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セイたち三人を加え、八人の中隊編成で流砂の洞窟を進んでいく。
セイは落ち着いた雰囲気をした青年一歩手前といった少年で、髪の色を緑にしているがアバターは自身の生態データーを使っているようだ。
種族はエルフィンで尖った耳に眼鏡が似合っている。
ダクスは禿頭のヒュームでアバターはゲーム仕様だ。浅黒い肌に右頬には大きな刺青が彫ってある。
ルイはワイルディーの少年で歳はピスカと同じ小学五年生らしい。
こちらもアバターはゲーム仕様で何処かの王子様といった姿をしている。
やんちゃ盛りのお子様が二人になったとたん微笑ましいから喧しいへとクラスチェンジしやがった。
「それにしてもパラサイトの多さが半端ないな」
ケイジロウがうんざりとした表情を浮かべ愚痴をこぼす。
「仕方ないさ、パラサイトの本拠地だから【マザー】クラスが奥にいるはず。だからこの洞窟が惑星【マシリアヌ】では一番パラサイトの数が多いだろうさ」
「え? もしかして【マザー】とやりあうのか?」
セイの説明に【マザー】がミッションのボスかと目を剥く。
「まさか、少佐になる為のミッションはその手前といった所だよ。多分流砂の洞窟は5Fまであるんじゃなかったかな」
なるほど、納得し「驚かすなよー」と呟く。
「あんたが勝手に勘違いしたんでしょ」
「むぐっ……」
最近ラピスに一方的にやり込められている。どこかで挽回しなければなどと益体も無い事を考えているとマーナが放った探査系サイ・ドールがパラサイトの一群を発見した。
「距離三キロ先の曲がり角に五十体のパラサイト群がいます。タイプはカマキリにハチ、それとワームがそれぞれ十二、十八、二十です」
少し緊張した声のマーナの報告が全員の注意を引く。
「これまた多いな」
「どうします? ラピスさん」
「そうね……」
少し考えた後不意にセイへと話を振る。
「セイはこの場合どうしたらいいと思う?」
こちらに話が来るとは思わなかったのだろう少し驚いた表情で、しかしはっきりとした声で思う所を言う。
「相手は五十体、乱戦になっては確実に数機は撃墜されてしまうと思う。それにケイジロウ君の動きに私たちが追いつけないので突っ込まれると逆に攻撃が出来なくなってしまう」
そこまで一息で言葉を紡ぎ、眼鏡を中指でクイッと上げながら次に如何するべきか、簡単に概要を説明する。
「先ずは曲がり角の先にある岩陰などに射撃部隊を配置し中距離による射撃でパラサイトの数を減らす、距離三百までパラサイトが近づいたあと射撃部隊は後退、次にケイジロウ君たち近接、近距離隊でパラサイトの足止め、その間に射撃部隊が体制を整え近距離隊の後退援護。マーナ君は後方の警戒。これでワーム以外のパラサイトを殲滅できるはずだ」
直ぐに思いついた作戦にしては理にかなっている。何時も何時もケイジロウが突っ込みそれにラピスが援護をするという考えなしとは雲泥の差だ。
「いいんじゃないか? というより俺たちに作戦を考える頭ってないし」
ケイジロウが情けない事を真顔で言ってのける。
「あのね、あんたが何時も何時も突っ込むから作戦も何も無いんでしょうが!」
「まっまぁまぁ、ラピスさん私もセイさんの作戦に賛成です、それで行きましょう」
マーナがまた何時ものじゃれ合いだな、と思いながらも仲裁に入り二人の機体の間に割り込む。
「そーだよ、ラピスねーちゃんもケイジロウにーちゃんも痴話喧嘩なら後でしなよ」
ピスカが十トン爆弾を投下。
「「「ピスカ!!」」」
ケイジロウ、ラピス、マーナに怒鳴られ「わひゃー」と逃げ出す。
