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「それで? その勝負を受けて立って来た……と?」
ケイジロウとラピス、二人が揃って頷くとセイが「はぁぁぁぁぁ~~」と深い深いため息をついた。
「ケイジロウ君が暴走するのは何時もの事として、ラピス君まで先走るとは……」
どうして何時もの事と思われているかはこの際置いておいて、あの場合勝負を受けるのは仕方ない……と思われるのだがどうだろう。
「だって仕方ないじゃない? あそこまではっきりと勝負を挑まれたら逃げるわけにはいかないわ」
「……そうか、今まで気づかなかった私が悪いのか、ラピス君も根っこのところではケイジロウ君と同類なんだね……」
「失礼ね」
どういう意味だ。
「でもよ、受けちまったもんはしょうがなくね? だったらどうやって勝つか考えない?」
「キョウジさんの言う通りですよ、あんな人たちギャフンと言わしたいです!」
「マーナちゃんギャフンじゃ足りない……奴らには生きている事が苦痛になるぐらいの地獄を見せてやらねば気が済まぬぅぅぅぅ!」
ジャックがまさに鬼の形相で抑えきれない怒りを言葉として吐き出す。
リンちゃんがされた仕打ちに今だ抑えきれない怒りが漏れているようだ。今はまだ大人しく話しに加わっているが先ほどまで「殺す殺す殺すヒィィィハハハハッ」と暴れて大変だった。
そのリンちゃんだが、兄であるジャックではなくピスカにべったり引っ付いていることがさらに怒りを底上げして居るのだが、それはまぁいい。
「そう簡単に言うけど、十五対一の戦力さは酷い。下手をしたらこちらは一機も撃墜する事が出来ずに全滅してしまう」
数の差というものはそれだけ覆しがたいものだ。
「考える事はセイに任せた」
ケイジロウが爽やかな笑顔で親指を立てる。清清しいまでの丸投げである。
額に太い血管を浮き上がらせるが、どうせ無駄だろうと諦めのため息を付いて思考をめぐらせる。
百五十対十、真正面からいけるわけが無い、ならば取れる作戦は奇策か奇襲のどちらかだ。
こちらは何も勝つ必要はない、ケイジロウ君とラピス君の実力が噂どおりと認識させればいいのだから。
「あっあの……」
ピスカの軍服の裾を掴みながらリンが小動物の様に怯えながらも覚悟を決め前に進み出る。
「ん? どうしたんだい?」
「こっこれ……使って……ください」
そこに映し出されたのは一つのオリジナルウェポンと二つのとあるデーターだった。
◆ ◆ ◆ ◆
六月十六日午後五時。
『白銀騎士団』にバトルウォーの挑戦を受けてから三日、ギルド『トライデント』に加入したケイジロウたちはバトルウォー専用フィールドで作戦の最終確認をしていた。
今回の対戦に選ばれたフィールドは第二戦闘宙域、半径二万メートルという広大な円形の宇宙空間、広い空間内には暗礁宙域やガス星雲、重力場などがあるが、主戦場となる中心には何も無い広い空間が広がっているシンプルなものだ。
「作戦の最終確認をするよ? 先ずリンちゃんが作ったオリジナルウェポン、ミラージュボールでホワイトファントムの幻影を写したボールを二十個ばら撒く。その間ジャミング波を流して本体が何処にいるか分からなくする」
今の時間は自陣地内で機体や宇宙艦などを配置するために十分ほどの時間が取られている。
「私たちの勝利条件は二つ、ケイジロウ君とラピス君がこのバトルを見ているプレイヤーたちの納得いく活躍をする事、もう一つは敵の大将を討ち取る事」
バトルに参加するのはリンを除いた十人。
「私たちが勝つためには奇策を使うか奇襲をするかしかない、そしてそのどちらでも作戦の軸はケイジロウ君とラピス君の二人だ」
『白銀騎士団』の大将はカリスでこちらはケイジロウだ。
「『白銀騎士団』はおそらく物量で押して来るはず、だからこそ成功する確率は高くなるはずだ。時間まであと一分、さぁ皆行こう!」
十人のスフィアビューにそれぞれの顔を写すディスプレイが広がっている。
皆緊張しているが、どの顔にもいたずらっ子のような笑みが見える。
「うっしぶっ潰す!」
「くそっ作戦だからしょうがないがきちんとリンの仇は取ってくれよ」
「任せといて、リンちゃんの仇もちゃんととってギャフンと言わせてくるから、ね、マーナ」
「ラピスさ~ん」
午後五時十分。
バトルスタートの合図が全機体に送信される。
百五十対十のハンデ戦が今始まった。
「ダスク、ジャミングを頼む!」
「……了解!……」
ジャミングによってレーダーによる索敵を一時封じる。
猶予は三十秒、それ以上はアイテムによってジャミングは破られてしまう。二十個のミラージュボールを広範囲に散布して起動、一瞬にして二十機の真っ白な【スワーロゥ】が現れる。
それに対して『白銀騎士団』は七十機を【ドワーヒュ】で固めこちらを囲むように配置していた。
【ドワーヒュ】の武装力による大量のミサイルポッドを装備、更に七十機という機体数による包囲からの面征圧。
回避力が高いなら、回避する場所すら無くせばいいじゃないという大味ながら効果的な作戦。
さらに残り七十九機には万が一突破された時の為に、近、中距離武器で装備を固めた【コンダードゥ】でバックアップ。
最後にカリスが乗るのは大佐クラス以上が乗る事が出来る全長一キロもある宇宙戦闘艦【エーギル】。
これ以上ないというような布陣を築き上げてきた。
戦闘開始から五分、二十機の【スワーロゥ】の幻影と七十機の【ドワーヒュ】が交戦可能距離に到達する。
放たれる五百発近くのミサイル群が【スワーロゥ】の幻影を全て吹き飛ばす。
更にもう五百発のミサイルを後方に向け発射、次々と『トライデント』メンバーを吹き飛ばしていく。
そして開始から十分、最後まで逃げ回っていた本物の【スワーロゥ】も一機たりとも落とすことなく大量の火線を浴びて宇宙の藻屑となった。
『はっはははっはははははっ、見ろっ見ろ見ろ見ろっなにがホワイトファントムだ、何がブラッドクイーンだ、所詮こんな物じゃないか。ひゃははははっざまー見ろ!!』
カリスがわざわざフィールドの外にいるプレイヤーたちにも聞こえるように全周波数で自分の勝利を喧伝する。
『本当にこんな物か? ……ッ! 何故勝利宣言がされない!?』
ジェジが今だバトルが続いている事に気づいた時、後方に配置されていたメンバーからありえない報告が入ってくる。
『こっ後方から敵襲! アンドレンとキノコがやられ――』
ブッ
『おいっ、どうした返事をしろ! 後方からだと!? 誰か確認をしろ!!』
『こっ後方距離九〇〇〇に白いスペースグライダーに乗った見た事もない赤い機体が現れて攻撃をしてきた!』
「ケイジロウここでいいわ!」
「了解! 突っ込む、フォローは任せた!」
「任された!」
『白銀騎士団』の後方九〇〇〇メートルに現れたのは、真っ赤に染めたワンオフ機に乗ったラピスと、同じく真っ白に染めたワンオフ機に、スペースグライダーの換装パーツをつけた機体に乗ったケイジロウの二人だった。




