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仮想世界へと落ちる独特の浮遊感が終わり、俺は真っ白な部屋にいた。
「Brain Marionette Online の世界へようこそ、前田慶次郎さま」
何も無い空間に四十センチ四方のウィンドウが映し出される。画面には緑の髪をした少し耳のとがった少女が映し出されていた。
「私はキャラクターメイキングルームの案内人、ピクシーと申します。キャラクターメイキングに移動しますか?Yes/No」
そのためにここに居るのだから迷わずYesと応える。
「それではどの種族をお選びになりますか?」
軽快な音楽と共に四つの種族がホログラムで表示される。
【ヒューム】
近接戦C 近距離B 中距離B 遠距離C 特殊B
四つの種族の中で最も数の多い種族、苦手とする距離がなく特殊兵装もエルフィンに次二番目の高さを誇る。全てをそつなくこなせるオールラウンドプレイヤー向き。
種族スキル 【探索補正】
【ドラゴニュート】
近接戦A 近距離A 中距離C 遠距離E 特殊E
強靭な体を持つ近接、近距離戦のエキスパート。豊富なスタミナを誇り、長時間の戦闘機動をこなす事ができる。反面、遠距離や特殊兵装の適正は低い。
種族スキル 【STアップ】 【クイックアップ】
【ワイルディー】
近接戦D 近距離B 中距離A 遠距離B 特殊D
多種多様な獣人のことを一つに纏めた名称。手先が器用で集中力の高い彼らは中距離を中心とした射撃戦を最も得意としている。
種族スキル 【命中率補正】
【エルフィン】
近接戦E 近距離D 中距離B 遠距離A 特殊A
繊細な種族である彼らは近接、近距離戦闘を苦手としている。しかし、距離把握能力が高く遠距離戦を得意とし四種族の中で一番高い特殊兵装の適正を持っている。
種族スキル 【SPアップ】
Brain Marionette Onlin(BMO)は人型機動兵器 Brain waves armor 通称ブレイン・マリオネット(BM)に乗って戦闘をするVRMMO初の本格ロボットシューティングだ。
スキル制をとっておりそれぞれの兵装には熟練度が設定されている。Eが最低でAが一番熟練度があがり易い仕組みだ。
ある一定の数値まで熟練度を上げると、その兵装に見合ったスキルを覚えていく様になっている。
「人型機動兵器に乗るなら接近戦しかないな」
そう呟いて何度も頷き俺は【ドラゴニュート】を選ぶ。
「次に貴方の分身であるアバターを選んでください。ご自身の生態データーをお使いになられますか?Yes/No」
ここはどうしようか、別段自分の生態データーでしてもいいんだけど。とりあえずどんなアバターがあるのか見てから決めるか。
俺はNoのボタンを押して次に進む。
「ドラゴニュートの男性からアバターをピックアップいたします。特徴をお選びください」
ピクシーがそう言うと、色々な身体的特徴がリストとして空中に浮き出る。
顔の細かい形、目や鼻、耳や口。肌の色に髪型、体格、手や足の形まで細かく選べるみたいだ。
後で分かった事なのだが、選んだパーツを一つに纏める時に矛盾が出ないよう細かく調整されてからアバターとして使えるようになるらしい。
数が多すぎて頭がパンクしそうだ、物凄く面倒くさい。
前の項目に戻るボタンを押して、アバターには自分の生態データーを使う事にする。
「まぁ、せっかくお金をだして作ったんだし使わないと勿体無いしなー」
先ほどの自分の生態データーを使うかどうかで今度はYesを選ぶ。
「それでは、【ドラゴニュート】の特徴を選んでください」
また空中に数個のコマンドが浮き出る。今度はそこまで多くないな。
どうやら瞳孔は縦長にしかならないらしい。あとは顔や体にアクセサリー感覚で、綺麗な色の鱗が額や首筋、手の甲などに数箇所選ぶ事ができる。
驚いたのがトカゲの顔をそのまま付けるようなものまであることだ。これをつけたら外装の意味がなくならないか?