何とも言えない微妙な雰囲気になってしまった。
「ふぅ……とりあえずパラサイト群をどうにかしないかい?」
少し呆れた感じの声でセイがそう提案する。誰も反対する物は居らずそのまま作戦通りの配置に付き殲滅戦が始まった。
ケイジロウとラピスの違う、そんなんじゃないという言葉は皆に聞き流されながら。
激しいビームの雨がパラサイトに降り注ぐ、五十体全てが【ナイト】クラスのパラサイトの団体は思った以上に硬くしぶとい。
「三百を切った、後退して体制を立て直してくれ!」
ラピス、ピスカ、ダスク、ルイの四人による中距離射撃隊にセイの操る四体のサイ・ドールが威嚇射撃を繰り返しつつ後退してくる。
「後ろに敵影はありません!」
後方の安全をマーナが確認、それを機に射撃隊の後退スピードが加速する。
「私も下がる、二人とも少しの間頼んだよ」
二人の近接隊に声をかけながらセイも【ドワーヒュ】を下がらせ始める。
ピスカ、ルイ、ダスクと続いてラピスも二人の横をすり抜ける。
「任せたわ」
「任された。いくぜジャック!」
「応!」
ワームはその場所から動かない、ので近づく敵の数は約二十体、ファーストアタックで十体ほど削った事になる。
昆虫タイプ特有の動きをしながら迫ってくるパラサイトの群れに、ケイジロウの機体が両手をクロスさせ
突撃する。
「オーバークロス!」
少し遅れジャックの機体が蛇腹剣を振り回し、同じくパラサイトへと突撃を敢行。
「オラオラオラオラ!」
蛇腹剣特有のムチの様なしなりがパラサイトに襲い掛かる。巻きつき、引き裂き、打ちのめす。
「お前はなんでそこまで扱いが旨いんだよ! もしかして変態だからか!?」
ムチを振るい全身をボンテージ衣装に身を包むジャックの痴態が皆の頭をよぎる。
「「「「「ぶふっ!」」」」
「ちょっケイジロウふざけた事を言うな!」
二十体ものパラサイトの群れを相手にしているのに暢気な事この上ない。やはりというか集中力の切れたジャックが数体のパラサイトに捕まり囲まれる。
「うおおぉぉぉおお、死ぬ、やられる、変態扱いされて撃墜されるなんていやだああぁぁぁああ!!」
数条の赤い光がジャックを囲んだパラサイトに突き刺さり、吹き飛ばす。
「馬鹿なことを言ってないでマジメニシナサイ!」
ラピスの援護射撃がジャックの窮地を救い、近接隊二人を叱る。だが、
「そういいながら顔が笑ってるじゃないっすかラピスさん!」
というより体全身を震わせて笑いを我慢している。
「だってしょうがないじゃない、ムチを振るってる全身ボンテージ姿のジャックが頭に浮かんだんだもの、脛毛がチャーミングよ」
「「「ぶふはっ!」」」
全員逞しい想像力の持ち主だ。
「おっお前らどうでもいいから援護をくれ、これ以上は無理だああぁぁ!」
因果応報、余計な一言をいったケイジロウはまともな援護を貰えず一人で十体以上のパラサイトを相手取ら無ければいけなかった。
「ハァハァハァ、なっなんとか助かった……」
息も絶え絶えの体でケイジロウがフラフラよろめく。
「ごめんごめん、でもあんたがあんな事言うから悪いのよ?」
まったく心が篭っていない謝罪にむくれる。
「余計な事って、変態か? その一言でそこまでの想像が出来るお前らも可笑しいよ!!」
皆その事は触れたくないので示し合わせたように無視を決め込む。
「おおっと? ボス行きポータルはっけーん、ピスカ早く行こうぜ!」
「りょうかーい、どっちが先に到着するか勝負!」
OKと答えながらお子様二人がポータルへと機体を全速で走らせる。
レーダーには敵影の反応はない、どうやら無事ボスまでたどり着いたようだ。
鬼が出るか蛇が出るか久しぶりのボス戦だ!




