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十二の幻想 飛び回れ、黒の魔法

誤字脱字がありましたら、報告お願いします。

感想や意見をもらえる嬉しいです。

 役人の詰所の目の前にある建物の屋根の上から、圭吾とアンブラは詰所を見据える。

 作戦自体はかなりシンプルなものだ。

 村人達で直談判を行い、話が(こじ)れそうなところでアンブラが魔法を乱射する。圭吾の役割は、魔法の場所を特定されないように、アンブラを運び攪乱する係だ。アンダークスのような力のある人々は、建物の裏手で破壊工作を行う。バレたら意味を成さない。最悪、支配が強まるかもしれない諸刃の一手だ。

 夜の闇に紛れられるように、直談判以外の行動部隊は黒い外套を羽織っている。

 見た目は全く以て勇者らしくなかった。

「パウペルさん達が来ましたよ」

 アンブラの言う通り、パウペル含む数名が詰所の前に来ていた。

 パウペルをこの作戦に使うことには、複数の不安があった。

 まず第一に、彼が相手に顔を覚えられている可能性があること。もし覚えられていた場合、なぜ始めに会ったときに災いが起こらなかったのか。

 そして次に、彼がいまいち信頼できないということだ。この村に来て間もない圭吾達には分からないが、しょっちゅうドジ踏むらしい。

 それでも、本人たっての希望で、この作戦の一員に加えることとなった。

 詰所の中から、役人達が出てくる。

 彼等の話が決裂したら、圭吾達の出番だ。

「なんていうか……」

「なんですか?」

 圭吾がふと零した一言に、アンブラは反応してくれる。圭吾はアンブラに苦笑いを向けた。

「話が拗れるのを待つって、悪人みたいだね」

 それを聞いて、アンブラが少し笑う。しかし、すぐに真面目な顔に戻った。

「そうですよ。私達はこれから、世間一般的には悪いことをするんです。国家への反逆ですよ」

 軽口を叩いていると、下の方で動きがあったようだ。

 村人と役人の口論が大きくなってくる。

「行くよ」

「はい」

 圭吾の肩にアンブラが担がれる。体勢的に腹が圧迫されて苦しいかもしれないが、空を移動できるのが圭吾だけなので、アンブラを運ぶためには仕方がない。

 しかし、圭吾の肩には柔らかい感触があり、どことなく罪悪感を感じる。

 建物の奥まっていて向こうから風が見えづらい位置から、疾風のナイフで飛び上がる。斜めに飛んだ圭吾とアンブラは人々の真上に位置取る。止まる時に起こした風の音で、役人達が上を見上げてしまう。しかし、黒い外套で見えていないはずだ。パウペルも一緒に上を見た気がするが、今はそんなことを考えている場合じゃない。

「……!!」

 アンブラが無言で村人達の周囲に黒い魔法を放つ。圭吾はアンブラを乗せたまま、片手でナイフを振るい、空中を旋回する。最近になって、どんどんナイフの扱いに慣れていっている気がする。

「な、なんだ!なにが起こった!?」

「おい、お前たちなにをした!?」

 役人達は慌てふためき、村人に詰め寄る。

「これが私達の怒りだ!」

 村人のその発言に合わせて、詰所の裏手で爆音が鳴り響く。その衝撃に役人達が驚く。圭吾も驚いて一瞬落ちそうになってしまう。とてもいいタイミングの爆発なのに、これがアドリブの爆破だというのだからビックリだ。

