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Brain Marionette Online  作者: まるいもの
ステージⅠ
34/67

33

スーパーコンピューター、PIXSY HR。


ゲーム会社PIXSYの本社ビル地下に設置された全長百メートルを超える巨大なコンピューター。

VRMMO Brain Marionette Onlineの仮想世界構築における全ての情報を管理、統括しBMO内に起こる全ての現象はPIXSY HRによって起こされている。


ゲーム会社PIXSYの実質的な経営者である出雲グループ総帥、出雲輝彦(いずもてるひこ)自らが出雲グループの威信をかけて作り出した。とてもゲーム運営(・・・・・)では回収しきれない(・・・・・・・・・)資金をかけて作られたスーパーコンピューターである。

その演算能力は、BMO内の全ての情報を管理、統括している事実と相まって仮想世界内に限り、二秒後の未来を99.99%の的中率で予測する事すら可能としていた。





PIXSY HR―――


『プレイヤーNO.2846、ハンドルネームKeizirouのシンクロ率96.74%を確認』

『近接戦 400オーバーを確認』

『近距離 200オーバーを確認』

『【高速機動Ⅱ】を確認』

『【瞬速移動】を確認』

『【シックスセンス】 100オーバーを確認』

『特殊近接戦スキル【ヴィジョン】の発動条件オールクリアー』

『【ヴィジョン】を発動します』





Keizirou―――


【ヴィジョン】発動


俺の頭の中に直接響くようにイメージが進入してくる。

キィィィィンと耳鳴りのよな音と共に、まるで戦争シミュレーションゲームをしているような上から全てを見下ろすヴィジョンが、俺の機体を中心として見えはじめる。

それだけじゃぁない、前後左右、上も下も知覚外の情報が二秒後の未来を現実と二重写しに映し出し俺に送り始める。


左上十時の方向、【ガーゴイル】がビームライフルと肩についている武装、ビームキャノンの同時射撃。後ろに回った【グレムリン】がその〇・三秒後ビームライフルでの【ダブルショット】。

さらに〇・五秒後左右に広がった【グレムリン】二機による同時攻撃。

俺はその全てを僅かな動きで避ける。

一秒後真上に移動する【グレムリン】を先回りしてビームブレードで貫く。左にフェイント、ソレに釣られこちらに動いた【ガーゴイル】めがけ全速で突撃、すり抜けざまにコクピットにブレード付きの右フック。

さらに、襲い掛かるビームを左右に避け又はビームブレードで逸らす。


俺は二秒後の未来が分かるというありえない事態にも、何故か自身の正気を疑いもせず受け入れていた。

敵機の機動、ビーム兵器の射線、ミサイル兵器の動きまで全てが見える(・・・)

【オーガ】の両肩に積んでいるミサイル四十基が俺めがけて解き放たれる。

だけど、それはすでに予測していた。俺はミサイル群をかわし、あるいはレーザーブレードで斬り落し【オーガ】に突き進み、斬り払う!


「うおおぉぉぉおお!」


今まで以上のハイペースで敵を撃墜していく。

もう何機落としたか分からない。約二分間STバーが尽きるまで俺は鬼神のように暴れ続けた。


STバーが切れ動きの止まった今が好機とばかりに数十機のBMが俺を包囲する。

その包囲の仕方は、撃てばすべてが味方に当たるという過密さだ。

ほんの少し回復するSTバー、「イベントリオープン、STポーション」さらにアイテムで回復する。


来る!

避ける、避ける、避ける! あるいはビームブレードで逸らす。

左のレッグが吹き飛ぶ。その衝撃すら利用し致命傷を避ける。

ヘッドが吹き飛ぶ、スラスターの一部が削られる。一撃掠るだけで機体の耐久が削られていく。

そしてビームの嵐が収まった時、約半数も同士討ちで削れた包囲網と、その真ん中に佇むボロボロになった白い【スワーロゥ】がまだのこって(・・・・・・)いた。





PIXSY HR―――


『プレイヤーNO.2846、ハンドルネームKeizirouの心拍数増大、情報過多による精神の消耗が安全値を上回りました』

『安全措置により【ヴィジョン】を終了します』

『【ヴィジョン】を終了しました』

『プレイヤーNO.2846、ハンドルネームKeizirouのシンクロ率51.23%まで低下』

『特殊条件下での実験を終了します』





Keizirou―――


「ッッッ!」


頭が蒸発しそうなほど熱い。

先ほどまで感じていた全能感がなくなっていた。

今の状態は左のアーム大破、両レッグ大破、ヘッド大破、スラスター小破、残りも全てグラフィックが真っ赤だ。多分何かに激しくぶつかっただけで機体は爆発するだろうな。


「はっははははっ、ボロボロだな、のこった推進剤はあと少し、機体ももう持たない」


何故か包囲している敵機が撃ってこないが、あとは撃ち落されるの待つばかり。

メインカメラもつぶれて、スフィアビューも半分ほどしか機能していない。

周りは敵機の群れ、下には戦艦。

だったら、行くなら戦艦(した)だろう、最後まで派手にやってやる!


「うらぁぁああ!」


フットペダルを踏み込み下へと突っ込む。スラスターも傷つき従来の半分すらスピードが出ない。

普通なら戦艦にたどり着く前に撃ち落されて終わりだっただろう。

だが、俺が【ダリス】陣営に与えた物はかなり大きかったみたいだ。




『やっ奴を行かせるな! 戦艦が落とされる!』

『撃てっあの化け物を撃てぇぇぇ!!』

『くたばれこのチート野郎!』

『落ちろっ落ちろっ落ちろぉぉぉっ』



俺めがけて数十機のBMがビームライフルをビームキャノンをミサイルを撃つ。

その大火力は俺をつき抜け、真下にいた戦艦に襲い掛かった。

激しい轟音と連続する爆発の光。

全長二キロにも及ぶ巨大な戦艦が真っ二つに折れ爆発する。戦艦が起こす爆発と破壊の渦はその周りにいたNPCの護衛艦やBMを巻き込み、巨大な爆光は戦場の端から端まで確認できるほどだった。

BMO初の戦艦撃破は、まともな判断力を失っていた【ダリス】陣営、カラー赤の同士討ちによってもたされることになった。


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