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Brain Marionette Online  作者: まるいもの
ステージⅠ
10/67

09

Lapisu―――


―――【Loading】―――


すとんと落ちる感じがしてBMOの世界に落ちる。

さ~てと今日は起動制御AIをハーフサポートにしてみようか。



昨日、ログアウトしてから私はノートPCを立ち上げBMO関連の情報を漁る事二時間。

眠気もMAXに近づいた時そのブログを発見した。

同じテスターの人が管理人のブログで、起動AIのフルサポートとハーフサポートの違いを体験談を交えて日記調に書いた物だ。


要約すると、確かにハーフサポートにして旨く動かせるようになれば、ほんの僅か速くなるのは確かだ。

しかし、そのメリットよりも、殆どの行動をきちんとイメージしなければいけないというデメリットのほうが遥かに大きい。

メリットよりデメリットのほうが高く、ハーフサポートにする意味はないということが書かれていた。


しか~し、そのほんの少しのズレが致命傷なのですよ。

思い出しただけでも腸が煮えくり返りそう……キッチリハーフサポートを習得してぎったんぎたんにしてやるんだから!


ハーフサポートにすると、確かに一つ一つを細部までイメージして動かさないとちゃんと動いてくれない。

でも、ほぼ人体と同じ構造をしているBMは、自分の体と同じように動かす意識さえ持てばそれほど難しくもないわね。


脚を開く、背を伸ばす、弓を構える、手を、指を細部までいつもと同じ。


「はっ!」


狙い違わず【サンドスパイダー】の核に命中。OKOK、いけるズレがない。

私は一キロ以内にいる蜘蛛型パラサイトを沸くたびに撃ち殺していく。


「はっ、はっ、はっ、はっ!」


三時間ほど繰り返していると、新しいスキル覚えた事を知らせるメッセージが。


「ステータスオープン」


【Lapis】【曹長】

【エルフィン】♀

【近接戦】0

【近距離】0

【中距離】67

【遠距離】200

【特殊】 87


スキルリストを押す。


種族スキル

【SPアップ】12


遠距離

【集中】67

【スナイパーモード】0


「スナイパーモード?」


スナイパーて狙撃者だっけ?

使ってみれば分かるわね。


「スナイパーモード」


その瞬間私の視野は一点にまで絞り込まれる。その他の全ての情報を捨てる代わりにターゲットまでの倍率が大幅に上がった。

今まで二000メートル先まで見えていたものが、二・五倍の五000メートルは見えるようになった。

猿のような姿のパラサイト【アッシュモンキー】を発見。距離は四七八0メートル。

姿勢をすっと正して弓を引く、すると頭の中に距離を表す数字が浮かび上がる。約二秒で5000メートルの数字。おそらく、サイ・ボウの飛距離を表している。


【集中】が発動する、私の全神経が【アッシュモンキー】に集まる。ここっ!

サイ・ボウから放たれたエネルギーの矢は狙い違わず猿型パラサイトの頭を打ち抜いた。


これでいける、あとはスキルの熟練度をどれ位あげれるかね。


午後九時になる、私のステータスはこうなった。


【Lapis】【曹長】

【エルフィン】♀

【近接戦】0

【近距離】0

【中距離】103

【遠距離】200

【特殊】134


種族スキル

【SPアップ】21


中距離

【ダブルショット】2


遠距離

【集中】92

【スナイパーモード】89


熟練度は敵の強さで上がる量が決まってるみたい。とにかく用意は整った。


「ふっふふふ、ふふふふ、待ってなさい、キッチリしとめてあげるわ。ふふふふふ」




        ◆ ◆ ◆ ◆




 日曜日午後五時十分。


少年がシミュレータールームに入ってくる。

さぁ、決戦よ。


「待たせたな」


「それほど待ってないわ、それより決着をつけるわよ」


「望む所だ!」


「時間は五時十分、パスは同じで」


「OKだ」


暫く睨みあう、今日はぎったんぎたんにしてあげる。


「「ふん」」


シミュレーターに入る。

もう慣れたものだ、素早くIDカードを入れて対戦を選ぶ。時間にパスを入力。


『時間になりました、対戦を始めます。市街地フィールド、時間は十分です』


いつもと同じ、スラスターで飛び上がりビルの上に。


「スナイパーモード ON」


視野が狭まり、逆に倍率が跳ね上がる。あいつは、いた……相変わらず速い。

ビルからビルへ物凄い加速力、でも、今日はキッチリと捕まえてあげる。


【集中】最高まで集中力を高める。狙うは二000メートル先のビルとビルの隙間。そこを通らないと次のビル群に渡れない場所……っ!


