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Brain Marionette Online  作者: まるいもの
ステージⅠ
4/67

03

六歳の誕生日に母親からもらった物は剣道具一式だった。

母いわく、前田慶次郎ともあろう者が武道の一つや二つたしなむもの! らしい。

幼心ですらなんで? と疑問に思ってしまうほど無茶をいい、無理やり剣道場に通わされた。


しかし、性に合ったのだろう。人一倍負けず嫌いな性格も合わさって、中学三年までやめることもなく、それなりの実力を身につけてはいた。

しかし、中学の三年間一度として勝つことができない奴がいた。


石田光成(いしだこうせい)

女顔の繊細な立ち姿に見合った、流麗な剣道。同年代に天才がいたことで、俺は自分の限界を感じ剣道をすっぱりとやめることにした。       



        ◆ ◆ ◆ ◆



「「「いただきます」」」


今日は五月三日水曜日、GW五連休の初日だ。

俺の家は母親の香苗、父親の俊正、そして俺の三人家族。


今日の晩飯は豚の生姜焼きに和風サラダの盛り合わせ。

塩、味の素、胡椒、摩り下ろした生姜で味付けした豚ロースをカリカリに焼き上げ醤油でさっと色付けした豚の生姜焼き。

サニーレタス、カイワレ大根、薄くスライスした玉ねぎに千切り大根を添え、ごま油を少量かけた後ポン酢を大量にかける。鰹節を振りかけて完成だ。

ご飯に合ってとても美味しい。


父さんがご飯を食べながら話しかけてくる。


「それで慶次郎、BMOはどうだ? すごいだろう」


父さんの職業はゲーム会社PIXY(ピクシー)の営業課の係長をしている。

BMOはPIXY社の新コンテンツだ。


「すげーよあれ、まだ訓練しかしてないけど本物のロボットに乗ったみたいだった」


今まで続けていた剣道の修練は俺の生活の一部になっていて、それを急にやめたものだから今の俺はすっかり気の抜けた、ぼけっとした毎日を送っていた。


「うはははは、そうだろうそうだろう。なにせうちの社の命運を賭けたゲームだからな」


そんな俺を見かねて、父さんが気晴らしになればとBMOのテスターをコネで貰ってきてくれたんだ。


「二人とも、食事中に喋るのはいいけどご飯をとばさないで」


「「ご馳走さま」」


母さんに睨まれたので急いで食べ終わり、そそくさと逃げ出す男二人。


「まったく……私も戦国武将伝の続きをしなくっちゃ、まっててね明智光秀様~」



        ◆ ◆ ◆ ◆




―――【Loading】―――


俺はお馴染みとなってきた落ちるような感覚をへてBMOの世界に降りる。

さて、午後三時から九時までの六時間しかできないんだ、さくさくいかないとな。


基本ログアウトした場所から移動する事はない。

ここは先ほどログアウトした基地の入り口だ、確か大佐の部屋は左の通路奥だったな。

扉の前まで来るとシュッと金属がこすれる音と共に扉が横に開く。


中には数人のプレイヤーとその中心に、黒の古めかしい軍服を着た四十代前半の男性がいた。エルフィンだ、耳が横に長い。

おそらくあれが大佐だろネームはレノックス・デイビスとなっている。


「ども」


俺が話しかけると顔をこちらに向けイベントが始まった。


「ふむ、お前が今度配属となった新兵のKeizirouか、私が対パラサイト東前戦基地副司令官のレノックス・デイビスだ」


やけにリアルだな、VRMMOは初めてするのでこれが標準なのかBMOが凄いのか分からないな。


「さて、いきなりだがお前にはパラサイト討伐任務について貰う。基地の周りにうろついている【ポーン】タイプを五匹ほど退治してくれ。新兵用の機体はハンガーの整備長に言えば出してくれるだろう。では、急ぎたまえ」


なるほど、次は実戦か。

俺はハンガーの位置を探す為にマップを呼び出す。マップと念じると空中に基地の見取り図のような地図が現れた。

青く点滅してるのが俺の位置かな?ハンガーはどこだ? あった、ここからそう遠くない。


急ぎ足で五分ほど歩くと、一際大きい倉庫が見えてきた。あそこがハンガーだろう。

中には整備長らしいNPCに数人のプレイヤーが話しかけていた。


「うん? お前さんがKeizirouかい? 話は聞いてるよ、あれがお前さんの相棒になるRS-43【エキューセン】だ。二十年前のロートルだがまだまだ現役だぞ」


「おおぉぉ……」


俺は感嘆の声を上げていた。

きちんとした人型のフレーム、腕や脚は角ばっていて無骨なイメージだ、肩も鉄の肩当てをくっつけただけという感じ。

胴はかなりスリムで装甲は薄そうだ。頭は少し小さく人の目と同じ部分はバイザーになっている。

五本指のマニュピレーター、全高は十三メートルぐらいか?

