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Brain Marionette Online  作者: まるいもの
ステージⅠ
7/67

06

GW五日目午後五時。


―――【Loading】―――


いつもの落ちる感覚と共にBMOの世界に降りる。もうすっかり見慣れた場所、シミュレータールーム。

しかし、それも今日までだ。あの小女ときっちり決着をつけてから次に進む。


「来たわね」


どうやら先に来ていたようだ。


「よう、ちゃんと首は洗ってきたか?」


「ふふふっ、あんたの泣き顔を見るのが今から楽しみね」


暫く睨みあう、もう恒例行事だな。


「時間は今から五分後の五時十分、パスワードは00001でいいわね?」


「ああ、それでOKだ」


「けっちょんけちょんにしてあげる」


「敗北の二文字を刻んでやるよ」


「「ふんっ」」


シミュレーターのハッチを開いて中に入る。

かすかな電子音、スロットにIDカードを差込、リストオープンと声をだす。

すると五項目のリストが、一番下の対戦をクリック。


『時間、パスワードを入力してください』


時間は五時十分、00001といれてスタンバイ。


『入力を確認しました。ただいま五時八分三十二秒になります』


目を瞑り時間が来るのを待つ。


『時間になりました。対戦を始めます。市街地フィールド、制限時間は十分です』


目を開くとそこは、ビルが乱立するオフィス街のようなフィールドだった。

後で分かったのだが対戦でフィールドを選択しないと全て市街地フィールドになるみたいだ。


敵機は何処だ?

レーダーには反応がない。同じ機体だからレーダーによる差はないはず。

俺のスタイルは近接戦一本、懐に入りさえすれば勝ちだ!


ビルとビルの間を【高速機動】で素早く動く。

約一キロほど進むとレーダーに反応が、赤いマーカーが映った。

どうやら最初の地点から動いていない、エルフィンだからな、遠距離主体なんだろう。


素早くビルとビルの間を渡りのこり八00メートルほど、斜め前のビルの陰に渡ろうとした時、激しい振動が機体を揺さぶった。


「なにっ」


敵機のエネルギー弾が機体の左肩にヒットしたんだ。

まだ八00メートはあるんだぞ! まぐれか?


今度は慎重に、少し無理をしてスラスター全開でビルを渡る。

しかし、またエネルギー弾の着弾した振動で機体が激しく揺さぶられる。


「うそだろう……」


まだ六00メートルはあるうえに、俺はビルからビルへ遮蔽物を使って移動してるんだぞ!? このまま着弾を重ねられたら何もできずに終わっちまう。

このまま同じように進むか、それとも覚悟をきめて一気に突き進むか……


どうせジリジリとやられるぐらいなら。


スラスターを全開にして突っ込む、ビル群をできるだけ盾にして【高速機動】で一気に駆け抜ける!

こちらの意図に気づいたのだろう。狙いは甘くなったが激しい銃撃が襲ってくる。


【高速機動】であるときは直角に曲がり、あるときは左右のフェイントを入れて突き進む。

いくつも被弾はするが致命傷だけは何とか避け、残り三00メートルまで接近する。

STバーがガリガリ減っていく。だけどもう止まれないこのまま一気に!


激しい銃撃を潜り抜け残り一00メートル、スラスターを全開にしてジャンプ!

ビルの上に陣取った敵機に向かい突撃する!

のこり五0メートル、エネルギーライフルの銃口が俺のコクピットを捕らえ、警告音が激しく喚き散らす。

まるで時間が止まったような感覚が全てを支配する。瞬く光の集合体が……俺を貫いた。


激しい振動、そして見たくもない GAME OVERの文字。


まったくいいところなしで負けちまった……


シミュレーターをでる、体がふわふわして足元が覚束ない。

シュッという音がして隣のシミュレーターから少女がでてくる。

ヘルメットを脱ぐとそこには、蕩ける様な笑顔が咲き誇っていた。

サラサラと流れる艶やかで瑞々しい黒い髪、見た瞬間吸い込まれそうになる煌めく黒い瞳、蕾のような口からは、鈴のような澄んだ声が聞こえるのを俺は知っている。


絶世の! とつけてもいいような美少女が俺のことを満面の笑みで見つめてくる。

これが今と違うシチュエーションなら俺は一発で恋に落ちただろう。

だが、少女の笑みは今のおれには邪悪な物にしか見えない。

激しく上下に動く長い耳。擬音をつけるならピコピコピコピコピコピコッと聞こえそうなほどだ。


「ふっふふふふ、ふふふふふふふ、勝負あったわね。くふふふ、あーはっはっはっはっはっ」


フォォォォォォッ、くっ悔しいぃぃ悔しすぎるぅぅぅぅぅ!


「んーーー気持ちいぃぃ! うふふ、私からのプレゼント、存分に悔し涙をながしてね」


ウオオォォォォォッ! しかし言い返せない、あれだけ見事に負けたんだ。でも、だけどっっっ!


