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「表と裏のツンツンデレデレ」

クラスの顔合わせが名目のHRが終わり、今日はもう下校ということになった。

次々と荷物をまとめ帰っていく生徒逹。

俺も荷物をまとめ下駄箱に向かおうと教室を出た瞬間、夢矢との約束を思い出す。そう、俺は生徒会に呼ばれていたんだ。

「優人、どうしたの?」

俺と一緒に下校するはずの天が後ろから声をかけてきた。この場でもう断っておく必要がある。

「・・・・・・悪い天、先に帰っててくれないか?俺、ちょっと用事があんの思い出してさ」

「え?・・・・・・・あ、うん・・・分かった、じゃあまた明日ね」

少ししょんぼりとした表情で天は俺の前から去っていった。

一緒に帰ることになったときすごい喜んでたからな・・・明日きちんと謝ろう。

「フフフ・・・どこへ行くつもりですか優人くん?」

いらんチビが来た。

「どこでもいいだろ?さっさと帰れよ」

「生徒会ですか?」

「な!?お前なんで知って・・・!?」

「あ、や、今適当に言ったんですけど・・・?え!図星ですか!?図星なんですね!?へぇ~、じゃあ優人くんも生徒会に入るんですか?」

「今日体育館で生徒会長に強引に入れさせられたんだよ、なんで俺なのかさっぱりだけど」

「へぇ~桜違う体育館だったんでそんなこと知りませんでしたよ、で結局生徒会に入っちゃうんですか?」

「まぁ特に入りたい部活とか委員会も無かったし、何より断れる雰囲気じゃなかったんだよ・・・もともとやっていく自信はあんまなかったんだけどお前も入るんだと思うともっと自信なくしたな」

「どういう意味ですかそれ!!」

「というかお前は進んで入るんだろ?なんたって生徒会に・・・」

俺の言葉に桜はすぐさま怒りを抑え、俺の前に乗り出した。

「桜中学時代アイドルとか言ってましたけどあれ半分嘘です、桜実は一部の生徒からいじめられてました・・・きっと桜のあまりの人気に嫌気がさして妬み始めたんでしょうね、いじめ自体は別に気にしてませんでした、ドラマとかでやってるようなリアルいじめじゃなかったんで全然平気でした・・・でも一番傷ついたのは誰も桜を守ってくれなかったことです、生徒会、教師、クラスメイト・・・相談とかには乗ってくれるんですけど実際いじめられてる時に助けてくれた人は一人もいませんでした!あの時の思いは・・・ちょっと忘れかけですけど忘れません!だから桜誓ったんです!自分が高校生になったら生徒会に入って全ての困ってる生徒さんを助けるって!!」