視認した瞬間考えるよりも先に体が動いた。エネルギーの矢はまさに光の速さで閃光が敵機を捕らえる。


あたった、左腕を粉砕した。これでバランスが崩れるはず。なのにスピードが落ちない、矢をいくつも撃つが全て避けられる。

速い……まるでツバメの様な動きでこちらを翻弄してくる。


落ち着け、あと一000メートル。「スナイパーモード OF」

視野が戻る、残り五00メートルが勝負所。


キタッ!左上空から空を駆けてくる。命中率より速度優先の迎撃、三発ほどかするが致命傷には程遠い。

真後ろに回ってくる、素早く振り向き迎撃態勢、しかし、直角に機体を移動させ視界から消え失せる。


前よりも更に速くなってる。右からビルめがけて跳んで来る、手にはエネルギーサーベル。

振り下ろされたら私の負け、横に払ったら私の勝ちよ!


全身の力を抜くように、イメージを機体に伝え真後ろに倒れこむ。サーベルは私の上を横に通り過ぎていく。

目の前にお互いのコクピットが、食らいなさい!


激しい轟音が舞い上がる炎と共に私の勝ちだと主張する。

全身の力が抜ける……「勝った」何時の間にか両手を握り締め、私は勝利を噛み締めていた。




        ◆ ◆ ◆ ◆


Keizirou―-―


殺った(とった)エネルギーサーベルを横に振り払いそう思った。瞬間敵機が下に沈み避けられる。

目の前にお互いのコクピットが、一瞬見えるはずもないのに少女の獰猛な笑みが見えた気がした。

そして光輝くエネルギーが襲い掛かる、全身を激しく揺さぶる衝撃と共に GAME OVERの文字が画面に浮き上がった。

負けた……最後の最後でやられた。

   

シミュレーターをでるとそこには満面の笑みが。


「私の勝ちー!」


イエーイとばかりにVサインを作り可愛らしく小首を傾げてくる。


「私の勝ちー!」


歯軋りの音が口の中に広がっていく、分かってるよっ。


「私の勝ちー!」


「うがぁぁぁぁ、もう一度勝負だっ」


「いいわよ、何度でも相手してあげる」


額と額がぶつかりそうな至近距離でガルルと睨みあう。


「「ふん」」


恒例行事をへてシミュレーターに……




「俺の勝ちだっ!」


一勝一敗


「私の勝ちよ!」


二勝三敗


「勝ったぁぁぁぁ!」


五勝四敗


「これでどう!」


七勝八敗


「よっしゃぁぁぁ!」


十二勝十二敗


すでに勝負をはじめてから二時間半は過ぎている。勝敗はイーブン、勝っては負け、負けては勝つの繰り返し。

時間は午後九時前に……


「はぁはぁ、決着がつかねー」「そうね、しぶといわね」


このままぐだぐだになるのも嫌だな。


「そういえば、最初はシミュレーターのステージ数で勝負してたわね」


「そうだな……ならどっちが先にステージⅩをクリアするかで決めるか?」


「いいわよ」


「なら時間は明日の五時から九時の四時間で」


「そうね、確認のためにワンステージ終了でシミュレーターからでること」


「OKだ」


そこで時間が来てログアウト。





月曜日午後五時。


お互いステージⅥからスタート。


ステージⅥは森林ステージだ、敵機動兵器が十二体でて来てバズーカーとヒートロッドを使い分け襲い掛かってくる。


しかし、今の俺の敵じゃなかった。囲まれる前に一気に距離を縮める。

エネルギーサーベルは一撃で【バンダス】を両断してくれる。


「わはははっ、相手にならねー」


たった三分で十二機を撃破。これは俺のほうが早いだろう。

シミュレーターからでるとそこにはすでに少女の姿が。


「遅かったわね」


にやりと笑う。


「なん……だと」


「使ってる武器の差よ、私は遠距離あんたは近接、近づかないといけない分遅くなるわけ」


そういって肩をすくめる。

むぅ……それは少し不利かもしれない。


「心配しなくても、クリアタイムで決着になんかにはしないわよ。あんたはべこっと叩き潰してあげる」


獰猛な肉食獣を連想するような笑みを浮かべる。くそっかっこいいじゃないか。


「そっくりそのままお返しするぜ」


そのまま睨みあいシミュレーターへ入る。ふと、思ったのはこの勝負が終わったらこの関係も終わるのかなと。

っ! 何考えてんだ俺は!


頭を振りシミュレーションに集中する。まずはぎゃふんと言わせてからだ!


ステージⅦも軽くクリア。どうやら色々なスキルを身につけて、機体も上位の物に変えてからクリアできるように設定されてるみたいだ。

俺たちが少しおかしいのだろう。だが、負けっぱなしで先に進めようか? 否っ! 断じて否っ!