「もっもう一度だ! 次は機体を変えてもう一度勝負だ!」


きょとんとした顔をしたあと、なにか思いついたようににんまりと笑う。


「んー別に私はそれでもいいけど、でも、どうしようかなーもうちょっと言い方ってのがあるような?」


ちらりとこちらを見るその顔は獲物をいたぶる猫科の表情のそれだ。


「んぎぎぃぃ、もっもう一度、俺と機体をかえてぇぇぇ、しょっ勝負してくださいぃぃ」


「はい、よくできました。そうね、四日後の五時からならいけるわよ」


「それでぇぇぇ、お願いしますぅぅぅぅ」


全身をブルブルと震わせて、何とかお願いを言い切った。


「じゃね~」


ピコピコと長い耳をパタつかせ、鼻歌を歌いながらシミュレータールームを出て行く少女。


「くっそおおぉぉおおお!」


ヘルメットを床に叩きつける。撥ねて転がっていくヘルメットがある程度の距離に達すると、俺の手の中に戻っていた。

それが馬鹿にされたような感じがして、何度も何度も叩きつけては戻ってくるという不毛なことをその後三十分は続けてしまった。



        ◆ ◆ ◆ ◆



先ずは機体を新しいやつに変える。

ならば何処に行けばいいか。この基地でありそうなのは大佐か整備長か。

俺は整備長にあたりをつけてハンガーへと走る。


「ぬおおぉぉぉぉ整備長おおぉぉぉぉ!」


全速力で走りこむ俺をみて整備長の周りにいたプレイヤー達が慌てて場所を明ける。


「やぁKeizirou何か用かい?」


クルリと向きを変えて俺の声に応える整備長。その横に三つのリストが浮き上がった。


【機体整備】

【機体乗り換え】

【機体搬入】


この【機体搬入】というのが怪しい。

クリックしてみると、リストにある機体を取り寄せる事ができるらしいことが書いてある。

ビンゴだっ!


えーと、機体ランクCと機体ランクBがあるのか。俺が求めている性能は機動力だ、先ず機体ランクBから調べてみる。


全部で5種類あるけどおれの御眼鏡にかなったのは一機のみ。

機体名【コンダードゥ】


機動力B 命中補正C 耐久力C 特殊兵装C 武装D


スリムなボディに流麗な曲線をしているアームとレッグ、ヘッドは均整の取れた大きさで目にあたる部分はバイザーになっていて、背には大きめで二枚翼になったスラスターエンジンがついている。


これだ! 「整備長、これに乗せてくれ!」


「んん?これはKeigirouじゃ支給されるのは無理だなー。階級が中尉にならないと」


なん……だと? 中尉? 俺のいまの階級は……軍曹。


まだだ、ランクCの機体が残っている!

俺はランクCの機体のページをスライドさせていく。ランクCは全部で4機その中で機動力が高いのは、あった!

機体名【スワーロゥ】


機動力A 命中補正E 耐久力E 特殊兵装E 武装E


まるで骨のように細い外骨格。ヘッドは丸い球体に人と同じ目がある部分にカメラアイをつけた簡単な作り。

アームやレッグもかなり細く見た瞬間馬力は全くないと思わせる。背につけたスラスターだけはBランクのコンダードゥと同じスラスターエンジンだ。


全身の七割をパラサイトによる変質された樹木フレームで作る事によって、最軽量の機体を作り上げる事に成功。

コクピットと最低限必要な部品しか金属類は使われていない。機体がしなる事によって不足されるパワーを補っている。

背につけたスラスターエンジンによって圧倒的な機動力を得たが、他の全てが犠牲になってしまった特殊な機体。


これだ! 「整備長! これだっこれに乗せてくれ!」


「んん?これはKeizirouじゃ支給されるのは無理だなー。階級が曹長にならないと」


「NOOOOOOOO!」


これもだめなのかっ! どうすればいいんだっ。

俺の今の階級は軍曹……曹長ってどれ位偉いんだ?

あっ、そういえばステータスに階級を見る事ができたっけ。


たしか「ステータスウィンドウ」だっけ?

おっ五十センチ四方のウィンドウが空中に浮かび上がる。


【Keigirou】【軍曹】

【ドラゴニュート】♂

【近接戦】 121

【近距離】52

【中距離】 0

【遠距離】 0

【特殊】  0


ふむふむ、スキルリストを押してみる。


種族スキル

【STアップ】25

【クイックアップ】25


近接戦

【高速機動】36


これだけ? どうやらシミュレーターではスキルの熟練度は上がらないみたいだ。

おっと、見たいのはこれじゃない。階級参照ってのがある、これだこれ。


ズラーと並んでいる階級の一番下が新兵、次にいきなり軍曹なんだな。

そして、その次が曹長だ、一つ!? 一つだけならいける。


えーと次は何処に行けばいいんだっけ、ややこしい。

たしか「メインミッション」って口に出さなくてもよかったか。

でた、次は、シミュレーターのステージⅠをクリアしてレノックス大佐に報告ってなってる。


「うおおぉぉぉおおおおお、ターイーサーぁぁぁぁぁ!」


俺は雄たけびを上げながら副司令官室にダッシュした。

一部始終を他のプレイヤー達に見られていたと気づき羞恥で地面を転げまわったのはそれから二時間後の事である。

【STアップ】はスタミナが1.5倍に

【クイックアップ】は思考加速。1秒が1.2秒に感じれるようになる。

【高速機動】は機体を鋭角に動かしたり、曲芸じみた動きを可能にするサポートスキルで、使用中は思考加速も追加されています。

一・二倍速ぐらい。

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