表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

「結成!生徒会!!」

自らの意地で何とか全ての校舎を渡りきった俺達はようやく生徒会室のある校舎の階まで来ることができた。

ちなみに俺と桜は心と体がボロボロ状態、桜に至ってはゾンビのように生気が感じられない。

それもそのはずあれからまた二回ほどジャンプに失敗し屋上から転落したのだから(もちろん俺と沙奈がすぐに救出)

一日にあれほど死の瞬間に近い出来事に遭遇すればまともにはいられないだろう。

俺も少しは疲労したものの、若干翔ぶコツを覚え落ちるという恐怖心は知らない間に消えてしまったため、一度も落ちることもなかったし桜のように精神が不安定になることもなかった。

「やっぱり近道なんてするもんじゃなかったんじゃないの?」

「今になってはそう思うけどな、けど俺はもう慣れたぞ?」

「あんたじゃなくて桜に言ってんのよ、最初から無理だとは思ってたのよねーまず極端に体が小さすぎるし走り方に統一性がない、それになにより恐怖心を捨てきれてない・・・無理に決まってるでしょ?」

そんなボロクソ言うなら無理にやらせなければいいものを・・・

というのも、いつもいつも校舎を翔ぶ順番が沙奈→俺→桜のため、沙奈と俺が行ってしまったあと桜はいつも一人になってしまうのだ。

そのため状況的に翔ぶという選択肢しかなくなってしまうのである。

「桜はいつか特訓しないとね、生徒会役員たるものあの程度のことができないんじゃやっていけないもの」

「うぅ・・・・はぁい・・・・」

衰退しきった桜のかすんだ声は厳しい両親にしばかれる子供のようだ。

そうこう話しているうちに目的の生徒会室前に到着した。

「夢矢はもういるのか?」

「多分いると思うけど・・・」

「ゆ、優人くん会長さんまで呼び捨てに・・・!?」

「いろいろあんだよ、早いとこ入ろうぜ?」

そう言ってドアノブに手をかけようとしたその時。

「いやあああああっ!!」

突然ドアが開き、中から半泣きの夢矢が飛び出しそのまま俺めがけて抱きついてきた。

「うぁっと!ど、どうした夢矢!!」

抱きつかれていることに動揺しながら俺は夢矢に状況説明をもとめる。

「あぁ~あ、ああぁあいつがぁ・・・!あいつがぁあ来たんだぁ!」

「あいつって誰だよ!」

そう言った矢先、俺の視界に妙なものがうつった。

生徒会室の床をカサカサカサカサと縦横無尽に動く黒い小さな影。

ああ・・・・「あいつ」か・・・

恐らく人間が嫌いな生物トップ10には入るだろう。

そう、ゴキブリだ。

ゴキブリが苦手とは、案外夢矢も女の子らしいじゃないか。

「ゴキブリ退治は男の十八番だ、さっさとやってやるよ・・・だからその、まずはちょっとどいてくれないか?」

俺が促すと夢矢はハッと我に帰り、自分が抱きついているという状況を確認すると急に顔を赤くした。

「うわっ!?」

すぐさま夢矢は突き飛ばすように俺から離れると距離を置いてしまった。

天の時もそうだったが俺って結構嫌われやすいのだろうか・・・?

とはいえまずはゴキブリ退治が先だ

「ゆ、優人く~ん、がんばってくださ~い!」

「さっさと始末しなさいよね!このバカ!!」

何故か桜と沙奈も夢矢と同じように廊下の隅まで退避していた。

全員ダメなのか、ゴキブリ・・・

俺は仕方なく一人で生徒会室に入ると、持っていた神騎高校の地図を丸めて紙の棒を作った。

ゴキブリには対専用のスプレーで殺すことが多いが何でも最近の噂だとスプレーには耐性を持ってしまうらしい、つまりスプレーで殺しまくると耐性が強化されいつの日かスプレーで殺せなくなる日が来てしまうのだ。

他にも心臓が残ってれば行き続けられるとか色々噂はあるが俺にとってはどうでもいい。

耐性耐性言っているが、潰せば所詮一撃。

理屈なんてどうでもいい、殺るだけだ・・・!

俺はカサカサ動くゴキブリを上手く目で追いかけながら少しずつ体を近づけていく、一撃必倒でなければ相当目に毒なものを見てしまうことになるのだ。

カサカサカサカサと俺をもてあそぶかのように動き回るゴキブリ、そして一瞬動きを止めた瞬間に俺は素早く腕を降り下ろした。


パンっ!


手応えあり、退治成功だ。

「ふ~・・・おーい終わったぞ」

俺は倒したゴキブリの触覚をつまむと窓を開けてそのまま放り捨てた。

これで落下した場所に人がいたら最悪だ。

「お、終わったか・・・?」

恐る恐る生徒会室を覗いてきた夢矢、そんなに恐いか。

「もういないから大丈夫だって、ほら後ろの二人も早いとこと入ってこいよ」

「さ、さすが男の子ですね!」

「ふん!お、男ならこれくらいできて当たり前よ!」

まぁ、とりあえず感謝はされてるってことでいいんだよな?



