エピローグ1
初めての戦争イベントが全予定終了してから三日。
俺は戦争もミッションもする気が起こらなかったので、マーナとピスカ二人に付き合って、どう動けばいいか、どんなやり方でシミュレーターをクリアしたかを教えてすごしていた。
今日からVUのために、二日ほどログインできない状態だ。
タクに聞いた話だと、あの後物凄い抗議やチート疑惑の報告が運営に送られ、赤と白だけではなく動画を見た青も巻き込んで大騒ぎになったらしい。
当の本人である俺はネットなどを調べる事をしない人間であり、ラピスは用事とやらにかかりきりでまったく表に出てこないことが、その騒ぎを逆に大きくしたのだそうだ。
そこで運営は俺に(おそらくラピスにも)、一部拾得しているスキルの公開をさせていただきます。
という内容のメールを送り、公式HPによりスペシャルスキルである【シックスセンス】の効果や、拾得条件を掲載して、一応の収拾を図ったみたいだ。
そのせいでVUアップ前日までシミュレーションルームは人で一杯だったと、ピスカなんかはぼやいている。
「くあ~~~、眠い」
一年F組の教室、窓際の一番後ろ、三十一人という半端な人数のせいで最後列の机は俺ひとりしか居ない状態だ。
横に誰もいないのは少し寂しい物だが、今日は横に机が一つ増えている。
委員長の甘和瑞樹と副委員長のタクの二人で持ってきたものだ。
「ケイ! なんでお前はいつもいつもいい目を見るんだよぉぉぉ!」
「いきなり何の話だ!」
学校指定の紺のブレザーの襟元をつかみガクガクと揺さぶる。
「今日から美少女転校生が来るんだよ! そして新しい机が一つ! もう分かるだろう? 僕の席と交換してくれ!」
「断る! 窓際一番後ろを席替えでゲットしたのは俺だ! それにどうして美少女だって分かるんだよ」
「ちらっと見たんだよ、担任のザビがうちのブレザーと違う制服を着ている美少女を!」
俺とタクが喧々囂々としていると、瑞樹が割って入ってくれる。
「はいはい、タクもケイもそこまでにして、もう直ぐHRがはじまるよ?」
身長百四十五cmとかなりちびっこいが、目のクリッとした可愛らしい少女だ。
俺とタク、それに瑞樹の三人は皆幼馴染、そして、実はばれてないつもりだろうが瑞樹はタクの事が好きみたいだ。
気づいていないのはタク一人のみ。タクも女性関係が関わらなければいい奴なんだけどな。
あれだけ悔し涙を流すということは、かなりの美少女なんだろう、けど、俺は何故かまったく興味が沸かなかった。
HRが始まり、ザビエルこと担任の池田が入ってくる。ちなみに頭が円形に禿げている。
「よ~しお前ら、ちっと静かにしろ~。えーっと、今日から転入生が来る事になった、挨拶して」
「はい」
転入生の少女はとても美しい少女だった。
腰まで届く髪はサラサラと流れ、艶やかで瑞々しい黒髪、見た瞬間吸い込まれるような黒い瞳。
「△○県から父の転勤でここ鈴波市にきました早川瑠璃といいます」
整った鼻、蕾のような口からは鈴のような透き通った声が紡がれる。
「皆さんこれからよろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をした瞬間、男子からは大歓声を、女子からも綺麗などと声が漏れ、中には顔を真っ赤にしうっとりとした表情の者まで居る。
俺はというと、目を見開いて愕然としていた。そして、つい立ち上がってしまう。
ガタンッという椅子がこける大きな音に教室中の視線が俺に集まり、転入生の目も俺に向く。
驚愕の表情をする転入生。そして、お互いに指を挿して、
「「あああっっ!」」