その時の桜の顔は夢を追う少女そのもの、目が恐ろしいほど輝いている。

どうやら桜が受けたいじめはトラウマのようなものではなく己の道を切り開くための足掛かりとなったようだ。

実際忘れかけということはそれほど気にしていないということだ。

「なるほどな、だからあの時俺を助けてくれたのか・・・」

「ふふ♪感謝してくださいね~♪」

「そのわりにはお前俺に変な要求してきたよな?毎日昼おごれとかなんとかって・・・・・・」

「!・・・そ、それは・・・」

「それは?」

「な、なんとなくその場のノリで・・・みたいな?」

「いい身分だなアイドルさんは」

さすがに少し怒りが込み上げた俺は桜の頭を掴むと髪をぐしゃぐしゃにかき始めた。

「いだだだだ!?いだい!いだいです優いだだだ!!」

「・・・意外と楽しいな、これ」

「えぇぇ!?そんな変な趣味に目覚めないで下さいよ!」

「ああ、お前がなんで中学の時いじめられてたかよく分かったよ、いじりやすいんだよ」

「ぬぐぅ!しかし桜この程度ではくじけませんよ!いずれ生徒会長となる運命ならこんな不良一人に負けてるようでは威厳と言うものが!」

「不良言うな」

「いだだだ!!抜けます抜けます!髪の毛抜けますぅ!」

「安心しろ、もう何本かとっくに抜けてるから」

「なにやらかしてんですかぁ!?ああ、神より与えられし桜の崇高な髪が~!!・・・・・・・・・・・・「かみ」だけに」

「・・・・・・」

突然の桜の下らなすぎるダジャレに一気に気が失せ、俺は桜の頭から手を離した。

「・・・え?ちょ、いきなりやめないで下さいよ!なんかものすごくすべったみたいじゃないですか!?」

「安心しろ、みたいじゃなくてすべったんだよ。今時神様の神と髪の毛の髪かけるやつがいるなんて・・・・・・くく・・・!こいつは今までに例がないな」

「・・・・・!!!」

桜がものすごくどんよりとした顔になっているがそこは気にしない。

「むかつきました!桜優人くんが不良だって学校のみんなに言いふらします!!!」

やはりきたか・・・しかし今日こいつといたなかで桜が予想以上にバカだということが判明した、だからそれを利用して・・・

「いいのか?」

「な、何がです?」

「もしもお前がそのことを他人に口外したら俺もお前の「アレ」をみんなに話しちまうぞ?」

「!!!」

無論「アレ」なんてものはない、しかしこの桜だ、隠し事の一つや二つ持っていてもおかしくはない。

「ま・・・ま・・・まさか優人くん・・・・・・私が今でも誰かと一緒じゃないと夜寝れないの知ってるんですか!?」

自分から言っちゃったよ

「ああ、知ってるさ!」

「夜に絶対トイレ行けないこともですか!?」

「余裕で知ってるな」

「たまに足し算をど忘れすることも!?未だに自分の名前以外漢字が書けないことも!?ジャングルジムに乗れないことも!?好きな食べ物より嫌いな食べ物の方が多いことも!?将来ボンッキュッボンッなセクシーボディになりたいとか全部ですか!!?」

「あ、ああ・・・・・知ってるぞ・・・?」

俺の想像を遥か上回るバカだった・・・・・・

というか聞けば聞くほど桜が子供にしか思えない・・・年齢偽ってるんじゃないか?

完全に自爆した桜はその場で膝をつき真っ白に燃え尽きた。

「う・・・・・うぁぁ・・・・・桜もう生きていけません・・・・」

「安心しろ桜、お前が俺の不良疑惑を常に訂正してくれるんだったらお前の秘密全部黙っててやる、だが俺を不良だと他人に口外した場合どうなるか分かるな・・・・?」

俺の問いに桜はぶんぶんと首を縦に動かした。

相当ばらされたくないらしい・・・俺だって桜の立場だったら必死になるさ。

「よし!ならお互い様だ!俺も約束を守る、桜も約束を守る、それでいいな?」

ぶんぶんぶんぶん、めっちゃ必死。

単純な奴・・・少し悲しくなってくる。

「よし、それじゃあ生徒会室に行くか」

「でも優人くん、生徒会室の場所って分かるんですか?」

「なに言ってんだよ、こういうときのための地図だろ?」

俺はポケットにしまってあった神騎高校内の地図を取り出すとその場で広げ生徒会室を探した。

「・・・・・・・」

生徒会室、生徒会室、生徒会室・・・ない・・・地図が細かすぎて生徒会室を発見することができない。

「ね?分からないでしょ?桜もさっき見たんですけどもうさっぱりでしたよ」

「大体俺達のクラスどこだよ・・・現在地さえ分からないじゃないかよこの地図」

それもそのはず、国内最大規模の神騎高校だ。教室の数が星の数ほどある。

それを自分の手で広げるサイズにまで縮小したのだ、眼鏡の人絶対文字見えないぞこれ・・・。

「う~ん、どうします?」

「どうしますって・・・あっ」

「どうしたんですか?」

「あいつ・・・」

俺達の前方にあった階段を一人の赤髪の生徒が上がっていった。

あの長い赤髪、間違いない、生徒会副会長の沙奈だ。

沙奈ならきっと生徒会の場所を知っているに違いない。

「桜、行くぞ」

「え、えぇ!?どうしたんですか~!?」

俺と桜は生徒会室に向かうべく、生徒会副会長・藤村沙奈を追うことになった。

断じて、断じてストーカーではない

「沙奈!」

ようやく沙奈に追い付いた俺達は後ろから声をかけた。

沙奈はその独特の長い髪をふわりと揺らしこちらを振り向いた。

「・・・何だ、あんただったの?驚かさないでよね」

今日の朝もそうだったがどうもこの人は常にムスッとした表情をしていてしかも何か無愛想、でも正直怖くはない・・・俺より背低いし。

「別に驚かすつもりなんてないって、ただ少し聞きたいことがあって」

「どうせ地図が読めないとか、道に迷ったとかそんなんでしょ?」

「あ、ああ・・・よく分かったな」

「 あたしも一年の頃よく迷ってたし、過去一回学校出口がわからず学校から出れなくなった日もあったくらいよ・・・それで?ここにいるってことはもう今日の授業は終わったって感じ?」

