表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Brain Marionette Online  作者: まるいもの
ステージⅡ
49/67

11

流砂の洞窟3F、深さは約千二百mも地下へと続く巨大な洞窟。

勿論自然に出来た物ではない。

宇宙(そら)から惑星【マシリアヌ】に初めて落ちたパラサイト、【マザー】と呼ばれる個体は数千匹という大量の卵を胎内に宿し、地中奥深くへとその母体を隠した。

当時の防衛軍には危機感が薄く、パラサイトは墜落の衝撃でバラバラに破壊されたと報告が上がっていた。

それから十年、大地に宿る生命エネルギーを吸収し数千というパラサイトが孵化し、地上へと溢れだす。

慌てた当時の防衛軍長官は大規模な討伐軍を編成するも、パラサイトが作り出した五層からなる洞窟の要塞は複雑に入り組み、大量破壊兵器の運用もままならず数対数の消耗戦へと移行する。

結果は防衛軍の惨敗。

消耗しきった防衛軍では洞窟の要塞を攻略できないと結論を出し、せめてこれ以上の侵略を阻止する為の前線基地を建設、維持する事で手を打つ他無くなってしまった。

流砂の洞窟とはそんな経緯で出来上がったパラサイトたちが作り上げた要塞だった。





ポータルに中隊全員が入る。

ボスの姿は見えない。まだ情報が出回っていないせいでここに居る者でボスがどういう姿をして、どんな現れ方をするのか誰も知らなかった。


「先ずは私のドールたちで周辺を探ってみる。マーナ君の探査型も手伝ってください」

「あっ、はっはい」


セイとマーナのドールたちで広場の奥へと進んでいく。

ボスが出るであろう場所は横幅、天井の高さ、どちらも大きい作りでボスがいかに大きいかを想像してしまいそうだ。


「なんだ、何もでないじゃん」

「だねー、面白くなーい」


お子様二人が何も起こらない事にいきなり飽きてしまったようだ。

だが、確かに何も出てこない。もうすでにドールたちが端から端まで動いている。


「なんだ? なにか条件でもあるのか?」


ジャックが一人集団から抜け出して広場の奥へと機体を進める。


「おいっ一人で先に行くなよ、危ないぞ」

「ふふっこれぐらいで臆すなよケイジロウ、ラピスさん見ててください男ジャックのゆう……」


ドゴォォォォォン!!

一瞬だった、激しい轟音が鳴ったと思った瞬間ジャックが居た真下から巨大なパラサイトが、全長百メートルは在ろうかと思われるワームがその巨体を現したのは!


「んなっジャック、大丈夫か!」

「たーすけてくれ~~」


応答はしているが姿が見えない。一体何処に!!


「上だ!」


ダスクの何気に渋い声が全員を上へと導く。ダスクが喋るのを始めて聞いた……じゃなく、ジャックは!


「うぉぉぉ! つっ潰される!」


在ろう事か巨大ワームの頭に当たる先端にはまるで鮫のようなギザギザの歯が何重にもなって生えている。

ジャックはその牙に今にも――いや今潰されてしまった!


「「「「ジャック!」」」」

「お前、そこはせめて死亡フラグを言い切ってからにしろよ!」


あのバカは機体の親指を立ててサムズアップしながら逝きやがった。


「ちょっと、ジャックがやらちゃったらミッション失敗じゃないの?」


少佐になる為のミッションはジャックが受けていたのだ。ラピスの言う通り失敗になるのか?


「いや、PTメンバーが一人でも残っていれば撃墜されてもクリア扱いになるはずだ」


セイの説明にケイジロウもラピスも少しほっとする。もう一度ここまで来るのは勘弁願いたいといったところか。


「兎に角戦闘開始よ! ケイジロウは突っ込みなさい、他は援護射撃。全員遠距離攻撃を警戒して! GO!」


ラピスのGOサインにケイジロウが素早く反応し巨大ワーム、【ユルルングル】へと飛び掛る。


「ほっ本当に行くのか、ケイジロウ君!」


ラピスの無茶振りに慣れていないセイたち三人は愕然とした表情で、それでも無駄に思考停止せず戦闘に入る。

【高速飛行】で【ユルルングル】の頭上を旋回しつつ隙を窺う、などということはせずそのまま一気に頭の上へ飛び降りる。


「らぁぁあああ!」


二本のビームソードを突き立てて直立している体表を滑り落ちる、二本の焼け焦げた傷跡からドロリとした緑の液体と腐臭がこぼれ、悲鳴のような吼え声が辺りに響く。


『SIYAAAAAAAAAAA!』


ラピスたち六人とドールの一斉射撃が十二の火線となって巨大な体躯を蹂躙する。


「何だこいつ見掛け倒しか?」


少し様子見の為に離れて気を緩める。


「バカ! 油断しないで!」

「え?」


ゴォォゥ!

そんな轟音のような風きり音が耳を打ち、【ユルルングル】の巨体がその図体からは想像できないスピードでケイジロウに襲い掛かる。


「どぅわぁぁあああ!」


素早くスラスターを切り慣性で地面へと落ちるのを利用し【ユルルングル】の一撃を最小限の被害に止める事が出来た。

ライトアームがグシャリと言う音を出しながら弾けバラバラに分解される。衝撃の勢いで機体が洞窟の壁へと吹き飛ばされる。


「くっそっ!」


機体を器用にコントロールし足から洞窟の壁に向かう。ぶつかる瞬間機体全身を使い膝を曲げ、腰を落とし足先から頭頂へと衝撃を逃がしダメージを減らす。


「ケイジロウ無事!?」

「おう! まだまだいける!」


機体越しにほっと安堵のため息が聞こえた。と思った次には激しい叱責が。


「あんたわぁぁぁ! 毎回毎回油断するなと! あれほど言ってるでしょうが! 今度やったら発酵脳と呼ぶわよ!」


ラピス様のお怒りもご尤も、これで何回目だっけ?


「すまん! そっそれよりまだ戦闘中だぞ? セイたちの前でもあるんだし落ち着こう、なっ?」

「ならさっさと戦線に戻りなさい!」

「イエス・マム!」


慌てて【ユルルングル】の頭上を取る。今度は油断せず慎重に。

それを見てラピスも全くっと怖い顔をしながらも気持ちを切り替え戦闘にもど……


「なぁピスカ、あいつらっていつもあんなの?」

「そうだよー見てて面白いよねー」

「俺知ってるぜああいうのを犬も食わぬ夫婦喧嘩って言うんだぜ」

「ラピスねーちゃんのほうが強いね!」


戻らず余計な事を口走るお子様に愛のムチを叩き込む。


「踊りなさい!」


当たるか当たらないかギリギリというラインで二人の足元にビームの連射をお見舞いする。


「うぎゃーーー!」

「ひょわーーー!」


まるで滑稽なダンスを踊らされる二人。


「頼むから真面目にしてくれ!」


セイの切実な声は勿論意味が無かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