 そこからは魔法以外にも爆発が連続した。

 役人達の後ろから、帽子を目深に被った怪しげな役人がそろりと近付く。

「これが、ハエレティクスの災厄なんじゃ……」

 帽子の役人がそう告げる。

 彼は村人の一人だ。この騒ぎの最中に詰所に潜入し、役人のふりをしてこの情報を吹き込む係だ。

「でも、それはただの迷信じゃ」

「じゃあ、今起きてるこれはなんだ!?」

「今まではなんともなかったんだぞ!!」

「恨みが積もり積もってとか……」

 最初に言い出した彼がいないのにもうこの様だ。恐怖は簡単に内部崩壊を起こしてくれる。

 圭吾は詰所の上に着地し、アンブラを降ろした。

 そして下を確認し、すぐにスタンバイをしたアンブラに合図を出す。

 トドメと言わんばかりに、暗黒の閃光が詰所の玄関を真上から破壊した。

 下を確認したときに下の部屋に明かりは灯っておらず、役人も中に戻っている様子はなかったので、恐らく人に危害は加えていないだろう。潜入役には、すぐに出ていくように指示してある。

「うわあああ!!!???」

 すぐ真後ろで衝撃が起きた役人達は、恐怖が決壊したのか、一斉に逃げ出す。

 村人達はそれを一定の距離を取って追いかける。圭吾とアンブラもそれに合わせて、真上から魔法を落とす。

 おいかけっこの末に、役人達は村の外に出ていき、村人達は勝利に歓喜した。

 圭吾とアンブラも地上に降りる。

 これで、この村で起こっている事件も終わった、そう思った。

 圭吾の肩を一人の男が後ろから叩く。圭吾が後ろを振り向くと、その男に手招きされる。

「どうかしましたか?」

「なんか呼ばれてるみたいだからさ、行ってくるよ」

 そう言って、圭吾は男に付いていく。しかし、その行き先は路地裏の暗がりだった。

「こんなところに連れてきて、どういうつもりですか?」

 圭吾の問いかけに、男は無言で振り返り、そして服を脱ぎ捨てた。

「な!?」

 服の下には、役人と同じ服を着ていた。つまり、この男も役人の一人ということ。

「お前だろ?空を飛び回って魔法を撃っていたのは」

「な、なにを言って……」

「そう怯えるな。別に他の奴らを呼び戻そうなんて気はないさ。すぐに俺も出ていく」

 圭吾は男を観察する。男からはなにかしようという感じはせず、疲れ切ったような顔をしていた。

「お前たちが何かする気だとは思ってたからな。前々から他の奴らに災厄のことをちょくちょく話しておいたのさ。そしたらどうだ。あの様さ。所詮はクズどもの集まりさ」

 男の言うことが正しければ、今回の作戦の成功の裏には、この男が関わっていたというのか。しかしなんのために。そして、どうして災厄の偽装をしようとすることが読めたのだろうか。

「どうして」

「どうして、か。俺はここに左遷された身でな。こんなとこじゃ手柄なんて立てようもない。だからここを出るためにお前たちに協力してやったのさ」

「じゃあ、災厄のことは」

「それは単に奴らを脅かすのに一番手っ取り早かったからだ」

 圭吾の質問が、悉く途中で遮られて答えられる。子供を相手にするのが面倒でぞんざいに扱っているように思われ、圭吾は少し頭にきた。

「じゃあな」

 男はそう言って、圭吾の前を後にする。

 どうやって現在絶賛村人集合中の村の出口から出ていくかは分からない。

「あ、ケイゴさん。こんなとこにいたんですか。探しましたよ」

 アンブラが小走りで近付いてくる。彼女はどことなく嬉しそうだ。今回のことが成功したのが嬉しいのだろう。

「僕を呼んでた人を見失っちゃってさ。戻ろうか」

「捜さなくていいんですか?」

「顔も覚えてないしね。さあ、行こうか」

 圭吾とアンブラは村の方へと歩く。

 謎の男との再会は、そう遠くない日のこととなる。

プロの小説家さんって、一体どのくらいのペースで小説を書くのでしょうか。

少なくとも私よりは多いのでしょうね。


次回の話は、本編とは少し毛色の違う話になるかと思います。

とはいえ、ちゃんと本編と関係のある話にしますよ。

ではまた次回お会いしましょう。

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