俺は額と手の甲に白色の鱗をつけることにした。
身長も変えれるらしい、俺の身長は百七十二センチ。できればあと五センチは伸びて欲しいので先ずはここでシュミレーションしてみよう。身長を百七十七センチにする。
「Brain Marionette Onlin で使うネームをつけてください」
名前はそのままでいいか、使えるかな?同じ名前は先着順らしいんだが。
Keizirou と入れてYesボタンををす
「Keizirou様ですね?次に読み仮名を音声でつけてください」
アルファベットを一文字一文字読んで確認したあと音声登録を促された。
声に出せばいいんだな?
「けいじろう」
「確認しましたKeizirou様で宜しいでしょうか。Yes/No」
どうやら使えるみたいだ。Yesボタンを押して次に進む。
「最後に所属国家を選んでください」
ピクシーが画面の中から左手で横に促す。するとそこにプラネタリウムのような画面が現れて四つの惑星と宇宙の地図のような物が表示される。
「すごいな……」
かなり本格的に作ってるんじゃないか? 宇宙の事なんてよく知らないが瞬く光や太陽の周りをゆっくりと動く惑星や恒星。偶に流れる彗星も一つとして同じ場所に流れない。
画面に見とれているとピクシーのガイダンスが進んでいく。
軍事惑星国家【ダリス】
ヒュームを中心とした軍事国家であり、人類(四種族全てが)を導くのは我々であると宣言してはばからない。
パラサイト(外宇宙知的生命体)を駆逐する為にも人類全てを併呑する事が必要であるとし両国家に宣戦布告をして大戦を引き起こした。
中距離、遠距離による射撃を中心とした高火力による射撃戦を得意とした機体が多い。
その反面、防御力と機体速度を犠牲にしている。
国家カラーは赤。
首星【ヘリタリス】
民主共和制惑星国家【アンディカ】
四種族以外にも体が小さいが知性の高い動物のような生物や、鉱物生命体など、人類外とされる多くの種族たちと交じり合った種族の坩堝と呼ばれている国家。
三国家のなかで一番人口が多い。
新エネルギーによる機体ごとに専用の薄いエネルギーフィールドを張ることに成功。
これにより飛躍的に機体の耐久力があがった防御重視型の機体が特徴。
国家カラーは青。
首星【クラリカ】
専制君主制惑星国家【フィンリス】
国王を頂点とした騎士国家。しかし、他の二国家に軍事で後れを取り騎士以外からも新兵を募り軍に取り入れることによってかろうじて対抗している現状である。
両国家の機体を参考にするが性能面で大きく遅れをとり、対抗する為に特化型の機体が特徴。
ピーキーな性能は得意方面によっては他の機体を凌駕する事ができたが、扱い難いというデメリットも併せ持つ事になった。
国家カラーは白。
首星【マシリアヌ】
俺は特化型の機体というのに惹かれた。それに白というのがいい。これからいろんな色に変えられる白色が大好きだ。
専制君主制惑星国家【フィンリス】を選ぶ。
「専制君主国家【フィンリス】でよろしいですか?Yes/No」
Yesのボタンを押す。
「それでは、あちらのポータルにお進みください」
一礼をしてウィンドウが消える。これでキャラメイキングは終わったみたいだ。俺は垂直に煌めく光の輪を見て、これがただのデーターなのかと思と凄い物だなと素直に感心してしまう。
ふと横を見ると、自分のアバターを見て確認する為の鏡が設置されていた。
百七十七といつもより五センチほど高い背丈、縦長の黒い瞳孔を除けば、目が少々釣り上がり気味なこと以外特徴らしい特徴のない顔だ。少し野暮ったい髪型の黒髪をくしゃっとかき混ぜる。
中学までやっていた剣道のおかげでそれなりに引き締まった体をしている。
前田慶次郎15歳、誕生日は五月三十日双子座、血液型はABだ。
母親が歴女だったらしく、前田とくれば天下一の歌舞伎者、慶次郎しかないと言い張り、オタクだった父親の神龍を叩き潰してつけてくれた名前だ。
「よしっ行きますか」
俺は声に出して気持ちを切り替え、ポータルに踏み込む。
赤い光の輪が俺の全身を上下に走査してポーンという音と共に光が全身を包み込んだ。