「ああ、だからこのまま生徒会室に行こうと思っててさ」

「ふーん・・・ところでその子誰よ、さっきからあんたの足ずっと蹴ってるけど」

沙奈は少し怪しげな表情で俺の隣にいた桜を見た。

今までずっと無視していたがこの桜、さっきから沙奈を見つめたまま俺の足を必要以上に蹴ってくるのである。

「何様だお前」

俺はすぐさま桜の頭をつかむと再び髪をぐしゃぐしゃにかきはじめた。

「いだだだ!!痛い痛い!痛いですー!!」

「当たり前だ、痛くしてんだからな」

「ごめんなさい!ごめんなさい!!」

意外と素直に謝ったので俺はすぐに手を離した、また髪が数本犠牲にされてしまっていたがあえてそこは気にしない。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・まさに全自動究極暴力装置」

桜はやまんばのように荒れた髪を整えながらさりげなく挑発的なことを言ってきた。

「もう一回やってやろうか?」

「や!もう勘弁してください!!ですが優人くん!桜はなにも理由なしに優人くんの足を蹴っていたわけじゃありません!」

「なんだよ理由って」

俺の言葉を耳にした瞬間桜はビシッと沙奈に向かって指差した。

「控えろ~控えろ~!このお方をどなたと心得る!恐れ多くは神騎校生徒会副会長、藤村沙奈様おおせられるぞ~!!ババーン!!」

桜は何故か誇らしげに沙奈に向かって両手を広げパチパチと手を叩き始めた

「暴力装置、頭が高い!控えろ~!!」

完全にあのドラマのノリに引き込まれてしまった桜、うざくてたまらない

「どうしたんだよお前」

「どうしたもこうしたもありませんよ!桜きちんと聞いたんですよ!優人くんが沙奈さんのことを「沙奈」って呼び捨てにしたことを!!」

「あ~それか」

「知りませんでした・・・まさか優人くんが沙奈さんともうそんな関係になってしまっていたなんて・・・沙奈さんと付き合いたいがためにどれほどの男子生徒さん達が奮闘したことか・・・」

なんで俺はこうも誤解されやすいのかね・・・

「優人くんは沙奈さんのことをどれくらい知ってるんです!?ちなみに桜はすごいですよ!生徒会副会長、藤村沙奈!通称「沙奈ぽん」!もはやその名前と顔を知らない生徒はこの学校には存在せず全生徒から圧倒的な指示を集めている実力派!!むっつり顔で態度がでかいわりに体は小柄で声もとてもかわいい!しかもツンデレ!!学校内で沙奈さんに萌えない生徒は数えられるほどしかいないほど!しかもしかも趣味はバンド!好きなものは小さくてかわいいもの!!家には大量のぬいぐるみが家を占領しているほどです!さらに中学時代までキックボクシングを極めていたため戦闘力は学校一位二位を争うほど!!かっこよさかわいさ強さを秘めたまさに万能な女の子なのです!!・・・ちなみに下着の柄はかわいい猫のうぐっ!」

桜が話している途中、刹那の速さで沙奈が桜の口を強引に押さえた。

理由は簡単、喋りすぎだ。

「あんた・・・!それ以上話したらぶっ飛ばすわよ・・・!!」

恐ろしくひきつった表情で沙奈は桜の頬をぐいぐいと押さえていく

「あふ・・・ほぺんなはい(ごめんなさい)・・・!!」

「・・・ふん!」

沙奈は乱暴に掴んでいた手を離すと腕を組みぷいっとそっぽを向いてしまった

「沙奈・・・」

「・・・な、何よ・・・!?」

「お前って結構少女趣味なのか?」

「な!?ななな!?そんなわけないでしょ!?仮にもあたしは高校生なのよ!?いい歳にもなって小さくてかわいいものが好きだなんて嘘に決まってんでしょ!?し、下着だって普通のやつよ!!別に変な柄なんてなんもついてないんだから!!」