「えー、一時ゴキブリによる軽い騒動が起きたが水に流そう、そしてそのままさっきの私の行動も忘れてくれるとありがたい」

ようやく全員落ち着きを取り戻したため生徒会室に入り、長方形の机を囲むようにして設けられている四つの椅子にそれぞれ 座り、話をすることにした。

しかし先程はゴキブリに集中していて気づかなかったが、思った以上に生徒会室が広い。

普通の生徒会室というものは少人数での活動を考慮して他の教室よりも小さめに作られているがここは違う、見渡す限り通常の教室かそれ以上だ。

さすが国内最大・・・・・・今日で何回目だ。

「えー、コホン・・・それではさっそく生徒会について色々説明していきたいところだが、まずは入会希望者の二人の自己紹介を」

「え?俺ってもう入ったんじゃないのか?」

「一応だ、一応・・・お前のこと少しでも知りたいからな・・・」

「ふーん、まぁ何でもいいけどな」

その時一瞬夢矢が照れているように見えたがきっと気のせいだろう。

「じゃあまずは・・・」

「ハイ!ハイ!ハイハイ!!まずはこの春鈴桜から自己紹介させてください!」

机に身をのりだし夢矢の顔の前でハイハイ手を上げる桜。

今のうちに夢矢に自分の存在を十分にアピールしておきたいのだろう。

「じゃあお前から・・・」

「一年!春鈴桜です!!みんなからはちっちゃいちっちゃい言われますが中学のころはアイドルと言われてました!!高校の目標は生徒会長になり学校中を桜色に染め上げることです!以上!!」

学校を桜色ねぇ・・・黒歴史に刻まれかねないな。

「生徒会長になりたければまずその身長をどうにかしろ、そんなんじゃ壇上に立っても顔見えないぞ」

「わ!分かってますよ~!!牛乳いっぱい飲みます!」

「ん、まぁせいぜいがんばれ・・・・じ、じゃあ次」

夢矢はチラチラこちらを見てきたので俺の番に切り替わったということがすぐに分かった、というか桜にもう少し興味持ってやれよ・・・

「一年、相馬優人、生徒会に入るからには全力でやるけど始めのうちは期待しないでくれ、中学のころは色んな部活とか委員会の雑務やってた程度からな・・・まぁ別に生徒会長になりたいとかそういう願望はねーから現生徒会長を全力で支えることに尽力するさ」

「わ!私を・・・!?さ、支えて・・・そ、そうかそうか・・・よろしく頼むぞ」

度々夢矢が妙な反応をとる、気にしない方がいいのだろうか?

「私たちの自己紹介は間に合っているだろう、それよりも色々話さなければいけないことがたくさんある!まず活動時間だが・・・」


生徒会の主な仕事内容の説明でかれこれ三時間経過・・・


「・・・・・以上が生徒会の主な仕事内容だ、まぁ聞いてやるより体で覚えた方が早いだろう、長話ですまなかった」

「本当にな・・・よくそんな長い間喋れるな」

「ふぇ~さすがの桜もちょっとヘロヘロです・・・」

「今日の仕事は活動内容の説明ともうひとつある」

「・・・・・・まだ何かあんのか?」

「お前たち二人につける腕章を決めないとな、何がいい?」

夢矢は室内に置いてあった大きめの棚から大量の腕章を取り出した。

「何がいいって・・・俺はなんでもいいぞ?」

「じゃあ会計だ」

「えっ!?そんな簡単に決めていいのか?」

「何でもいいんならどうだっていいだろう?どうせ初めてならどれも同じだ」

「んー・・・そりゃそうだけどな」

「はいはい!桜は!?桜はなんですか!?」

「雑務」

「・・・え?」

「だから雑務だ、書類運んだり掃除したりする」

「そ、そんなぁ~!?桜もっとまともな仕事したいですよ~!!」

「ちなみに私も始め雑務からだったぞ?」

「桜がんばります!!!」

ビシッと敬礼し、目を輝かせる桜。

生徒会長と同じ道を歩めば自らも生徒会長になれると信じこんでいるのだろう 、そんなはずないのだが。

「じゃあこれを左腕につけろ」

夢矢から手渡された腕章を受け取り左腕にはめる、これで俺は正式に生徒会役員(書記)になったわけだ。

「なかなか様になってるぞ、これから一緒にがんばろうな!」

「ああ」

「はい!!」

「では今日で話は終わりだ、今日は時間が時間だから解散ということにしよう・・・明日は仕事とは関係ないが大事な話をする、忘れずくるように!以上!・・・・と言いたいところだがお前たち寮の説明は受けてるか?」

「・・・そうか、そういやここ全寮制なんだよな?」

「ああ、本来なら学校終了と同時に事務室で寮部屋の番号札をもらうんだが、今の時間からではもう遅いかもしれないな、放課後活動があったのは今日は生徒会だけだったからな」

「じゃあどうすればいい?」

「一年の寮の場所は分かるな?きっとそこに寮長がいるはずだ、二人組の姉妹なんだが、いっつも寮の近くにある小さな小屋にいるからそこを訪ねてみろ、きっと空いてる部屋に案内してくれる」

「分かった、じゃあ早いとこ行くか・・・じゃあ二人ともまた明日な」

「遅刻したらぶっ飛ばすから」

「明日、そうか・・・また明日だな、うんうん」

「?」

とりあえず別れの挨拶を済ませ俺と桜は生徒会を後にし、一年の寮へ向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