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『くそがっ、たかが十機程度増えた程度でどうしてここまで追い詰められるんだ!』
『白銀騎士団』サブマスターのザキがヒステリックに喚き散らす。
既にマスターであるカリスが沈み、ホワイトファントムの暴れっぷりに他のメンバーも浮き足立ちロクな働きをしていない。
その上追い詰めていたはずの赤陣営の機体も攻勢に出、加速度的に被害だけが増えていく。
『ちくしょうが、ふざけんなホワイトファントム! 俺だって【シックスセンス】持ちだ、てめぇなんかに負けるかよ!』
ザキの操る【コンダードゥ】カスタムがケイジロウに向けて持ちえる射撃スキルを全て使いアタックを開始する。
その攻撃は素早く正確で滑らかだ。
真後ろから加えられるザキの奇襲にケイジロウの反応が遅れる。味方を巻き込む事に頓着していない攻撃はケイジロウの肩の装甲を削り、スラスターに一定のダメージを与える。
その代わりに、二機の味方を同士討ちで破壊したのだが。
『ひゃははははっ落ちろ、落ちろ、落ちろぉぉぉぉぉ!』
「このっ野郎!」
ダメージを負ったスラスターでは本来の三分の二の機動力しかない。
が、頭に血が上っている相手に対するならそれで十分。
左右の【ウェパルジャマダハル】から伸びるビームソードを交互に突き刺し、切り払い、打ち付ける。
ザキも咄嗟にビームソードを起動させ対抗するが接近戦に持ち込んだ時点で勝負は決していた。
一合、二合。
それが限界、後は二本のビームソードに蹂躙され吹き飛ばされる。
『何でだーー! 俺が一対一で負けるなんてありえ――』
耐久値を超えるダメージを受け、派手なエフェクトを撒き散らして爆発する。
『くそっザキまで殺られた、こんなのやってられるか!』
そう言い残し【セーレン】に乗っていたプレイヤーが逃げ出す。
それに続き残った『白銀騎士団』のメンバーも次々と撤退していく。
「皆、追撃だ! どうせ敵対したのだったらとことんまでするべきだ。こちらと遣り合ったら唯ではすまないと刷り込むんだ!」
「わっはっ、相変わらずセイは考える事がえぐいな~」
「ほら、行くわよキョウジ」
「了解、了解」
「ケイジロウ君、君が始めた戦闘だ、最後まで責任は取って貰うよ」
難しいしかめっ面をしてケイジロウに最低限の責任を負わせる。
「りょっ了解!」
慌てて追撃部隊に加わるケイジロウたちを見据えながら、セイは今後の展開がどうなるかと思うと深いため息を付かずには居られなかった。
◆ ◆ ◆ ◆
惑星【メイオフ】に所々ある安全地帯の一つに白陣営の基地が在った。
『白銀騎士団』が【メイオフ】での拠点にしている基地だ。
「くそが!!」
室内に備え付けられているグラスを次々に叩きつけ、壊し、ストレスを発散させようとするがそんな物では到底怒りは収まらないとばかりに、充血した目をギョロリとさせて暴れまわる。
「おいザキっ鬱陶しいから止めやがれ!」
禿頭に骸骨の刺青をしたもう一人の『白銀騎士団』サブマスター、ジェジがザキに怒鳴る。
「ああっ!? なんだてめーヤンのか!」
「はっ、負け犬が吼えんな」
一触即発、今にも掴み合いの喧嘩が始まるような雰囲気が部屋を満たす。
「お前達止めろっ、どうせここで殴り合いなんかしてもゲーム規約に引っ掛かるだけだろう!」
マスターであるカリスの言葉に舌打ちをしながらもとりあえずと言った体で従う。
「でもよーカリス、今回の事でギルドを抜ける奴が十人も出たぜ? 多分これからまだ抜けていくぞ。どうするんだ?」
「そんな奴らはどうでもいいんだよ! カリス! このまま引き下がるんじゃねーだろうな!」
ジェジの言葉を遮りザジが睨みつけながら怒鳴りつける。
「分かっている、あいつらは絶対に許さない。見て居ろよ、大勢の目の前で恥じを掻をかかせて叩き潰してやる」
濁った目をして歪な笑みを見せる。
その言葉とカリスの顔を見て、ザキも悪意のある引き攣った笑いを上げる。
唯一人、今回の事に係わっていなかったジェジはバカらしく思うと共に、何処まで堕ちて行くのかを見る事が楽しくもあった。