そっぽを向いたと思ったら突然振り向きこの慌てよう・・・別に下着まで聞いた覚えはないのだが・・・

「ていうかあんた!!そんな情報一体どこで・・・!?」

「え?知らないんですか?沙奈さんファンクラブの筆頭が創設した「沙奈ぽん萌え萌えブログ」に全部書いてありましたよ?沙奈さんの日常とか沙奈さんの悩みとか沙奈さんの今日の下着の柄とか!総勢3000人を超えるファンの方達が日々沙奈さんの素晴らしさを語っているのです!ブログというより掲示板に近いかもしれませんね~もちろん桜もその一員かつ新入生第一号なのですよ!!」

腰に手をあて、えっへんと鼻をならす桜

「さ・・・・・・沙奈ぽんブログ・・・?」

「愛されてる証拠ですよ!ね♪・・・さ・な・ぽん♪♪」

「ふ、ふざけんじゃないわよ!!あ~もうあったまきた!!あんたらなんかに生徒会室の場所なんて教えてやんないんだから!!」

「え?俺はなにもしてなくないか!?」

「うっさいバカ!!あたしの秘密知った以上あんただって同罪よ!あんたら二人はそこで一生迷ってなさいよね!!このバーカ!!」

顔を真っ赤に染めながら言うだけ言ったあと沙奈は俺達に背を向けるとそのまま歩きだしてしまった。

「ついてきたらぶっ飛ばすわよ!!このバカ!!」

一瞬振り向いたと思ったらこの暴言、しかし何故だろう・・・全然怖くもないし悔しくもない。

沙奈は早歩きで廊下の角をさっさと曲がっていってしまった。

「・・・桜、お前本当にあいつのこと尊敬してんのか?」

「してますよ?」

「今この状況になって・・・お前があいつのこと尊敬してるようには到底思えないんだが」

「桜は沙奈ぽんのことを知り尽くしているからあんなことが言えるんですよ、優人くんはまだ分かっていないんですよ、ツンデレというものをね」

沙奈のことをもう「沙奈ぽん」などと言ってしまっている時点で敬意の欠片も見当たらない。

「大丈夫です!沙奈ぽんは必ず帰ってきます!必ず!」

その自信は一体どこからくるのか・・・とりあえず桜の言うことを信じて言われた通り待っていると数十秒後、先程の廊下の角からひょこっと沙奈が巣から出てくる小動物のように顔を出した。

本当に帰ってきたよ、あいつ。

沙奈は顔を赤くしながら妙にもじもじとした態度でチラチラとこちらを見てくる、なんなんだ?

「つ・・・ついてこないの・・・?」

「いや、だって、ついてきたらぶっ飛ばすって言ったじゃないか」

「あ、あんなの嘘よ!べ、別についてきたって構わないんだから!というかさっさとついてきなさいよ!!このバカ!!」

なんで毎度毎度こんな理不尽に怒られなければならないのだろうか。

沙奈は再びそっぽを向くと角の先に行ってしまった。

「見ましたか!?見ましたか!?優人くん!!」

「あれがツンデレってやつなのか・・・?」

「そうですよ~!というか反応低いですね優人くん、ツンデレには萌えないタイプですか?」

「ツンデレはもちろん他のにも萌えねーよ」

俺は吐き捨てるように言うと沙奈の後を追うかたちで歩きだした。

少したったあと後ろから「ダメダメですねー、優人くんは」と桜のふざけた言葉が聞こえたがあえてスルーした。

沙奈に追い付いた俺達は彼女の後ろにつき後をついていくことにした。

「きゃー!沙奈様~♪♪」

「今日もかわいい~♪♪」

「こっち向いて~♪」

どこからともなく現れた女子生徒(多分先輩)が次々と沙奈に対し言葉をかけてくる、まるで世界のスターが歩いているかのようだ。

しかしもちろんそれは沙奈だけであって、俺と桜には妙な視線が送られてくる。

あえて言葉にはされなかったがきっと快くは思われていないだろう。

沙奈のファン(?)の嵐から抜けると一気にがらんと人がいなくなった。

周囲の教室の札を見ると「資料保存室」や「工具室」や「裁縫室」などなど、普段生徒が使わないような教室ばかりが並んでいる。

そんな時俺は妙な教室を見つけた。

「科学研究室・・・?」

札にはそう書いてあった。

「ああ・・・ここね、絶対入らない方がいいわよ?きっと大変な目にあうから」

「・・・・・・あ、ああ」

疑問を抱きつつも俺は歩みを進めた

その教室の秘密を知ることになるのはそう遠い話ではないということをこの時の俺はまだ知らなかった。

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