十一の幻想 責任と資格とはなんだ
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災厄を本当にする。マフリの意見は突拍子もないもので、場の空気は凍りついた。しかし、マフリの目は告げている、自分は本気だと。
「災厄を本当のことだと思わせて、一旦役人さん達に出ていってもらうのです」
「そしたらどうするんだ?」
周りにいた男の一人が尋ねる。それに対し、マフリは自身ありげな笑みを浮かべた。
「ワタクシ達は王都へ王様に会いに向かっていますわ。ね、ケイゴ様?」
「え、あ、うん」
王に会いに行くという言葉を聞いて、周りがざわめく。圭吾には、先程の確認の意図が読めなかった。まさか、話のインパクトだけで持っていく訳ではあるまい。
「そこで、王様に直接話して止めてもらうのです」
「おいおい、嬢ちゃん」
マフリの突拍子もない言葉に、テナークスが黙っていなかった。正直、圭吾もこの話だけなら止めているだろう。なにか、それ以上の秘策があるのだろうか。
「そんな、どんな奴とも分からない奴らの話を王が聞くと思ってんのか?」
「聞きますわ」
「ほう、どうしてだ?」
マフリはそこで圭吾にウインクをしてきた。それは可愛いのだが、このタイミングでそれをされても、はっきり言って嫌な予感しかしない。
次にマフリはバルバの方を向く。すると、バルバはゆっくりと頷いた。この短時間で二人の間になにがあったのか。圭吾には想像できない。
「このケイゴ様は、勇者様なのですわ。勇者様の言葉は、さすがの王様といえども無視できないでしょう」
「そんな言葉が信じられ」
「では、実際に世界を救ってしまえばよいのです。彼等はそのために旅をしているのです。素性の分からない勇者の言葉でダメなら、救世の英雄の言葉にすれば問題ありませんわ」
話題にされてる圭吾自身にも、胡散臭すぎる話だ。到底信じられる話じゃない。
マフリの視線から感じ取れる期待が、圭吾には重かった。
「はあ、だからなあ」
「よいではないかテナークス」
テナークスを止めたのは、今度もバルバだった。今回は、このお爺さんには頭が上がりそうにない。
「災厄を起こして離れさせる。昔となんら変わらないではないか。それでも今よりはマシじゃったろう?」
「それは、そうですが」
「それにの、わしは獣人のお嬢さんを信じてみる気になったよ」
そこで、バルバはマフリにウインクをした。この二人の間には、本当に何があったのだろうか。
ふうと一息吐き、バルバは一転、険しい表情を見せた。
「して。問題はどうやって災厄を、それっぽく見せるかじゃの。獣人のお嬢さんには何か良い案があるかの?」
「……いえ、そこまでは」
マフリの顔が曇る。そこまでのことは考えていなかったようだ。それでも、あそこまで自身の意見を通したのだ。十分な働きだろう。
思いつめたような顔をして黙っていたアンブラが、決心をした顔で手を上げた。
みんながそちらを向く。全員の視線を受けて、とても緊張しているようだ。
「マフリちゃんが頑張ったんだもん。私だって」
アンブラの小さな呟きが微かに聞こえた。
「それは私がやります。私の魔法は普通の人とは違います。恐らくですが、魔法に精通した人がいなければ、災厄に見せかけることができると思います!」
「アンブラちゃん……」
黒い魔法。それはアンブラにとって重要なものだ。悪魔のものかもしれない、そんな話をされて葛藤もあっただろう。
アンダークスはあの場にはいなかったが、彼女の秘密を知っているだろうか。それは分からないが、心配そうな声を出していた。
「僕のこのナイフも、なにか役に立つかも」
圭吾は彼女達ほど自信はなく、少し小さな声で言った。
「では、今度は今出た案をどう活かすかじゃな」
◆ ◆ ◆
話し合いは、なんとか終わった。本当になんとかというほど難しい話しあいだった。あとは実行するのみである。
「俺ってなんなんだろうな」
圭吾は後ろを振り向く。そこにはアンダークスが立っていた。彼の表情は、いつになく暗かった。
「調子よく協力するって言ったのに、話に入れなかったし、俺だけができる仕事ってのもないしさ」
「ま、まあ、適材適所だよ。戦いがメインだったら出番があるって」
そう気休めを言うくらいしかできなかった。
圭吾も自分のことについて考えてみる。
勇者というのはなんなんだろうか。
ここで人々を助けるのは良いことだと思う。しかし、クレービリスの言っていたことが正しいのだとすれば、勇者はゲダスという存在を倒すために召喚されたのだ。だとしたら、一刻も早く王都に着かなければならないのじゃなかろうか。
そんなことより根本的に、勇者をやる資格など自分にあるのだろうか。
この世界のことをよく知らない、自分なんかに。
「とりあえず、今は寝ようか。作戦は夜からだし」
「ああ、そうだな」
二人は集会所へ戻っていく。
その足取りは、どこか頼りなかった。
アイディアが出ないよマジピンチ!
大学に入って、すごく久しぶりにラノベを読みました。
ラノベを読んで、それに感化されて書き始めたというのに、なにやってんでしょうね。
文章レベル、設定の凝り方、なにからなにまで違いますね。
書いて書き方に慣れるのもそうですが、読むことも重要だと、改めて気付かされました。
また次回お会いしましょう。