来ないのか?」

 ホークは首を横に振る。

「あたしは、ママを信じる。ママは、普通の人を大切にした。神名者だからといって奢らず、常に沢山居る人間の一人として生活をし、正しい戦いをする人達を助ける為に全力を尽くしていた。あたしに言わせれば、不器用としか言いようが無い生き方だけど、そんなママの生き方をあたし達は誇りに思ってる。そんなママが神になる事で、世界が滅びると知って居て、何もしないなんてありえない。だからママの邪魔をするあんたは、代行者、北刃が倒す!」

 ホークは、胸を広げ、『北刃』の文字をあらわにして、蛇の魔獣、輝石蛇のキキが潜む輝石に手を当てる。

『北刃の名の下に、輝石の力を神化シンカさせよ、輝石蛇』

 キキが表に出て、ホークの体に纏わりつくと、ホークの周囲に浮かんでいたルビーとサファイアとエメラルドが激しく輝く。

『ルビーよ、サファイアよ、エメラルドよ、宿りし力を解放し、その力あわせて全てを崩壊させよ、炎氷風崩波エンヒョウフウホウハ

 それは、常人では不可能な、複数の輝石を使った超高度輝石魔術。

 ルビーから放たれた炎の熱とサファイアから放たれた氷の冷気が、エメラルドから放たれた風によって隔離されて真九を襲う。

 炎と冷気の連続攻撃、通常の力では、防ぐ事すら不可能なそんな力に真九の体が大きく吹き飛ぶ。

「やったか?」

 コーサが言うとホークは首を横に振る。

「急激な温度差による、物質崩壊系の輝石魔術、まともに食らえば、体なんて原型は止めない。どうやってかは知らないけど防いだよ」

 ホークの言葉に答える様にふらつきながらも立ち上がる真九。

「空間を完全に遮断したが、それでも物質が破壊された影響がこちらにもおよんだ。凄まじい力だ」

 血だらけの真九を見てトーウが言う。

「あんたまさか魔獣?」

 その言葉に真九は頷く。

「そうだ、我は、真名マナ様の欠片より生まれた、真名様の最後の望み、この世界の滅びの回避を行う為に生まれた、人系魔獣、真九だ!」

 コーサが首を傾げながら言う。

「人系魔獣って何だ?」

 トーウは真九を睨みながら言う。

「本来魔獣は、母体に居る間の動物の体に侵食して発生するの。しかし、その為にはその生き物の魂が邪魔になる。だから通常は、魂の結びつきが強い人をベースにした魔獣は、存在しない筈なんだよ」

 コーサが真九を指さす。

「だけどあいつ人の姿してるぞ?」

 ホークが真九を警戒しながら言う。

「パパ達が人の姿とるのと一緒?」

 トーウは首を横に振る。

「元が通常じゃない、主神だった真名だったから、人をベースとした魔獣になったんだよ」

「その通りだ。欠片といえ真名様の力を持つ私を倒そうというのなら、天道龍か、新名の高位使徒が必要だな」

 真九の言葉に、舌打ちするホーク。

 その時、コーサが懐から何かを投げ出す。

「その鏡の力を使え!」

 ホークは、八百刃の代行者としての直感の赴くままにダイヤモンドを構える。

『ダイヤモンドよ、光の輝きを増幅し、輝きで全てを覆う陣と生み出せ、光輝陣コウキジン

 キキの力で増幅された無数の光は、コーサが投げた四枚の鏡に反射してから真九を襲った。

「無駄だ、空間を遮断するば、如何なる攻撃も致命傷にはならない!」

 真九の周囲の空間がその力で遮断されたが、光は遮断された空間すら貫き真九を襲った。

「馬鹿な?」

 愕然として、自分を囲むようにある四枚の鏡を見る。

「何なのだ、その鏡は?」

 コーサは、鏡を拾いながら言う。

界連鏡カイレンキョウ、透連鏡様の肉体を触媒に、八百刃様の力を使って生み出された異世界との道を繋ぐ為の神器。この世界の最後の希望だ」

 真九は鏡を見て言う。

「成る程な、お前は、この世界を見捨てて他の世界に逃げるつもりなのだな?」

 コーサが頷く。

「そうだ、出来るだけ多くの人間や生き物を他の世界に逃がす為、俺の一族は、もっとも適した異界との繋がりを探し続けている。そして、それを実行する時がもう直ぐ来る。お前の予測通り、八百刃様が神名者で居られる時間は長くないからな」

 真九は最後の力を振り絞り、自分の体内から何かを抜き出すと握りつぶした。

 それは、四つの欠片に分かれて四方に飛び散って行った。

「何のつもり?」

 ホークの言葉に真九が微笑を浮かべて言う。

「あれは、真名様の力の欠片だ。それが向ったのは、お前等が望む異界との繋がり強き場所だ。そこで、この世界を見捨てて逃げるお前達を倒す為に、異界の力を吸収しつづけるだろう。真名様は決してこの世界を見捨てたお前等を許さないだろう」

 そのまま事切れる真九。



 神殿から脱出した四つ子達にコーサが告げる。

「真九が居なくなった以上、九盾も終わりだな」

「そうだね」

 トーウが頷いた時、コーサの影が立ち上がり、鬼の八百刃獣、影走鬼エイソウキに変化する。

『お見事でした』

 影走鬼に驚く、ナーンとセーイ。

「ずっと見て居たんですか?」

 ナーンの質問に影走鬼が頷く。

『八百刃様のご命令で、万が一の時はお助けしろと』

 ホークが過保護な母親に眉を顰める。

「信用無いな」

 コーサが苦笑しながら言う。

「親なんてどこも一緒さ」

 嬉しそうにして、抱きついてくるセーイを優しく抱きかかえながら影走鬼が言う。

『八百刃様からの伝言です。コーサ様から界連鏡を借り受け、異世界を繋ぐ要となれと』

 その言葉に、四つ子は強く頷く。

「ママは、だからあちき達を代行者にしたんだね?」

 トーウの言葉に影走鬼は辛そうな顔をして答える。

『八百刃様は、最後まで悩んでいました。しかし、貴女様達ならやり遂げられると信じて一番大切な役目を下したのです』

 ホークが胸を張って言う。

「当然よ、任せておきなさい!」

「肝心の異界との道を作り出せる場所は解っているのですか?」

 ナーンの言葉に、言葉に詰るホーク。

 トーウがコーサの見るとコーサが真面目な顔をして答える。

「大体の場所なら判明しているんだが、詳細な位置までは、まだだ」

 ホークが神殿の方を見て不満気な顔をしながら言う。

「それにしても真九の奴は、最後の最後で余計な事をしやがったな」

 それに対して、トーウが少し考えてから言う。

「コーサさん、問題の箇所に真名の欠片から生まれた存在があれば、見つけられませんか?」

 コーサが手を叩く。

「真名の力だったら、今判明している範囲から十分に探し出せるぞ」

 トーウも神殿の方を向いて言う。

「真九も、真名もきっとこの世界の生き物を救いたかったんだよ」

 ホークが肩を竦めて言う。

「随分捻くれた助け方だな?」

「通したい意地があるって事だろうよ。それじゃあ行くぞ!」

 コーサの言葉に頷く四つ子であった。

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