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Keizirou―――
ラピスが不機嫌オーラ全開で、右足をいらいらと音を立て、貧乏揺すりをしながら腕を前に組んで立っている。
「ラピス、これどうなってるんだ?」
俺はなぜお通夜なんてしているのかラピスに聞いてみた。すると、
「あれ見て」
すっと指を大型ディスプレイを指差す。
千人単位のプレイヤーが見れるように作られた大画面には戦争の戦況や、戦力比などが写されていて。
「【ダリス】二千八百に【フィンリス】八百って、圧倒的に負けてるじゃねーか」
「それだけじゃないわ、BMO掲示板」
そういって近くにあった端末を操作してBMO掲示板を開く。そこには……
BMO掲示板
カラー赤VSカラー白開始! 累計764
NO.402 白が弱すぎる件について、圧倒的すぎてつまんね白帰れ!
NO.436 白が弱すぎる件について、おれ五機落とした。ラクショー蝿のように落ちてった。
NO.533 白が弱すぎる件について、四十機ぐらいで突っ込んできた。全部途中で落ちた乙。
NO.698 白が弱すぎる件について、チームS・Jのスネークがもう十二機落としてる。白はカモすぎw
このほかにも白をバカにするようなかきこみがずらずらと列挙されていた。
「なんだよこれっ!?」
中には読んだだけで頭が暴発しそうな物まである。
「開始二十分でもう殆ど戦況は決まっていたわ、あとは赤による白の殲滅戦ね。それからよ、掲示板に白をバカにするような書き込みが始まったのは」
ふざけんなよ、もう五百件ほどがそんな書き込みで埋まってるじゃねーか。
自分が所属している所がたとえゲームとはいえ、ここまでバカにされて平気なほど俺は鈍感でも薄情でもない。ましてや白色をバカにすなど言語道断!!
「ケイジロウ、私は勝負事に勝つのが大好きよ」
知っている。シミュレーションのときに嫌というほど味わった。
「でもね、それ以上に負けることが大嫌い!」
ああ、分かってるよ。俺も同じだ、特にこんな奴らに負けるのは我慢ならない。
「でもどうするんだ? いまさら俺たち二人が何したって戦況がひっくり返る事なんて無いぞ」
「あれを見て、画面右端の個人とPTの戦績」
そういって画面右端を指差す。
そこには個人のキル数とPTのキル数が一位から百位までの名前が載っていた。
個人一位はカラー赤のSnakeの十四機、PT一位はS・Jの三十機だそのほか三十位まですべて赤が独占している。
「こっちも圧倒的に負けてるな、白で最高は四機か……」
「私たち二人で赤に勝つとしたらこの、個人とPTの戦績一位を狙うしかないわ」
一位の動きは大画面で映し出されていて、どういった戦法を取っているかがわかる。
単純に数の差を活かしての包囲戦を仕掛けているのだ。遠距離四機、中距離六機の二PT編成で孤立したり、壊滅しているPTを狙い打って安全に狩りをしている。
俺は驚いた顔をしてラピスを見る、彼女はそんな奴らを抜いて一位になるというのだ。こんな圧倒的不利な戦場で。
「無茶だと思う? 私はいけると思っているわ、ケイジロウと二人なら」
「はっははははっ、頭悪いな! でも最高だぜその提案!」
「決まったわね、なら作戦を決めるわよ。もう残り時間が二十五分しかないから単純にいくわ。まずチームS・Jを落とす、私が遠距離狙撃で赤の遠距離型BM【ゴースト】を四機落とす、合図をしたらケイジロウは突っ込んで【グレムリン】六機を落としなさい。私が援護射撃をするわ」
先ずは一位のPTと個人を潰すんだな。
「S・Jを全滅させたらケイジロウはあそこに突っ込んでちょうだい。以上!」
ラピスが指差したのはカラー赤本体の左端だった。端といっても二千単位の端っこだ、百単位の敵機の群れに突っ込めと言い放つ。
「はははっ滅茶苦茶だな」
「あら、私はケイジロウならいけると思ってるわ、あんたのスピードで油断して弛緩しているはずの所に突っ込めば、相手は全く反応できないわよ。そこまでの道は私が作ってみせる」
肉食獣のような獰猛な笑みを見せる。
「OK、俺はラピスの腕を信じる」
これから喧嘩だとばかりにニヤリと笑ってみせる。
「それじゃ行くわよ!」
俺たち二人はすっかり誰も居なくなったイベント受付NPCの所にPTで受付を済ませる。
チーム名はMAKEZUGIRAI。
【ダリス】のクソ野朗どもをあっと言わせてやる!




