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Keizirou---
惑星国家【フィンリス】の主フィールドである惑星【マシリアヌ】には北大陸と南大陸があり、今のところ開放されているのは北大陸だけらしい。
そして、北大陸の三分の一ほどがプラント・パラサイトに征圧され、不毛な大地や砂漠に変わり果てている。
アトネス鉱山はそんな東の唯一人類が保有していた鉱山だった。
「でかい入り口だな」
「ほんと、広いじゃなくて大きいわね……」
アトネス鉱山はBMを使って採掘している鉱山で、その入り口は数多くの労働用プチBM【デーゼル】が出入りする為に、整備されかなりの大きさになっている。
「鉱山っていうより秘密基地みたいだ」
「あ~なんとなく分かる、でも、たいして変わんないかも? 敵がうようよいるというところで」
鉱山の入り口にはミッション専用IDに入るためのボータルが設置されていて、そこに入るとミッションスタートとなるわけだ。
「さぁちゃっちゃとクリアするわよ」
「りょーかいっ」
ポータルに入るとイベントムービーが始まり五機のBMが周りを警戒しつつ鉱山へと入っていく。
おそらくネイハム少尉の【コンダードゥ】と部下の【エキューセン】が四機の一個小隊だ。
「Keizirou曹長は我々の後をついて来い! どうやらアトネス鉱山はいまやパラサイトどもの巣になっているようだ。バックアップは任せたぞ!」
激しい銃撃音やパラサイトの断末魔の悲鳴が響き渡り、そこでムービーが終了する。
「あーやっぱりこうなるんだ」
「お約束でしょ? そうじゃないとつまらないわよ。それじゃさっき決めた通りに」
「あいよっ」
俺とラピスの役割分担は簡単だ、ラピスの援護射撃をもらって俺が突っ込む、以上。
鉱山の中にはパラサイトがうようよいやがる。
アリ型パラサイトの【ティン(錫)アント】やミミズ型パラサイトの【ストーンワーム】蝙蝠型パラサイトの【ティンバット】がいたる所にうじゃうじゃと。
「うわ……気持ち悪い」
「ワームがきついな、材料石だろ?なんであんだけ生々しく動くんだよ」
「早く突っ込んであれ倒してきて」
「うへぇ、援護射撃ちゃんと頼むぜ?」
フットペダルを踏み込む、エネルギーサーベルを抜いて一瞬で加速。索敵範囲に入った俺に反応して襲い掛かるパラサイトたち、その数は三十は下らない。
「はっ!」
一気に押し寄せてくるパラサイトに、後方からラピスが援護射撃で牽制する。
威力より連射を選んだラピスの攻撃では、パラサイトたちは一瞬動きを止める程度の効果しかない。
しかし、その隙に俺のエネルギーサーベルがパラサイトたちを蹂躙する。
「らああぁぁぁああぁ!」
【高速機動】を使い縦横無尽に走りまくる。ラピスの正確無比な射撃がパラサイトたちを打ち据え、俺に襲い掛かる数の半数は動きを阻害されている。
時速二百キロでクルリクルリと弧を描きながらアントやバットの側面や背面に回りラピスの援護射撃で動きが止まったパラサイトをサーベルでなぎ払い殲滅していく。
ワームは気色の悪いポンプみたいな動きをして石の塊を射出、最初は面食らったが単調な動きなので来ると分かれば避けるのは簡単だ。
何本ものエネルギーの矢がワームに突き刺さりガラスのように砕けていく。
人と連携して戦うのはこれが勿論初めてなんだけど、物凄くやりやすい。
お互いの動きや癖が分かっているというか、意思疎通がキチンとできているというか。
「うおーすっげーラクショー、っととやべ」
ワームの石が機体を掠めた。
「油断してんじゃないわよ」
数本のエネルギーの矢が俺を狙ったワームを仕留める。
ラスト一匹、俺の一撃とラピスの矢二本が同時に突き刺さる。
「ラストもらいー」
「いや、俺だろ? ラスト倒したの」
「私のほうが早かったでしょ!」「いーや俺が止めを刺した!」
ガルルとお互いの顔が映るウィンドウに額をつき合わせて喚き散らす。
まぁ、そう簡単に関係や性格は変わらないと。
「でもPTだと楽でいいな」
「そうね、ソロだと無理ねこれは」
BMOにはSTとSPの回復アイテムしか回復とつく物はない。つまりアイテムで機体の修理はできないという事だ。
機体の損傷は基地や都市に行くか、BM移送車を買ってそこで修理するしかない。
一応機体に応急処置なんていうコマンドもリストにはあるんだが、本当に気休めでしかなかった。
ラピスが言うには、そのうち機体修理ができるBMも登場するみたいだけどまだ実装はされていない。
「ダメージはどうなの? このままいける?」
「ああ、大丈夫だどの部位もまだ真っ白だ」
機体ダメージはグラフィックで表示される色で分かる。白がダメージ三十%以下、黄色が三十一%以上でダメージが六十一%以上になると赤で表示される。
「OK、それじゃサクサク行くわよ」
「りょーかいっ」
俺たちはドロップアイテムを拾い終わると、お互いのダメージを確認してから奥へと進む事にした。