少し不恰好だが、これこそまさに人型機動兵器という雰囲気をかもし出していた。


俺は早速機体に乗り込むことにした。


「搭乗」


降りてきたワイヤーを掴みコクピットに素早く乗り込む。速く動かしたい。

中は【ダンデリオン】と同じ構造だ、機動スイッチを押して機体を動かす。


スフィアビューが景色を三百六十度映し出し、まるで自分が巨人になったような感覚を覚えた。

俺は歩くイメージをしっかりと持ち、基地の外にでるポータルに入り込んだ。



        ◆ ◆ ◆ ◆



基地の外は荒れ果てた荒野になっていた。元は森林豊かな大地だったが、パラサイトたちによる侵略のせいで、惑星のエネルギーが吸い取られ荒廃した土地になってしまったらしい。


うーん、結構プレイヤーが多いな、敵がいないし少し奥にいくか。

人が少ないほうへ移動すること十分、周りに三十メートルほどの巨大な木がぽつぽつと立ち並ぶ場所に出た。

ようやくパラサイトを発見。樹木でできた蜘蛛【アッシュスパイダー】だ。


プラント・パラサイト。大きさはだいたい人間と同じ大きさで、自身を核として自然物や人工物などを取り込み巨大化する。

十数メートルから巨大な物では五十メートル以上の物もあるとか。

その星にいる生態系の情報を取り入れ形を作り出す。蜘蛛の形をしているという事は、蜘蛛の生態系データーを取り入れて形を作ったということだ。


大きさ十メートルの蜘蛛が襲いかかってくる。


「ショートーレンジ」


右手に持ったマシンガンを撃ちまくる。マズルフラッシュと共に吐き出される弾丸が【アッシュスパイダー】を打ち据える。


距離にして約一00メートル、弾丸を食らいながらも距離をどんどん詰めてくる。

かなり速いぞ、レーダーの計器が数字を減らしていく。くそっなかなか死なない。

ついに目の前まで詰められた。

振り上げる前足を横移動で何とか避ける。威力が弱いのか? マシンガンはあまり効いていない気がする。


「ゼロレンジ!」


マシンガンをしまい腰につけているヒートロッドを取り出すまで約一秒。

その間に蜘蛛野朗の体当たりをもらい機体が激しく振動する。


「くそっ、食らいやがれ!」


近接戦はイメージが全て、ゲームによる補正が少ない。

小手を打つ感じで攻撃を仕掛ける、先ずは一撃!よろけた所をさらに連打していく。二撃、三撃!

巨大蜘蛛と巨人の殴り合い、ダメージを食らいながらもどうにか倒す事ができた。


『キシャーーー』


【アッシュスパイダー】が悲鳴を上げ崩れ落ちる。


「はぁぁ、倒せた」


随分と強かったな。【ポーン】をあと4匹か~九時までには終わらせたいところだ。


ちなみに、パラサイトはチェスにちなんだ階級がつけられている。


【ポーン】一番多く一番弱いクラス。

【ナイト】雑魚よりは強い一対一だと勝てるかどうかギリギリらしい。

【ルーク】IDなどで中ボスクラスとしてでてくる。

【ビショップ】一個小隊(五人パーティー)で挑むボスクラス。

【クイーン】一個中隊(三~五パーティー)の大人数で挑むNMクラス。

【マザー】最後はキングではなくマザーらしい、パラサイトをどんどん生み出しているとか。


それから二十分ほどかけて四匹の蜘蛛型パラサイトを全てヒートロッドで倒す事ができた。どうやら近接兵装は威力が高く設定されているみたいだ。

パラサイトは倒すとエネルギーの結晶であるクリスタルを落とす。惑星から吸い取ったエネルギーを結晶化したものだ。

それと自身の体にしていた樹木や鉱石なども、パラサイトに一度変質されることで新しい物質に変わり、何かの材料となる。


【変質したアッシュ材】×3


どうして材木なのかは不思議だがゲームだから仕方ないか。

まだ製造系は未実装なので直ぐに必要というわけでもないけど、俺はクリスタル5個とアッシュ材三個を手に入れて基地に帰ることにする。

機体ダメージを表すグラフィックもほぼ真っ赤だ。せめて修理アイテムとか探してから来るべきだったな。


道中メッセージが点滅しているのに気づいたので見てみると、近接戦の熟練度が121になっていた。

どうやらスキルを一つ覚えたらしい。


【高速機動】0


どんなスキルかよく分からない、なにまだ始めたばかりだ、ゆっくりとやるさ。


少し遠くに行ったのでパラサイトも強めがでてきました。

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