ステージⅦも同時にクリア、そしてステージⅧ、Ⅸと順調にクリアしていく。

ハッチをくぐり外にでると向こうも丁度出てきたところだった。


「ステージⅨクリアだ、そっちは?」


「私もクリアよ、とうとう最後ね」


「流石に同時でクリアしたら洒落にならねー、最後はクリアタイムで決めようぜ」


「そうね、ここまできたら武器がどうとか関係ないわね」


これで最後だ! 俺たちは同時にシミュレーターへ入る。


『機体を確認します 機体名【スワーロゥ】 機動力A 命中補佐E 耐久力E 特殊兵装E 武装E この機体でよろしいでしょうかYes/No』


Yes


『それでは、ステージⅩを始めます』


画面が氷雪ステージを映し出す。レーダーに映るマーカーは一つ。


それはパラサイトだ、鷲の顔、ライオンの胴体、尻尾は蛇、背には大きな翼。

全高五十メートルはある巨大な混合型パラサイト【キメラ】が最後の相手だ。


「はっはははっはは、すげー……」


俺の武器はエネルギーサーベル一つ。俺の機体は全BM中最低な耐久力、一撃でバラバラにされるだろう。

ゲームなのに物凄いプレッシャーが圧し掛かる。あたれば終わりだ。

沸々と闘志が湧き上がってくる……行く!


スラスターエンジンを全開にする。キメラがその図体からでは考えられない速さで攻撃を繰り出してくる。


「うおおおぉぉぉおおぉぉ!」


【高速機動】で直角に曲がり、スラスターを真下に向けキメラの頭上に一気に飛び上がる。


「りゃあああぁぁああぁあ!」


空気を叩く音と共に急降下、キメラの背中にエネルギーサーベルをつきたてる。


『GIGAAAAAAAAAAAAAA!』


痛みに吼えるキメラ、鉱物や樹木でできた体に核であるパラサイトが神経のように拡散して全体に散らばっている。

巨大な体を動かす為の代償だ。


滅多斬りにしていると後ろに動く気配、尻尾の部分である蛇が襲い掛かってくる!

左腕を噛み砕かれたが、間一髪致命的なダメージは回避。

五メートルは有りそうな蛇の胴体をサーベルで斬り跳ばす。


『GIGAAAAAAAAAAAAAA!』


痛みに耐えかね暴れまわるキメラ、巻き込まれたらそれだけで潰される。

【高速飛行】でできるだけ離れSTバーの回復に努める。

鷲の目が光った、何かやばい気がっ、咄嗟にフットペダルを踏み込み退避。

鷲の嘴から大量の粘液が吐き出される。酸性の粘液だ、俺の居た場所がドロドロに溶けた。


「くそっこのままじゃじり貧だっ、だったら!」


このまま時間をかければ勝ち目は0だ、なら賭けに出てやる。

パラサイトには全て弱点となる核の中心がある。そこを狙えばどんな大物でも一撃で倒す事ができる。

ただ、弱点なだけに普通なら体内や見つけ難い場所にある。


しかし、シミュレーションだからか、このキメラの弱点は直ぐに分かった。

嘴の下、頭と首の付け根に大きさ五メートルほどの単眼がある。

全ての攻撃を回避しあそこへ突っ込む……やってやろうじゃないか!


キメラがこちらに襲い掛かってくる、上等だ!


「うらああぁぁぁああぁぁあ!」


フットペダルを全開に踏み込み首の付け根に向かって飛び立つ、STバーが尽きる。Gが圧し掛かり俺の意識を刈り取ろうと牙を剥く。

ただ一直線に核の中心に飛び突き進む。透明な壁のような物をガラスの割れるような音と共に突き破りエネルギーサーベルが単眼に突き刺さる!


『GIGAAAAAAAAAAAAA!』


キメラパラサイトの巨体がまるで砂のように崩れ落ちていく。


「ウオオオオオオオオオオ!!」


ステージⅩクリアだっ! タイムは七分二十三秒!


急いでハッチを開き外にでる。するとあちらも同時に出てきた。


「「ステージⅩクリア!」」


むぅ、やっぱりクリアしてきたか。


「タイムは七分二十一秒よ」


なっなんだと……


「あんたは……七分二十三秒?」


俺が出てきたシミュレーターの中を覗き込みタイムを確認する。


「俺の……負けだ」


「二秒差……ね、確かに私の勝ちよ? でも気に入らない」


なに?


「あんたはもし私に二秒差で勝ったとして納得できる?」


それは……


「だけど、勝ちは勝ち、負けは負けだろう?」


「私が勝った気にならないのよ!」


そんな無茶苦茶な。


「だったらどうするんだ?」


「それを今から考えるのよ。ここじゃいい案も思いつかないしブリーフィングルームに行くわよ」


強引な奴だな。


「あんたは暫定敗者なんだから文句をいわずについて来る」


「くそっ、わかったよ行けばいいんだろ行けば」


ほっとしたような、そんな感じがしたのはきっと気のせいだろう。

【集中】ゲームサポートによって普段より高い集中力がでる。

【スナイパーモード】視野を二十度まで絞込み視覚の倍率を二倍から三倍に上げるモード。機体の命中補正Bと組み合わせると最高一0000メートルまで狙う事が理論上可能。


という設定

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